二人でのテスト勉強
しばらくたって、梅雨と同様に気分が鬱となる定期テスト週間となった。部活も当然休み。
「クラスの中はだいぶ落ち着いてきたな」
直人がそう言ったので
「最近はやっと元通りだよ」
俺もそう答えた。
一番恐れてた3年生の襲来は全くなかった。後で聞いた話では、沖本先輩らサッカー部の先輩たちと、麗奈の人脈で何とかなっていたらしい。麗奈は自分に個人的な感情をぶつけてこない限り、誰とでも均等に接する。煙たがられる奴にとっても同じなので、そういうやつらからの人望は厚い。
「ところで、定期テストの方はどうする?」
直人が白けた顔で言ってくる。
「どうって… やんなきゃ不味いだろ… 」
俺が答えると
「俺さ、今回点数下がったらヤバいんだよ… あんまりひどかったら、部活やめろって言われてる… 」
「そんなことになったら、裕子怒るぞ… 」
俺の頭の中に、怒りに燃える裕子が浮かぶ。
「とりあえず家にこもって修行だな」
直人が言ったが、俺も他人ごとではない。麗奈と付き合いだして成績を大きく落とすと俺も両親に何を言われるか分からない。
「俺も今回は真面目にやるわ」
考えると鬱になるが仕方ないので自分に言い聞かせた。
授業が終わり麗奈と帰宅途中もテストの話になった。
「麗奈はテストどうなの?」
俺が麗奈に聞くと
「私たちは受験生だから、定期テストは簡単に感じるよ」
やっぱり受験生は普段から勉強してるよな…
「俺は今回頑張んないと… 」
「なら、勉強教えてあげようか?」
「そう言えば、麗奈ってクラス順位ってどれくらい?」
「そこそこ上の方だよ」
実際は、学年でもかなり上の方である。理由は料理が上手なのと同じなので人には言いたくないらしい。
(彼氏がいないと暇に決まってるでしょうが!)
これも麗奈がマドンナと言われる所以でもある。
理由は少し悲しい…
「だったら、どちらかの家で一緒にテスト勉強しようよ」
「そうだね、麗奈にお願いするよ…」
「私は3年だから任せてよ… 去年テスト受けてるしね… 」
健司には相当心強い味方である。
結局、今日は麗奈の家に行って勉強することになった。今日授業があった教科を中心に行っていく。 ただ、一つだけ不安がある。 今日は暴走しないでね……
麗奈の家に着き二人はとりあえず休憩
「健司君、何飲む?」
「冷たいお茶がいい」
まだ梅雨も明けてない外はじめじめして暑い。冷たいお茶を飲んでクールダウン。
「そう言えば…」
急に健司は喋るのをやめた。両親がいない事を聞こうとしたが、自殺行為であることに気づいて慌てて口を閉じた。麗奈が認識すると暴走が…
「それじゃ、麗奈の部屋に言って勉強始めようか」
「じゃ、頑張ろうね」
麗奈の部屋に行き教科書を広げテスト勉強開始。 麗奈は去年自分がテスト用にまとめたノートなどを出してきて、健司の勉強を見る。
「健司君、そうじゃなくてここはさっきの使って… 」
健司は本当に勉強になるか心配していたが、麗奈の指導は思いのほか真剣で、健司はついていくのに必死な状態となっていた。 麗奈にも思惑はある。
「健司君、勉強頑張って… 同じ大学に行くんだよ… 」
心の中でそう言いながら健司の勉強を見ていた。健司の学力は中くらいで、今のままでは麗奈が狙う大学には厳しい。麗奈が狙っているのは、唯一家から通える大学であるが、そこはレベルが高い。
麗奈なら大丈夫だが、今の健司には相当厳しい。麗奈にとっても重要な問題である。
結構な時間集中して勉強をしていたので、少し休憩することとなる。麗奈は飲み物を持って部屋に戻ってきた。
「健司君、私は家から通える地元の大学しか考えてないんだよ。それ以外だと健司君と本当に離れ離れになっちゃう。だから健司君にも絶対に同じ大学に来てほしい… 」
そう言えば俺、そんなことなにも考えてなかった。麗奈と同じ大学に行きたいとは思っていたけど、実際のレベルとか俺が入れるか? とか… でも麗奈にとっては現実問題だもんな…
「俺も、今回のテストだけじゃなく根本的に頑張らないとだめだな」
「勉強だったら、いつでも私が面倒見れるからね」
「でも麗奈も今は受験生だし、今は自分のこと中心に考えて頑張って…」
「健司君の面倒見るくらいの余裕はあるから大丈夫だよ。私、結構できる子だよ」
そう言って少し胸を張る麗奈は、さすが年上の頼れるお姉さんと思える感じがするのだが、何故か可愛く見える。
「ありがとう、麗奈」
そんな麗奈を俺は無意識に抱きしめた。勉強モードだった麗奈は少しびっくりしていたが、麗奈の方からキスをしてきた。俺は感謝の気持ちを込めていつもより情熱的にキスをしたのだが…
そのせいで麗奈は少しの間、亜空間をさまようこととなった。
麗奈さん、早くこちらの世界へ帰って来てぇ~
それからも勉強は続き、やがて寝奈の母さんが帰って来た。とりあえず挨拶をしに行く。
「あら、健司君来てくれてたのね」
「お邪魔させてもらってます」
「気にしないでね。いつでも自由に来てちょうだい。麗奈も喜ぶし…」
「そうさせてもらいます」
「せっかくだから、晩御飯も食べていってね」
「お母さん、今日は私もご飯作るの手伝う」
「健司君が来ると急にお手伝いしてくれるようになるのね」
そう言われて、麗奈は少し頬を膨らませて怒っている。その姿も凄く可愛い。
「健司君、もう少し勉強を進めよう」
そう言って麗奈に手を引かれて部屋に戻り勉強を再開した。
その日の晩ご飯はオムライス。麗奈が卵を焼いたらしいが、オムレツのように焼かれた卵をスプーンで割ると、少し半熟のような柔らかい中身が出てくる。食感はフワフワ。
普通の店で食べるより数段美味しかった。麗奈の父さんや母さんたちと少し会話した後、麗奈の部屋に戻り勉強再開。結構集中して勉強ができた。麗奈と相談して明日は俺の家で勉強会を行うと決定し、少し遅くなった時間に俺は家に帰った。
何か絵にかいたような、普通の高校生のカップルがよくやっていることを自分がしている事に気づくと、恥ずかしいような、なんか幸せなような気がして気分は良かった。麗奈がいてくれるようになったおかげで、俺も幸せな気分を味わえるようになったと実感した。 麗奈に感謝…




