最強のコンビ 麗奈と愛理
次の日
午前の授業が終わってお昼休み、今日は麗奈がお弁当を作ってきてくれる予定である。廊下が少しざわついたと思ったら、俺の近くに麗奈がやってきた。
「健司君、お弁当食べに行こう」
「いこうか」
皆の注目を集める中、俺は麗奈を連れて体育館裏の方へ向かう。
「はい、今日のお弁当」
「ありがとう」
麗奈お手製のお弁当を頂いた。学校で麗奈の料理を食べられるのは… 幸せの一言。麗奈と一緒に弁当を食べ始める。
「今日も麗奈の料理はすごく美味しい」
「うふふ… ありがとう。健司君は本当に美味しそうに食べるね」
「美味しそうじゃなくて、美味しいんだよ」
「ありがとう、健司君」
麗奈は嬉しそうに言った。麗奈の表情も明るいし、なんだか気分も良いみたいだ。俺は、愛理さんとの約束を麗奈に話した。 次の休みの日に俺達と愛理さんの3人で遊ぶ約束である。
「私は別にいいよ。愛理ちゃんと遊ぶのは初めてだな。それも楽しみ…」
「それじゃ、細かい事とかは愛理さんと決めとく。麗奈にも愛理さんから連絡行くと思うよ」
「わかった」
お弁当を食べ終わった後、
「麗奈、ちょっといいかな」
俺はそう言って麗奈の太ももに抱き着いて、膝枕をしてもらった。
「いきなりどうしたの、健司君。もう、甘えんぼさんだねぇ~」
そう言って麗奈はクスクス笑っていたが、凄く優しい表情で俺の頭を撫でてくれた。
「優しい麗奈がいてくれて、俺は幸せ者だ」
麗奈の膝枕、気持ちい~い。 学校内でこの姿を見られたら、特定の人には殺されそうになるかもしれないけど、俺は麗奈のことをマドンナではなく、俺の彼女である一人の女の子として見ることに決めた。
最近、健司君がよく甘えてくる。そんな健司君もとても可愛くて大好き。それに、健司君を甘えさせてあげると、なんだか前とは違う感じで私の心も満たされる。これはこれで幸せ。健司君に優しくしてもらっても幸せを感じるが、甘えられると何か守ってあげたくなっちゃって… 健司君を近くに感じる。
何かすごく安らいでいい気分だ。このまま離したくなくなる…
あ、ごめん… 健司君 何か興奮してきちゃった。
麗奈はいきなり健司に激しいキスをし始めた。いきなりキスをされた健司は… 激しすぎてもがき苦しんだ…
「…はぁ はぁ 麗奈、俺を殺す気?」
「ごめん健司君、あんまり可愛くって えへへ…」
麗奈を興奮させると寿命が縮まることを俺は学習した。
こんなことをしながら和やかな昼食タイムは終了した。
少しずつ二人の様子も変化していっている。
それから数日たって、約束していた愛理さんと3人で遊ぶ日がやってきた。麗奈との約束の待ち合わせ場所に行くと…… これでもかとお洒落をしてメイクもばっちり決めた麗奈がいた。
久しぶりに俺もびっくりした。ただでさえ目立つのに、あんな格好をしたら… 麗奈、勘弁してくれ~
「ど、どうしたの… その恰好?」
「昨日愛理ちゃんから電話があって、ばっちり決めて来いって…」
俺は何か嫌な予感がした。麗奈にこんな格好をさせるということは… その後、電車に乗って愛理さんとの待ち合わせ場所に着くと… やっぱり…… とんでもなくめかしこんだ愛理さんがそこにいた。
今日は二人とも短めのスカート、胸が強調されるタンクトップ、それに薄手のシャツ、それとばっちりメイク… 愛理さん… 何考えてんの? 麗奈一人でも十分目立つのに、愛理さんもそんなかっこして二人揃ったら…
「愛理さん、これど~なってんの? 俺恥ずかしすぎて隣歩けないよ…」
「別に、外で男の子と遊ぶんだから普通じゃん。 ねぇ~ 麗奈ちゃん」
「そうだよね… クス」
絶対何か考えてる。こんなの絶対普通じゃね~ どれだけ周りから注目集めたら気が済むの?こんな二人の横歩いたら何か辱めを受けるような気がするんで… 黙って3歩後ろを歩こう… そう考えてると
