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変 化


次の日、俺は麗奈との待ち合わせ時間に約束の場所に到着する。 遠目に麗奈を発見したが、何やらその近くに男がいて、麗奈にしきりに声をかけている。


「そりゃ、そうなるよな」と俺は思った。あの顔であのスタイルで、一人で駅の近くでぶらぶらしてたら声もかけられる。近くに行って男を追い払おうと歩いていくと、麗奈が物凄い目つきで男を睨み付けてすごい剣幕で話している。男は俺が追い払うまでもなくすごすごと退散していった。 


その表情と喋り方は俺が見たこともないものだった。何か、凄いオーラを感じるような気がした。あれが本来のうちの学校のマドンナの姿らしいが、俺の前では殆んど見せたことがない。しかし、そんなときの彼女を見ると、俺自身も怖くて近寄れなかった。 



「あ、健司君 こっちだよ」


俺を見つけた麗奈は満面の笑みで俺の方へ駆け寄ってくる。さっきの表情とは別人になっている。近づくと腕を組んで、


「それじゃ、デートに出発~ 」



と言って、上機嫌で歩き始めた。

今日はとりあえず映画を見る。俺は本当に映画が好きだ。SFもの、アニメ、冒険もの、オカルト、何でも見る。ストーリーがしっかりしているものは特に好きだ。一人でもよく映画館に行き、感動して一人で泣いている。 なので今日は、麗奈が何を選んでも一緒に楽しく見れる。



「どんな映画にする?」


「ん~ 私は基本何でもいいんだけど… ちょっとハラハラドキドキものにしようか」


「そしたら、推理、サスペンス、陰謀、なんて感じで行こうか」


「それで行こう。映画館でそんなのを選ぼうね」



麗奈はニコニコしながらそう言った。


映画館に着いて、結局選んだのはスパイが活躍する映画。二重スパイが居たりで結構ハラハラドキドキした。



映画が終わり、時間もお昼を過ぎていたので俺たちは適当なレストランに入った。


「まさかあいつが二重スパイだったとはね… 」


「そうだよね。私もびっくりした… 」


などと映画の感想を話しながら楽しく食事をする。 ごく普通のカップルのデートなのだが凄く和む。こういう時ってしみじみと、彼女が出来て良かったと思う。(ちょっと激しいとこあるけど…)


おまけにあれだけの美人だしね。 もともと俺はそこまで女の子の顔に注文を付けないが、麗奈ほどの美人が彼女になってくれたことは、当然嬉しい。 ただ、いつも周囲の視線を集めるのだけは勘弁してほしい。



昼ご飯を食べて、いろんな店舗をぶらぶら見て歩いていた時、麗奈はトイレに行ってくると言ったので俺は近くの書店で待ってると言った。 気になる雑誌を見てると後ろから「久しぶりね」と声をかけられた。


振り向くと中学の時の同級生の女の子だった。 お互いに高校に行ってからどうなっただの話をしていると、急に彼女は喋るのをやめた。


どうしたの? と思って彼女の視線の先を見ると、そこにはトイレから戻ってきていた麗奈の… 物凄い眼差しがあった。 彼女は少し怯えた顔をしていたので、俺は慌てて麗奈に話しかけた。



「この子は俺の中学の時の同級生の子だよ」


すると麗奈の表情も柔らかいものとなってきた。


「そうなんだ。初めまして、健司君の彼女で麗奈って言います」


「は、初めまして… 」



明らかに彼女は動揺していた。 俺もあの時の麗奈の顔を見たときは一瞬言葉が出なかった。同級生だった女の子はそそくさと立ち去っていった。


どうして麗奈はそんな眼差しで彼女を見たんだろう… 確かに知らない女の子が近くにいたんで、気分良くなかったのは分かるが、あれはやりすぎじゃないのか…  まだ付き合ってそこまで日もたってないので、もう少し長く付き合って安定すればこんなこともないのかな……



それからも小物売り場やアクセサリー売り場など、いろんなところを廻り二人で楽しく過ごしていた。ただ、時折麗奈は無表情になったり沈んだ顔になるときがあった。 何か心配事でもあるのかな? そう思った俺は、麗奈に元気を出してもらうため久しぶりにとある場所に連れていく。



「麗奈、どれがいい?」


連れて来たのはゲーセンのUFOキャッチャー。 俺が麗奈に初めてぬいぐるみをプレゼントしたあれだ。


「本当に久しぶり!」


麗奈は思わず笑顔になった。


「どれでもいいよ。好きなの言って」


「じゃーねー、あれがいい!」



麗奈が選んだのは結構大きいキャラクター系のぬいぐるみ。俺は根性を出して頑張るしかない。少し元気がない麗奈を笑顔にするため… 何とか千円の大台まで行かずにとることに成功した。


店員にケースからぬいぐるみをとって貰い、麗奈に渡すと… 何故か麗奈は目に涙を浮かべて微笑んでいた。 どうしたの麗奈…?



「なんか、最初の時を思い出す。あの時も健司君は私の希望をかなえてくれた」



「そんな大げさなもんじゃないよ。ただのぬいぐるみだよ」



「そうなんだけどね… 私にはそれ以上に大切なものなの… 」



なにか様子が変なんだが、あまり追及するのも良くない感じがする。それに、俺たちの間には今のところ

何の問題もない。ちょっと今日は疲れているのかな… と思って、それ以上は何も考えないようにした。




麗奈は、明日は俺の家に泊まりに行くと言い、今日は少し早い時間で帰ると言って夕方過ぎに帰っていった。





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