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4人でのデート


裕子に愛理から電話がかかってきた。


「もしもし、裕子 愛理だよ」


「どうしたの、愛理」


「これからいろいろ話すけど、裕子にはいくつかお願いがあるんだ」


「いいけど… とりあえずどんな事情なのか教えてよ?」


「裕子も付き合始めて、直人君と深く仲良くなってきた時に不安感じる時ってあったでしょ?」


「そりゃ 少しはね… 」


「そんな時、誰かに相談できた?」


「健司が一番近かったから… 健司にはお世話になったかな… 」


「今ね、立花さんもそんな状態らしいんだよね… 」


「どうして愛理が知ってるの?」


「だって私が相談受けたんだもん」


「愛理って、立花さんとそんなに仲良くなったの?」


「同じ男の子を好きになるんだから、当然気が合うわよ」


「本当にあんたは… 何やってんのよ…」


「それは置いといて、立花さんには健司君の近くにいる人で相談できる人がいないのよ」


「それで…」


「それを裕子にやって欲しいの」


「私がどうやってそんなことできんの?」


「ただ、健司君のことで質問されたら素直に答えれば問題ない」


「そんなんでいいの?」


「そうしないと、立花さんがだめになっちゃたら、健司君も同じようになるよ… 分かるでしょ?」


「そうだろうね… 健司は絶対に放ってはおかないもんね」


「だからそうならないように裕子に頼んでるの」


「でも、私は愛理みたいに上手くアドバイスできないよ?」


「でも健司君のことはよく知っている… そうでしょ?」


「そりゃ~ 付き合い長いんで」


「健司君が何を思ってるのか教えてあげればいいんだよ」


「なるほどね… でも愛理はそれでいいの?」


「今は私と立花さんは仲の良い友達だよ… そのつもりでお願い」


「それだったらいいよ… 私も仲良くなればいいんだよね」


「さすが裕子、その通り」



「それでね、できたら裕子と直人君、立花さんと健司君の4人で仲良くしてほしいんだよね…」


「それなら大丈夫だよ。健司のためなら直人は必ず力になるから」


「ありがとう」


「直人には私から健司君たちと今度遊びに行こうって言っておくね」


「やっぱ裕子は頼りになるね」


「でも、今度愛理もこっちに来て詳しく話を聞かせてね」


「当然そうするつもりよ。それじゃ、頼んだよ」



愛理は裕子に健司たちを見守ることを頼んだ。




次の日


「待ち合わせは1時だからそろそろ行こうか」


「健司君の友達と仲良くなれるかな」


「大丈夫だよ、直人と裕子はいいやつだから」


そう言って俺たちは家を出た。待ち合わせは動物園のある駅の改札を出た所。天気もいいので動物園にでも行くかということになった。



「よう、こっちだ」


改札を出るとすでに直人と裕子は待っていた。


「昨日急に誘ってごめんな、こちらが立花麗奈さん」


「立花麗奈です、よろしくね」


「こんにちは、俺は健司の親友で熊谷直人っていいます。立花さんのことは前から知ってます」


「私は五十嵐裕子っていいます。私も立花さんは知っています」


「直人君、裕子さん、これからは仲良くしてくださいね」


「というわけで、俺の彼女をよろしく」

俺がそう言うと



「健司、お前よく平気だな… 俺、なんかやっぱ緊張するわ… すんごい美人だね」


直人はおどおどしている。麗奈の顔に見惚れていると、


「直人、何をそんなに見つめてんの… 」


裕子からのきつーい一言… やーい、直人怒られてやんの~ と、俺は心で叫んでいた。



「でも、やっぱり立花さんって美人だよね。女の私から見ても惚れ惚れするもん」


裕子も感心している。 


「ありがとう、裕子さんも綺麗だよ。そう言えば私のことも立花ではなく名前で呼んでね」


「それじゃ、麗奈ちゃんて呼ぶね」


「だったら私は裕子ちゃんて呼んで良い?」


「いいよ。そう言えば麗奈ちゃんて、愛理と仲良しなんでしょ?」


「そうだよ。裕子ちゃんは愛理ちゃんの昔からの友達だよね?」


「うん。中学の時のね… 愛理は可愛いんだけど変わった子でしょ?」


「すっごい可愛い子だね。意志が強くてはっきりしてる… ちょっと変わってるのかな…」


「簡単に言うと頑固者だよ」


裕子はそう言って麗奈と一緒に笑っていた。



「健司、こんな近くでマドンナ見て… 直接喋って… 緊張しまくるんだが…」


「安心しろ、ただの1年上の先輩なだけだ。普通に喋れ」


