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愛理の願い



健司君、ごめんね。今、健司君と話し合ってた対処法で今回は何とかなると思うんだけど… 必ずどこかでもう一度、麗奈ちゃんの心の暴走が起こると思う。 その時は、今みたいに私の小手先の対処法ではどうにもならない。 はっきり言うと健司君がどんなに頑張っても麗奈ちゃんを救える可能性は半分以下。 



そして

結末は…… 多分悲惨なものになると思う。



健司君、麗奈ちゃんの心の真髄はね… いわゆるメンヘラなんだよ……



彼女は自分が愛する人に制限を設けてる。制限に満たない者には一切の愛情もかけないが、制限を超える者に対しては無条件の愛情を向ける。 その深すぎる愛情が相手に対する過度の依存に繋がっていく。


健司君は麗奈ちゃんの依存に対して、無条件に応えてしまう。 最悪な組み合わせなんだよ。



そんなものの行きつく先は… どちらかの、または両方の破滅だよ。そうなった時… 多分生きていくことを諦めるようになる… 



麗奈ちゃんの心の暴走が起こる予兆を見ても、私は… 私は本当は健司君に教えたくない…


健司君が巻き込まれないようにしたい… 健司君をどこかへ逃がしたい… でもそれじゃ、多分健司君は納得しない。 どうすればいいの…… 



健司君は優しすぎる… 健司君は真面目過ぎる… 健司君は一途すぎる… そして麗奈ちゃんは弱すぎる…



暴走の兆候に健司君が気づいたら絶対に無視しない。全力で向かっていくと思う。そんな中で麗奈ちゃんを失ったら… 健司君もその後を追って……  それだけは絶対に嫌だ。私も耐えられない……



もし、その時が来たらどうしよう……



麗奈ちゃん、頑張って……  あなたが本当の意味で強くなれば、そんな時は来ないはずだから……





その日の昼過ぎ


麗奈は健司の家に来た。昨日約束した通り今日は健司の家に泊まる予定である。健司の両親は仕事で出かけており、今は二人っきりである。



「とりあえず、荷物を部屋に入れて落ち着こう」


そう言って麗奈を部屋に入れる。やはりどことなく元気がない。


「今日はどうしたい? 何かしたいことある?」


俺が聞くと、彼女は「少しゆっくりしたい」と言った。 俺は愛理さんの言葉を思い出し、


「少し休んだら、ご飯作ってくれない?」


そう頼んだ。



「麗奈のご飯が食べたくて、朝からあんまり食べてないんだよね…」


そう言うと、麗奈はキョトンとした表情をしたが、何となく笑顔になり明るく答えた。


「そのぐらい、いつでもいいよ。美味しいの作ってあげる」


「やっぱ麗奈にご飯作ってもらうのが、俺の幸せ…」


俺がそう言うと、麗奈の表情がいつものように戻ってきた。


「じゃあ、ご飯を作るご褒美に… 」



そう言って、麗奈は俺に抱きつきキスをしてきた。いつもの麗奈に戻ってきている。とにかく俺が麗奈に頼る、麗奈が俺に対する優しさを証明できるようにさせる… 



「麗奈、今は親がいないんだ。 ご飯の前に麗奈が欲しい…」


そう言って、麗奈をベッドに抱えていった。麗奈は少し驚いている様子だったが、嬉しそうな表情をして、


「私も健司君が欲しい」といった。


「先に言ったのは俺だよ、だから今からは俺の好きなようにさせて…」


「いいよ…」



そう言って俺はいつもより激しく麗奈を抱いた。俺のやりたいようなやり方で… 麗奈はそれに従っていた。終わった時の麗奈の表情は、俺に対する優しさに満ちた愛おしい表情になっていた。