「いくよ、麗奈ちゃん」
「わかった、愛理ちゃん」
二人で息を合わせて俺の腕にそれぞれが腕を絡ませて歩きはじめた。 いわゆる「両手に花」状態である。
「愛理さん… 冗談はやめよう…」
「冗談でこんなことする訳ないじゃん」
俺は必死にもがいて逃げようとするが、麗奈と愛理さんが、がっしり腕を組んで外してくれない。こんな状態で目立たないわけがない。すれ違う人のほとんどの視線を集める。 俺の顔は引きつっている。
ちなみに、冗談ではないと言いながら、愛理さんと麗奈は肩を震わせて笑いをこらえている。愛理さん… 何考えてんの… 俺何か愛理さんに恨まれること… 多少の覚えはあるか
一応俺も、愛理さんに言われた通りお洒落に気を使って来たが、この二人とは次元が違いすぎる。20分ほどこの拷問は継続され、カフェテリアに来てようやく解放された。
広い空間でドリンクなどを買ってその辺のテーブルでくつろぐようになってる。 中央には木があり、その前にはベンチがある。
「それじゃ、健司君 私達は少しお話があるから、あのベンチで座って待ってて」
愛理さんはそう言って木の前のベンチを指さす。 俺は言われた通りにそっちに向かって歩き、ベンチに一人で座って待つこととなった。俺がそっちへ向かう時に愛理さんは、出来るだけ暇そうにしててと言った。
「愛理ちゃん、これになんか意味はあるの?」
「まあまあ、それよりこの前の続きで大事な話があるから」
「麗奈ちゃん、健司君の周りに知らない女の子がいるのが嫌なんでしょ?」
「健司君が何もしないのは分かってるんだけど… 健司君に近寄られるのも本当は嫌かな…」
「でも、いくらほかの女の子が健司君に近づいても無駄に終わるのは分かるんでしょ?」
「そりゃ そうだけど…」
「べたべた触られるのはそりゃ嫌だろうけど、健司君の近くに来るぐらい構わないんじゃない?」
「でもあんまり気分良くない」
「麗奈ちゃんは男を顔で選ぶ?」
「顔だけでは選ばないかな…」
「私も、同じ。健司君の場合は顔もいいけど、健司君がもっと普通でも私は健司君に惚れていたよ」
「それは私も同じだな。明るくて誠実そうなあの感じだけでも好きになれる」
「やっぱ私とあなたは同じだよね」
「でもね、世の中の多くの女の子は顔だけで男を選ぶんだよ。だからそういう子はおしゃれや顔にこだわる」
「そんなもんなの?」
「女の子同士でもお互いの可愛さなんかを競争して上下をつくる」
「そんなのしてどうすんだろね。愛理ちゃんはそういうの気にしないでしょ?」
「当然、でもね そんな人が多いんだよ。 健司君にもし近寄ってくる女の子がいてもほとんどがそのタイプじゃないかな」
「そうかもしれないね…」
「と言ってるうちに… 麗奈ちゃん、健司君の方を見て…」
麗奈が健司の方を向くと、何やら女の子2人が近くに来ていて健司に話しかけている。
「健司君、普通にかっこいいからお洒落させてあんなところにしばらく放っておくと大体ああなる」
席を立って健司のところへ行こうとする麗奈を愛理は引き止める。表情はひどく冷たい。
「落ち着きなさいって。健司君はついて行ったりしないから」
「あんなの許せない…」
「今から私が健司君を迎えに行くからよく見ててね」
そう言って愛理は健司の方へ歩いていく。健司の傍に行くと近くにいる女の子を無視して声をかける。
「あの~ 暇だったらこの辺りを一緒にぶらぶらしませんか?」
愛理は他人の振りをして健司に話しかける。
最初にいた女の子たちは、いらいらしたみたいだが、愛理の顔を見て何故かどこかへ行ってしまう。そのまま健司を麗奈の元へ連れてきた。
「あ~ 面白かった。あの子たちのしょんぼりした顔見た?」
愛理はケラケラ笑いながら麗奈に言った。
麗奈はよく分からないらしく、呆けていた。
