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愛理と裕子の相談



夏休みに入り、裕子は愛理から麗奈のことについて説明を受ける



「裕子、お待たせ」


「やっと来たね、愛理」


「とりあえず今は愛理の言う通り麗奈ちゃんとは友達になったけど、詳しい話 聞かせてくれる」


「先に言っとくけど、この話は健司君にも直人君にも誰にも絶対に内緒だよ」


「わかった」


「この前、裕子に頼んだのは麗奈ちゃんの心が壊れかけていたからなの…」


「どうして?」


「今まで彼氏からの優しさなんて受けたことない、もっと言うと言い寄ってきた男と敵対するような感じで彼女に本当の意味で優しくできる男性がいなかったのに、急に健司君のように無条件に優しくしてくれる男性が表れたから、優しさを求めすぎるようになっちゃたのよ」


「それで心がおかしくなってきたの?」


「そう。ほかにも理由はあるけど… あと重要なのは、大切な人が突然いなくなることへのトラウマで、健司君を失う可能性に対して異常に恐怖しているとこかな…」


「だから私に健司君ってこんな人だと麗奈ちゃんに自信を持たせるために私を説明役に…」


「取り合えずはそんなとこ。けどね、いま彼女の心が壊れると必ず健司君も巻き込まれる」


「それはよく分かるけど…」


「今は、その辺りはだいぶ良くなってきてるんだけど… これから話す方が重要なことなの」


「何なの?」


「こうなった原因の一番奥底にあるのは彼女の本質なのよ」


「どんな?」


「彼女は自分が決めた基準以上の人しか愛せないけど、いざ愛すると無条件に愛情をかけるの」


「そう言えば性格激しいもんね…」


「それに対して彼女は愛情をかけた相手に同様のことを求める、すなわち依存しちゃうの。相手にこれだけのことをしてあげる、だから相手にもこうしてほしいって…」


「そんなの絶対最後まで続かないじゃん」


「そこが問題なのよ。いつかどちらかが応えられなくなる… その時どうする? そんな感じ…」


「どうなんの?」


「答えられない相手を責めるか、答えてもらえない自分を悲観して自滅するか…」


「どっちも最悪じゃん」


「いわゆるメンヘラってやつよ」


「何なの?」


「簡単に言うと、要求に応えられなくなった相手にどんな手段を使っても応えさせようとする…」


「それっておかしいよ…」


「おかしいに決まってるじゃん。そうなったら最悪は相手を傷つけることも…」


「どうやったら治るの?」


「相手に対する過度の依存なんだから、そうならないように自分の心を強くするしかない」


「それじゃ、麗奈ちゃんが強くなれたら…」


「依存って治りにくいの知ってる?」


「そうなの?」


「簡単に治るんだったら、たばこやアルコールの依存なんてこの世からなくなってるよ… それにアルコールの依存なんて麗奈ちゃんのと比べればまだましな方。あくまで嗜好品への依存だから… 人間に対する依存って相手の人生そのものへの依存だからね」


「そんなことされたら健司が…」


「そうだよ、もしくはそれだけはしたくないと麗奈ちゃんが判断した場合は… 自分を傷つける…」


「どっちにしても最悪じゃない… どうすんのよ」


「ひどくなった場合はどうしようもないよ…」


「それだったらそのこと健司に言って…」


「言ったら健司君彼女と別れる? 彼女から逃げる? 絶対にしないでしょ。彼女を助けようともっとのめりこんでいくだけ…」


「……」


「私もどうしたらいいか分からなくて…」


「何でこんなことになるの…」


「一番良いのは麗奈ちゃんが… 麗奈ちゃんの心が強くなることなんだよ」


「私も協力するからそうなるようにできない?」


「健司君にも問題あるしね… 健司君が上手く厳しく麗奈ちゃんに対応できるかなんだけど… 多分無理だね健司君優しすぎる…」


「何とか誤魔化しながらとかならないの…」


「この前の電話を聞いてる様子だったら… 一つだけ気になる時限爆弾が… 」


「どんなの?」


「彼女の卒業… かな」


「……」


「こればかりはどうしようもない… 卒業すれば極端に会えなくなる… 依存が強ければ耐えるのは無理…」


「愛理、もうちょっと考えて何とかしよ…」


「とりあえず裕子には、麗奈ちゃんの気を紛らわすようにして欲しいの… 変な考えに集中しないように」


「わかった」


「それと、麗奈ちゃんの変化を必ず教えて。どんな小さなことでも…」


「取り敢えずそれはしっかりやるから…」


「何かあったらまた話し合いしよ」



愛理と裕子は真剣に対応を考えていた。




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