麗奈は俺をしっかり抱きしめ、

「健司君が私を欲しくなったらいつでも言うんだよ」


と言って俺の頭を撫でながら言った。 本当に愛理さんの言う通りだ… 麗奈の表情が一変した。今までに見たことのないような優しい表情をしていた。



しばらく抱き合いながら落ち着いた時間を過ごしていたが、


「麗奈、お腹空いた」


と俺が言ったら、麗奈は笑いながら


「はいはい、作ってあげますよ フフッ」


と言っていつもの笑顔で答えてくれた。

それからは、いつもの麗奈に戻って来てるが、問題は麗奈の不安をどう取り除くかである。ここさえクリアできれば、問題の大部分は解決することになる。



「健司君、ご飯できたよ」


麗奈が持ってきてくれた食材で昼ご飯を作ってくれた。


「いただきます」


二人でちょっと遅めのお昼ご飯を食べる。


「やっぱ美味しな、麗奈の料理が無いと楽しみが減っちゃう」


「健司君が美味しそうに食べてくれるから、作り甲斐があって楽しい」


麗奈はニコニコしてそう話す。


「俺には麗奈がいないとやっぱだめだわ。麗奈、絶対離れるんじゃないぞ…」


「健司君… 私が離れるわけないでしょ」


麗奈は笑いながらそう言ったが、どことなく真剣な表情であった。



「この後どうする?」


「健司君のしたいようでいいよ」


「そんじゃ、折角両親もいないんで… イチャイチャしようか?」


「健司君のエッチ フフッ」


麗奈は楽しそうにそう言った。麗奈は俺のために頑張っている。だから俺の気持ちは麗奈から離れない… このことを麗奈に分からせなければいけない……



健司の部屋の戻り、二人でベッドに寝そべりながら健司が言った。


「今度、俺の親友の直人とその彼女の裕子とみんなで遊ばない?」


「私が入って大丈夫なの?」


「麗奈は俺の彼女だよ、直人が文句言うわけないよ」


「楽しそうだね。それじゃ、皆で遊びに行ってみよう」


「それと、良かったら学校でのお弁当も一緒に食べない?」


「いいの?」


「だって俺がそうしたいもん…」


「だったら一緒に食べる。嬉しいな」



麗奈の表情は元の状態よりももっとよくなっていた。健司は麗奈にできるだけゆっくり考える時間を与えないようにしようとしている。いろんなところに麗奈を連れていき、麗奈にいろんな経験をさせる。


マドンナとして、座らされていた台座をひっくり返し、普通の女の子の行動をさせる。


――――――――



何だか今日の健司君の行動はいつもと違う。きっと愛理ちゃんとの話の結果なんだろう… でも、今はすごくいい。 なんか、私が健司君を満たしてる感じがする。 健司君を満たしていると私自身も満たされる。 それに健司君は私に頼っている。


できたら、健司君は私無しでは生きていけないようにさせたいな… えへへ。

そしたら絶対、健司君は私から離れられないもんね…  それはいい方法だ… 頑張ってみようかな。


やっぱ、怯えるばかりじゃだめだよね、私から攻めて行って健司君が私の傍から離れられないって言わせないとね…  愛理ちゃんにはそれが分かってたんだね。 やっぱり愛理ちゃんには勝てないな…



何となく麗奈にも勇気が湧いてきて、やるべきことが見つかったようである。健司も二人の付き合い方を、マドンナとしての麗奈を変えようとしている。



その日は何か新しい先の目標を見つけた気分になり、二人とも元気が出てきた。麗奈の表情は活き活きとしている。


その後は、生命力を復活させた麗奈に襲われ、あえなく健司が撃沈されるハプニングなどがあったが、二人で楽しく過ごし、夕食は健司の母と麗奈が作ってみんなで和やかに食べた。



「麗奈、明日はどうする?」


「さっき言ってた直人君たちと遊ばない?」


「それじゃ、連絡入れてみる」


健司は直人に連絡をする。 直人も裕子から何か言われてるみたいで、すぐに了解してくれた。


「明日はお昼から、直人たちと4人でデートだな」


「何か初めてで緊張するね」


「何事も体験だからね、どこへ行こうか考えておこう」


「楽しみだね、健司君」


麗奈の表情は凄く楽しそう。とりあえず今はこのまま進めよう…


「麗奈、そろそろ寝ようか?」


「うん」



そう言って、二人はすぐに眠りについた。麗奈もぐっすり眠れたようだ。


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