「あの子たちは顔だけでものを考えてるから、自分よりかわいい子が苦手なのよ。健司君を誘おうとするライバルが私で、私と自分の顔を見比べて負けると思ったから引いていったのよ」
愛理はまだ笑っている。相当楽しいようだ。
「健司君にちょっかいをかけてくるのなんてしょせんその程度の女の子連中よ。あなたが睨まなくてもあなたが健司君の近くに現れて顔を見せるだけで、皆退散していくよ」
麗奈もなんだか可笑しくなってきた。そして笑い始めた。
「私と麗奈ちゃんに顔で勝負してくるなんて無謀だよね。 あはは」
何だか愛理のそんな様子を見てると、健司に近寄ってくる連中を相手にするのもばかばかしく思える。麗奈は、愛理ちゃんの心の余裕に感心した。
「もっと自信持てばいいのよ、麗奈ちゃん。せっかく綺麗な顔を持ってるんだから」
麗奈も自分の顔に自信がないわけでもない。ただ、健司に近寄ってくるのがどういう人かが分からない。なので、必要以上に警戒してしまう。でも、愛理が実演したのを見るとなんだか気にするのもくだらなく思える。
「私が健司君の彼女だったら、健司君の周りに50人ぐらいの女の子が集まってても平気だよ。健司君はその子たちを相手にしないだろうし、私も負ける気しないし、それに健司君に触れられるのは私だけだしね。だけど麗奈ちゃんが来たら例外だね。全力で阻止しに行く。 あはは」
それを聞いて麗奈もおかしくなって笑った。
「麗奈ちゃんが気にするから気になるんだよ。気にしなければどうってことは無いよ。勝負になっても負けるわけないでしょ?」
「そうだね。じゃ、私の場合は愛理ちゃんが健司君に近づくのさえ気を付ければいいのかな?」
「麗奈ちゃんの意地悪~ 」
そう言って二人で大笑いしている。
ずっとこのやり取りを呆然として聞いていた健司
「俺は狩猟をするための餌にされるために今日来たの?」
そんなことをつぶやいていた。
麗奈もなんだか気が晴れたような気がしてきた。元々健司はよその子に興味を持たないし、自分だって負ける気はしない。健司が自ら抱きしめに行くのは自分以外にいない。健司の周りに他の女の子がいたって何が変わるわけでもない。そもそも気にする必要がないんだ…
「麗奈ちゃん、もっとプライドを持って。あなたは私から健司君を勝ち取った…」
「あなたは学校のマドンナじゃない。あなたは健司君にとってのマドンナなんだよ」
「私から健司君を奪えるものなら奪ってみろ。健司君は私しか見てないから奪えるわけない!これぐらいのことを言えるようにならないと…」
愛理は真剣な表情で麗奈に言い聞かせるように話した。
(麗奈ちゃん、もっと強い気持ちを持って… それを忘れないで…)
「愛理ちゃん、わかった。私は健司君のマドンナ… 情けない事なんてできないよね」
「やっとわかってくれましたか。 あはは」
二人は楽しそうに笑っていた。 麗奈の顔には覇気が出て力強い感じがする。
「それじゃ 麗奈ちゃん、続きをやりますか」
「そうだね、やっちゃおう」
そういって、また二人で俺の腕をそれぞれが組んで歩いていく。
何か俺、連行されてるような気分になるんだけど… 愛理さん… そろそろこの冗談はやめようよ。
結局、その日は麗奈と愛理さんに引き回されて、俺はへとへとになって疲れていた。
夕方になり、愛理さんが
「そろそろ帰るね、また電話するから 二人ともまたね」
と言って帰っていった。
俺達も電車に乗って家に向かう。
「今日は愛理ちゃんに気合を入れられちゃった。でもなんかすっきりした」
「やっぱり愛理さんは強いな。なんであんなに強いんだろうね…」
「でも健司君も愛理ちゃんに腕組まれて、なんか変なこと考えてなかった?」
そういって麗奈はクスクス笑っている。
「こんな可愛い子二人に腕組まれて歩いてたなんて、健司君は贅沢だよ」
贅沢というか… がっつり疲れたというか…
そもそも麗奈さん、あなた一人だけでもお釣りがくるぐらいなんだよ……




