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愛理の診断



だめだ、麗奈ちゃん相当ヤバい。あのまま放っておいたら確実に心が砕けていた。しかも、そう遠くない時期に… 今麗奈ちゃんが砕ければ間違いなく健司君を巻き込む。健司君の心も砕け散る。



それだけはだめ。今は全力で麗奈ちゃんを支えないと… 少し落ち着いたら健司君にも動いてもらおう… ただ、健司君には理由は言えないな。 健司君は真っすぐすぎる、今の麗奈ちゃんに大きすぎる愛情をかけるのは逆効果だ。柔らかく、大きく包み込んであげなきゃいけない。健司君は加減が出来ない。



どうしよう… まさかこの短期間でそこまで変化しているなんて… 初めて麗奈ちゃんにあった時から、何かおかしい所は感じてた。初めて会った時の顔… 感情がなかった… あれがマドンナと言われる所以かなとも思った。


どうして健司君はこんな女の子を好きになったのか理由がわからなかったが、話していくうちにどんどん感情が表れていった。そして和解して楽しく話し始めたときの、彼女が健司君を語るときの顔は凄く魅力的だった。健司君が好きになったのはあの顔をした麗奈ちゃんなんだろう。



しかし、どうして麗奈ちゃんが感情を無くしたのか… それよりも失くした感情が健司君によって、一気に戻ってきていることの方が問題なんだろうな。だから麗奈ちゃんは自分の心が制御できない。 健司君もゆっくり麗奈ちゃんの感情を戻してくればいいんだけど、真っすぐだから全力で戻してしまっているんだろう… 



とりあえず、健司君に黙っているわけには行かない。本当に麗奈ちゃんを暴走させるトリガーになるのは健司君そのものだから… 上手く立ち回らないと二人の感情が砕け散る…


とにかく早急に健司君と会って話をしよう。今日の相談で私が健司君にそれとなく気持ちを確かめてあげるといえば麗奈ちゃんも納得してくれるはず。それと裕子にも協力してもらおう。


親友の健司君がだめになるかどうかの瀬戸際だと言えば協力してくれるはず… 裕子が健司君に一番近いところにいるし… 



健司君、

あなたがカギを握ってるんだよ… ただ優しいだけじゃダメな時もあるんだよ… 



もうすぐ夏休みだから私も動けるようになるし、何とかしないと…






次の日の朝


愛理は麗奈に電話をかける。



「もしもし、麗奈ちゃん」


「どうしたの、愛理ちゃん」


「昨日言ってたことで、麗奈ちゃんが不安にならないように健司君に対処してほしいことを伝えたいんだけど今日ちょっと健司君の時間もらえないかな?」


「そんなこと愛理ちゃんに頼んじゃっていいの?」


「仕方ないでしょ、あなたが元気になれないと健司君も元気になれないんだから」


「分かった。時間は?」


「午前中全部もらっていい?」


「いいよ」


「今日も健司君とは会うんでしょ?」


「今日は健司君の家に泊まるつもりなんだけど…」


「そしたら午後から楽しんで」


「わかった」





愛理は健司に電話をかける



「もしもし、健司君」


「愛理ちゃん、久しぶり」


「今日、ちょっと麗奈ちゃんのことについて話があるんだけど、会ってくれない? 麗奈ちゃんには了解を貰ってるから」


「どうなってんの?」


「大事な話なんだ、昨日麗奈ちゃんの様子はどうだった? 何かおかしくなかった?」


「確かに昨日は何だか落ち込んでたような…」


「とりあえず、私はすぐに出るからこの前私と話したカフェ、覚えてる?」


「ああ、覚えてる」


「そこに今から向かって」


「30分ぐらいで着くと思うけど」


「じゃ、それくらいに私は店の中で待ってる」




健司がカフェに到着する。


「ごめんね、待たせたね」


「そんなこといいから早く座って」


健司も注文を済ませて話が始まる。



「昨日麗奈ちゃんの様子、おかしかったでしょ?」


「ああ、原因は分からないんだけど、なんだか落ち込んでいたような… 」


「原因はあるんだよ。しかも結構危ない。でも全部は健司君には言えない」


「どういう事? 何が原因?」


「根本的な原因は、麗奈ちゃんが過去に抱えてるトラウマみたいなもんかな? それに対して引き金を引くのが健司君になる」


「全然分からない…」


「麗奈ちゃんの過去で心に傷を負わせるような事に心当たりは?」


「ひとつある、確か麗奈のお父さんの突然の失踪… 」


「多分それだね。それで大切な人が突然消えてしまう恐怖が心に住み着いたんだね」


「俺もそれはなんとなくわかる。だから麗奈は俺にしきりと、私だけを愛してとか絶対に離さないでとか言ってくることが多い」


「多分、お父さんが消えて一度心が壊れて感情を無くしたんだろうね。それを健司君が現在進行形で埋めて行ってるので、本来の感情が戻ってきているところなんだろうね」


「俺はどうしたらいい?」


「今は、健司君からの無条件な愛情の注入はだめ。麗奈ちゃんの心のバランスが崩壊する」


「じゃあ、どうしたら… 」


「健司君、今は麗奈ちゃんの望む通りにしてあげて。その代わり、健司君が考える優しさを彼女に向けるのは絶対にダメ。そんなことをしたら、彼女はどんどん深みにはまる」



「それと、大事なことがあるんだけど… 健司君、麗奈ちゃんとエッチしてるよね… これからは健司君から積極的にすること。その時に必ずこのセリフを言って」


『 俺の心を満足させるために抱かせてくれ 』


「決して麗奈ちゃんの心を癒やすためにするってことだけは言っちゃダメ」


「どうして…」


「そうすることで、健司君に求められて、健司君のために彼女が与えていることになる」


「何か違うの?」


「自分ばかりが優しくされて与えられっぱなしで、健司君は何とも思わない?」


「かなり気が引ける… というかそんな自分が嫌になる… 」


「だよね…」


「だから、麗奈ちゃんのおかげで健司君が満たされていることを証明する必要があるの」


「なんか… ごめん。本来なら愛理ちゃんにこんなことで迷惑なんかかけちゃいけないのに…」


「今はそんなこと気にしてる場合じゃないよ… あんまり言いたくなかったけど… 今失敗すると取り返しのつかないことになるよ…」



「とにかく大事なことは、いかに健司君が優しくするかではなく、いかに麗奈ちゃんが健司君の心を満たしているかを分からせること…」


「何とか考えてみる…」


「とにかく健司君からの一方的な優しさだけはしちゃだめだよ。今はそれをやられればやられるほど麗奈ちゃんには、最終的に重荷になるんだからね」



「… 愛理さんが友達でいてくれて助かった… ほんと情けないよな、俺は愛理さんに何もしてあげられてないのに… 本当にありがとう」


「やっぱ健司君だね。その言い方は… どうして私の彼氏になってくれなかったのよ~ ふふっ」


「それは… 本当にごめん」


「冗談だよ。今は皆で麗奈さんの心を守らないとね」


「俺が一番頑張らないと… だね」


「頑張り方を間違えないでね… 健司君は基本おとなしくしておくことだからね」


「何か愛理さんにお礼できることあったら何でも言って…」


「じゃあ、麗奈ちゃんが元気になったら、その時に請求しようかな…」


「その時は何でも言ってください」


「それじゃ、行動に移そうか、健司君」


「なんとなく理由もわかったし、対処法も愛理さんに考えてもらったからいける気がするよ」



こうして健司と愛理の話し合いは終わった。


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