栞プラン
お盆期間 2日目
今日は一日部活がある。朝、麗奈が作ってくれた朝食を食べて部活に行こうとしたとき、麗奈に
「今日、ちょっと学校に用事あるから健司君の練習を少し見ていくね」
「ああ、別にいいよ」
そう言って俺は家を出た。
そういえば、前から何度か麗奈は夏期講習が終わってから俺の練習を見に来ている。その時はだいたい二人で来ている。多分麗奈の友人の女の子かな……
練習は午後に入り、暑さでだいぶへばってきたころ、ふとグランドの隅の方を見ると麗奈が友達と二人で来ていた。俺は麗奈に手を振りまた練習に励んだ。麗奈は20分程見ていたようで、どうやら家に帰ったみたいだ。
練習が終わり、夕方家に帰ると麗奈は晩御飯の準備をしてくれていた。
「ただいま」
「おかえり~」
エプロン姿で出迎えてくれる麗奈。 何か俺、本当に結婚しているみたいな気分で少しドキドキ。お帰りのキスをして家に入り麗奈の作ってくれた晩御飯を食べてくつろいでいた時、
「ねえ、健司君 ちょっと相談があるんだけど…」
「なに?」
「実は……… …… …… なの」
「そうなんだ。それで俺は何を?」
「だから健司君に …… …… して欲しいの」
「別にいいけど」
「それじゃ頼むね」
―――――――――
時間はさかのぼってこの日の午後
「栞~ 健司君見に行くからまた一緒についてきてぇ~」
「う、うん」
「どうしたの栞?」
「なんでもないよ」
二人はサッカー部の練習を見に行く。
「あ、健司君 頑張ってね~」
ふと見ると、栞の視線はある一点に集中していた。そこにはあるサッカー部員の姿が… 何かを感じた麗奈はその子の写真をこそっと撮る。そして、栞が見ている部員の方を見て
「あの子ってかわいい顔してるよね」
「そ、そうだよねぇ 麗奈もそう思う?」
「凄く可愛い感じして、それに優しそうな子だね」
「やっぱ麗奈もそう思うよね」
麗奈は感じた。「間違いない」 栞は親友でお世話になっているので、麗奈的にも何とかしてあげたい。
「明日も私は見に来るから栞もついてきてくれる?」
「いいよ」
これがこの日の午後の出来事である。
―――――――――
「健司君、今日言ったこと忘れないでね」
「大丈夫、俺 あいつと仲いいし、何でも話せるから」
「じゃ、結果はお昼ぐらいに電話してね。その後のこともあるんで…」
「いいよ」
お盆期間 3日目
この日も健司は一日部活である。健司は部活に行くと麗奈の指示通りに行動する。
そしてお昼休み。
「健司君、どうだった? 上手く行けそう?」
「大丈夫だよ。それでこの後は?」
「練習終わる時間は?」
「4時くらいだよ」
「その時間あたりに行くから、あとは …… で、お願い」
「わかった。上手くやっとく」
その日の夕方
栞と麗奈は健司たちの練習を見に行く。栞にはもうすぐ健司の練習が終わるから、健司に栞を紹介したいので一緒にご飯食べに行こうと言っておいた。栞も了承した。
「健司くーん、練習終わったんだね。今日は私の友達と健司君とで一緒にご飯行こうと思ってて…」
「あ、麗奈 ちょっとまずいな、俺 チームメイトのやつとご飯食べる約束しちゃってて…」
そう言って一人の名前を呼んだ。
「おーい、聡 今日俺の彼女がご飯食べに行こうって言ってきたんだけど、一緒でいいか?」
健司が呼んだ相手は『 城島 聡 』同じ2年でちょっとかわいい顔をしたチームメイト。
「別にいいよ。俺もマドンナさんと会ってみたかったし」
「それじゃ、こっちはいいけど麗奈の友達は?」
「栞、いいよね」
「い、いいよ」
「それじゃ健司君、4人で行こう」
「着替えるの待っててね。聡、行こうぜ」
そうして着替えてきた健司らと合流して4人でファミレスに行く。
「取り敢えず自己紹介、俺は城島 聡と言います。健司と同じ2年生」
「私は深田 栞と言います。立花さんの友達で3年生だよ」
「俺は… 自己紹介要らないよね… あと麗奈も」
「立花先輩は有名人だから」
城島がそう言った後に
「鈴木君のことも麗奈から毎日のように聞いてるから大丈夫よ」
栞が言った。
何故か栞は落ち着かない様子でおどおどしている。その横で麗奈は何故かクスクスと微笑んでいる。
麗奈がトイレに行くと言って席を立つと、栞も続いてトイレに行った。
「麗奈、今一緒に居る城島君なんだけど… 最近気になってた人なんだよね… どうしよ…」
「ちょうどいいじゃん。いっぱい話して仲良くなれば…」
「緊張して簡単にできないよ」
「私と健司君で入りやすい話をつくるからそこに混ざれば?」
「麗奈、お願いするね」
「栞、頑張るんだよ」
2人がトイレから出てきて皆での会話が始まり、食事を食べながらいい雰囲気で話していた。食事を終えてこれから帰るが、健司と麗奈は寄るところがあると言って先に帰った。残された城島と栞は必然的に二人で帰ることになった。
そして、3時間後、麗奈の携帯が鳴り電話に出ると栞からだった。
「麗奈、聞いて聞いて!… 帰りに城島君から告られちゃった。ど~しよ キャ~」
「よかったね! 栞 おめでとう。私も本当に嬉しいよ」
こうして、栞にも彼氏ができた。 めでたし めでたし……
でもこれは、初めから仕組まれていて知らなかったのは栞ただ一人だけだった。
麗奈の書いた絵図
まず、健司に朝一番で城島君に栞を紹介してもらう。麗奈の携帯にある一番可愛い栞の写真を健司に送り、それを城島君に見てもらう。城島が気に入れば次の段階へ。実はこの子が城島と付き合いたいらしいと健司に話してもらい、城島の返事を得る。城島がOKすると、それを麗奈に報告。麗奈は4人で食事に行くプランを立てて健司に指示。
レストラン内で麗奈と栞がトイレに行っている間に健司は城島に今後の行動を指示。絶対成功する告白なので城島は安心して栞に迫る。
「俺たち気が合いますね、俺年上の人が好きなんです。これからも会ってくれませんか」
「はい」 栞、即OK。
お昼の段階で城島は栞と付き合うことを了承していた。ではなぜ、麗奈はそれを栞に言わなかったのか… それは…… 不安でおどおどしてやきもきしている栞の姿を見るためだけである。
レストラン内で麗奈は笑いをこらえるのに必死であった。いっそあと2日ほど城島からの返事を遅らせ楽しもうかと考えたが、健司がいる手前、それも出来ないので帰りに城島からの告白となった。
基本、マドンナは性格が悪い……
健司の感想
結局、何も知らなかったのは栞さんだけで… あれって栞さんがはめられてるみたいな… どっかで俺もそんなことされた気が… 気のせいかな?




