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マドンナ外伝



裕子の日記


昨日、麗奈ちゃんから電話があって4人でプールに行く計画をしようと言われた。今日は私の部活も午前中のみだったので、午後から会うことにした。麗奈ちゃんは私の部活が終わるくらいになると、体育館まで来てくれた。



私も着替えて麗奈ちゃんのところへ行こうと思っていたら、同じ2年のチームメイトの笹原さんに呼び止められた。何でも引退したバスケ部男子の3年生の西田先輩にしつこく言い寄られているらしい。今日も来ているという。


二人で着替えに行って、麗奈ちゃんのところへ向かっている時、西田先輩が声をかけて来た。


「たのむから一回くらい付き合ってくれてもいいだろ…」


「私はそんな気ないから嫌です」


そう言ってもめていると、麗奈ちゃんが来て、



「西田君、その女の子嫌がってるよ… 見て分かんないの」


不意にそう言われた西田先輩は「お前誰」と言いながら振り向いて麗奈ちゃんを見ると… 表情が変わっていた。


「た、立花… 何でお前がここに…」


「何でもいいじゃん、西田君、彼女いやだって言ってるよね… 」


その表情はとてつもなく怖かった。


「あんまりしつこかったら、あんたのこと他の人に頼んで… 」


そう言いかけたとき、西田先輩は「もう来ない」と言って帰っていった。10秒で解決した。


「今度きたら裕子ちゃんに言って。そしたら私に聞こえるから」


麗奈ちゃんは表情を優しくしてそう言ってくれた。


「それじゃ、早く行こ 裕子ちゃん」



さっきの表情とは別人になって楽しそうにしている。

取り敢えず、駅前のハンバーガーショップで話そうと言いながら下駄箱まで来た時、同じクラスでいつも私に難癖をつけてくる女の子連中がたむろしていた。私に気づいて近寄ってきたが、麗奈ちゃんの姿を見ると蜘蛛の子を散らすようにすぐに全員消えていった。


お店に着いてプールに行く日やどんな水着を買うかなどを話してたら、ガラの悪い他校の高校生がナンパしてきた。


「こんなところで女の子だけじゃ楽しくないでしょ、俺らと一緒に楽しいとこ行こうよ」


そう言って来た人を相手に麗奈ちゃんは


「あんたらといてどこが楽しめるの? 冗談は顔だけで十分だよ」


そう言って、物凄い目つきで睨んでいた。 ガラの悪い男連中よりも怖かった。男連中は固まっていたが、麗奈ちゃんはさらに追い打ちをかけて、周りに迷惑だからとっとと出て行けと詰め寄っていった。男連中は帰っていった。彼らが去った後、


「裕子ちゃん、怖かったよねぇ~」


急に女の子らしくそう言って、怖い素振りを麗奈ちゃんはしていたが、私は麗奈ちゃんの方が怖かった。そう言えば、愛理はどうやって麗奈ちゃんを言い負かしたのだろう… やっぱり愛理の肝っ玉は大きいと感じた。


それから麗奈ちゃんは、どんな水着だったらお互い彼氏が喜ぶか、私とキャッキャ言いながらはしゃいでた。その時はまるでさっきと別人となっていた。


わたしは思った。



「麗奈ちゃん、いいえ立花先輩,あなたは正真正銘うちの学校のマドンナです」



怖かった… 物凄く怖かった… これからも麗奈ちゃんて呼んでいいの?


でも、味方でほんと~~~に良かった。


普段健司はどうやって麗奈ちゃんと付き合っているのだろう… 怖くないのかな…







栞の回想


麗奈と知り合ったのは一年生の時だ。凄く綺麗で私もびっくりした。当然周囲の男子はこぞって麗奈に近寄って行った。ある時、クラスメイトの一人が麗奈に告白すると明日の放課後屋上に来てと言っていた。


面白そうなので見に行ったら、そこには2年生の男子、3年生の男子、クラスメイトの合計5人がいた。しかし、そこに麗奈は現れなかった。男子たちはお互いにもめていた。そんなことをよくしていたので麗奈は2年生の男子に目をつけられた。


昼休み呼び出されたのでまたもや見に行った。そうしたら… 青い顔をした2年生男子がたっていた。麗奈には無条件に可愛がってくれる3年生男子が数人いて守ってくれていた。だからと言って麗奈はその人たちにもあまり優しくはない。2年生男子は3年生男子に脅されて震えていた。麗奈は人を使うのが上手い。


あるとき、クラスで麗奈を嫌ってるグループの女の子連中が、麗奈を呼び出してイジメようと言ってたのを聞いてしまったので、麗奈に教えてあげた。そしたら麗奈はありがとうと言って笑ってくれたが、その連中の誘いにそのまま乗っていった。


気になって見に行くと、麗奈にまくしたてられ壁際に追い詰められた女グループのリーダーを見た。どうやらその連中程度では先輩の応援もいらなかったらしい。麗奈はどんな悪口を言われても動じない。その代わり、麗奈が浴びせる罵倒は核心をついていいてその人の心を砕いていく。


麗奈の性格は悪い。折り紙付きだ。それから麗奈は私とよく喋るようになった。何故か私には優しい口調で喋ってくれた。


しかし、本気で怒った麗奈の喋り口調を聞くと私も震え上がる。友達になっておいて良かった。麗奈は敵対する人と言い寄ってくる男子以外の人には比較的優しかった。分け隔てなくみんなと喋り仲良くする。なので、そんな麗奈をみんなはなんとなく尊敬した。それでも怒った時は迫力が半端なかった。



2年も同じクラスだったのでどんどん私たちの関係は深まり、親友と呼べるようになった。麗奈を見てると、何か寂しそうにしている時がある。なぜ彼氏を作らないのかいつも不思議に思っていたし、寂しいのなら余計に誰か適当な人を見つければと思っていたが、麗奈は決して誰とも付き合わなかった。


なので、健司君のことが麗奈の口から出たときは仰天した。全く信じられなかったが、麗奈の態度があまりにもおかしくなってきたので、ようやく信じることにした。 麗奈は強い、誰にも屈したことがない、


しかし、

健司君のことになると… ただのガラクタのポンコツになる。 

多分、麗奈の弱点は健司君だ。


そんな麗奈も私の親友なので私も力になってあげたいと思う。

ただ、一言だけ言いたい。



「あんた、もうちょっと学校のマドンナらしくしなさい」



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