そう言われても出来ないよね~… 直人君 …わかる。

でも俺はね、緊張してるその顔を見てるのが面白いんだよ~ と直人に言いたかったが我慢。


「直人君、普通に喋ってね。気を使わなくていいから…」


「わ、わかりました… れ、麗奈さん…」


「それじゃ、みんなで動物園に行こう」


俺が言うと、動物園に向けてみんなで歩きはじめた。



「直人、早く馴れてくれ。そうしないとギクシャクする」


「無理いうな、1年生の時に見に行って憧れてた人だぞ、こんなことになると夢にも思わんだろ…」


「仕方ないじゃん、今は俺の彼女なんだから」


「お前の友達でいると、普通じゃできない体験出来て心臓に悪いわ…」


「正直、早く打ち解けてみんな仲良くなってもらわないと俺的にも困るんだよ」


「何とか頑張ってみるよ…」



へたれの直人を励ましつつ、動物園の中に入る。



最初は遠慮がちだったが、動物を見て廻るうちに裕子と麗奈は仲良く無邪気にはしゃぎだした。いまだに馴れてないのは直人だけ… 


「直人、ちょっと話があるんだ… 」


「なんだ、健司」


「今日さ、いきなり遊ぼうって言ったのも麗奈のためなんだ… 」


「何かあったのか?」


「麗奈はマドンナって言われて付き合う人も今までいなくって… 普通の高校生がやってるような事をあんまりしてこなかったんだ。」


「そうかもしれんな…」


「だから、ごく狭い領域で自分の世界観をつくってしまう。もっと周りにはいろんな人がいていろんな世界があって、その中で自分も関わりながら生きている… そんな実感を持ってほしいんだ」


「何か難しいな… けど、要は自分で楽しみ見つけて好きにやっていくようにできればいいってことか?」


「そんな感じだな。そこで、お前たちのようなカップルの付き合い方もあるって言うのも見せたいんだ」


「俺らを見て参考になるか?」


「こんなバカップルもあるっていう良いお手本になる」


「殴って欲しいの?… 健司君」


「冗談じゃなく、いちゃついたりケンカしたりしながらでも、ずっと離れることなくやっていけてるって…」


「そう言えば、やっぱ健司は麗奈さんと喧嘩なんかしたことないだろ?」


「当然まだないよ… でもいつかはあるだろうし、いつまでも無い方がおかしい」


「そうだな。ケンカしても仲直りできると関係はもっと深くなるよな…」


「そういうのも含めて、いろんなものを見て、実際俺とも経験してほしい」


「だったら、俺達を見てるのはいいかもな。裕子はそんなとこに全く気を使わないから、素の俺達を見せるのは簡単だぞ」


「俺もそれに期待している。悪いな、直人… 本当に頼む」


「そんなしみったれた言い方しなくても頼まれてやるよ」


「でも、本当に4人で仲良くなれたらいいな…」


「そんなの当たり前だろ、健司」


俺たちが話してる間も裕子と麗奈は、あっちへこっちへ動きまわって、今はベンギンに夢中になっている。


「直人―、健司―、早くこっちへ来なよ」


「行かないとうるさいから行こうか、健司」


「そうだな」



そうして俺たちは4人で色んな所を廻った。麗奈の表情は明るく凄く活き活きとしていた。いつもの癖で、直人は好みの女の子が近くを通ると、つい癖で見てしまう。それを発見するたびに裕子は怒りをあらわにする。 そんな様子を麗奈は不思議そうに見ている。


「どうした、麗奈」


「直人君、あんなに他の女の子ばかり見てたら裕子さんが可哀そうじゃない?」


「それでも直人は裕子から絶対に離れないよ」


「直人君は他の子を好きになったりしないの?」


「まず無いな。あいつは裕子にしっかり惚れてるんだよ。裕子のどこに惚れてるのかは俺にもわかんないけど、絶対に裕子を離したくない何かはあると思うよ」


「健司君は?」


「俺だって、麗奈を絶対離したくないよ。誰かが奪いにきたらやっつける。俺は麗奈に惚れてるから…」



俺がそう話すと、麗奈は少し顔を赤らめ健司の腕をぐいぐいと引っ張った。俺は麗奈にお互いが必要としあって、お互いに守ろうとしていることを分かって欲しかった。片方だけの一方通行ではなくて…


他のカップルを間近で見てみて、麗奈とは違う感情を持ちながら、皆それぞれうまくやっているのを見て「こうあるべきだ」という考え方は必要ないことを麗奈に分かって欲しい…


ご愛読いただきありがとうございます。物語はまだまだ続きますのでこれからもよろしくお願いします。

また、沢山の方にブックマークをして頂き感謝いたします。ご意見等もお待ちしております。

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