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マドンナに初めてできた彼氏

  その日の昼休み


2年生教室の健司



「鈴木君、今朝のあれってどーなの? いつからそうなったの?」


健司の周りには、興味を持っている連中が蟻のように群がる。男子は、面白く思ってないもの,ニヤニヤしているもの,不思議なものを見るようなものなどが大半で、女子はキャーキャー言って騒いでいるものが多かったが、意外に「どうして、いつのまに…」と嘆く者もある程度いた。



ここで、実際に周りが思っている、健司に対する印象を紹介



健司は明るい性格で、誰とでも話す。顔は普通にイケメン、サッカーをやっててスポーツも得意,普通はリア充になるべき人物だ。しかし、誰とでも話すし、どんな人にもきちんと対応する。女子は普通に健司を気に入るが、その中でも行動力の高いのが「アレ」な女の子連中である。結果、付きまとわれる。そんな彼女たちの話を聞いてあげるものだから、周りから変に勘違いされる。


健司に恋心を持っている普通の女の子も、なかなか割って入るのをためらう。やっと健司に粘着している子が離れると、待ってましたと次の子が来る。ひどい時には勝手に「私、健司君にせまられちゃって… 」なんてとんでもない噂を流される。


そのうち、健司を変な目で見る女の子も出てくる。そうした中で現在の健司という人物像が形成されている。 実際は健司の隠れファンも多い。みんな、「鈴木君の周りの変なのがいなくなったら私が… 」と思っていたが、ある日突然、健司の隣の指定席には学校のマドンナである麗奈が座っていた。


健司の隠れファンはみんな同様に「どうして…」となる。マドンナ相手に勝てるわけもない。 こういう時の人間の心理… 


逆恨みするか、諦めるか、最後にワンチャン狙ってみるか…



健司が囲まれているのを見て仕方なく直人が近寄る。


「健司、外で弁当食うぞ」


「ああ、わかった」


こうしてようやく囲みを抜け出すことが出来た。


「こうなるのは分かってただろ?」 直人が言う。


「さすがにここまでとは… でも、数日で収まるだろう…」


「甘いな、時間がたつとまた別なのが来るぞ」


「もう何も来なくていいよ… やっぱりマドンナはすごいな… 」


「ま、これから色々あるんだろうけど、がんばれよ」



直人は、励ます言葉を言いながら何かニヤついていた。




3年生教室の麗奈



「栞、お弁当食べよ」


そう言って麗奈は栞のもとへやってきた。何やらニヤついている。


「どうしたの、麗奈?」


「今日のお弁当は、健司君のお母さん特製弁当だよ~ん」


昨日、健司の家に泊まっていたので、健司の母さんが麗奈の分も用意してくれた。


「なんか… 健司君の家にすごく馴染んでない?」


「だってぇ~ 健司君のお母さんと気が合うしぃ~ 」


はっきり言ってデレデレの表情である。そんなところに一人の男子が来て、



「立花さん、今朝の彼氏と付き合ってるの?」

そう聞いてきた。何やら顔は不服そうである。


「そうだよ。私の大好きな彼氏だよ」

麗奈がそう答えると、


「そいつよりも、この前告白した俺の友達の方がイケメンだったでしょ?」


「何が言いたいの?」

急に麗奈の表情が変わる。冷え切った表情である。


「なんであいつが断られたんだろうなって…」


「私が好きな人は私が決めるんだけど… あなた達には興味のかけらもないのよ」


「……」


「私の彼は、私が求めるものを与えてくれる… 文句があるんなら、どっかに行って私の陰口でもたたいてれば… 」



そう言って、凄い表情で睨みつけていた。 氷のように冷たい表情である。それを見ていた周りの者は… 誰も口を開かずに静かになっていた。


「麗奈、それ以上はもうやめな… 」


栞に言われてようやく表情はいつものようになった。それからは、誰も麗奈に健司との付き合いをとやかく言う者はいなかった。


麗奈にフラれたものは、皆同様に麗奈が誰とも付き合わないことによって面目が保たれていた。俺がフラれたんではなく、麗奈は誰とも付き合わないんだと…


それが、急に一年年下の男と付き合い始めたので、皆は面子が潰れたように思い面白くない。 

ただ、麗奈はそう言った連中の気持ちを叩き潰していこうと思っていた。


健司君を悪く言う者は許さない。健司君に危害を加えるなら必ず復讐する……


やっと見つけた大切な人との関係を邪魔するものは絶対に許さない……



そんな思いをしている麗奈の表情を見て、栞は何となく肌寒いものを感じていた。




放課後、まだしばらく部活は休みである。直人たちのバスケ部も大会は終わっており今は部活がない状態である。健司は帰り支度を始めていると、妙に女子が集まってくる。また健司と麗奈の恋バナでも聞きたいのかと思っていると、


「健司君、今日部活無いんだよね… みんなで遊びにいかない…」


なぜ、いきなり誘ってくるのかよく分からないが、今日は麗奈と一緒に帰って俺の部屋にある荷物を渡さなくてはいけない。何となく断る方向で話をしていたら、教室の入り口付近が騒がしいのでふと見てみると麗奈が立っていた。  



麗奈は… 俺を誘っている女子の方を凄い表情で睨んでいた。 俺は寒気がした…



「健司君、迎えに来たよ」


いきなりそう言った麗奈の声を聴いて、教室は静まり返る。みなびっくりしていた。麗奈の目線は、俺の方を向いているようで実は周りの女の子たちを見ていた。


すごく冷え切った冷たい目で…  俺の周りの女子たちは一言も話せなくなっていた。俺の傍まで来ると、「一緒に帰ろ」といって、いつものにこやかな表情になっていた。


俺は教室から麗奈に手を引かれるようにして出ていった。 麗奈に手を引かれて校内を移動して下駄箱まで行く。途中、こちらをたくさんの人が見ていたが、麗奈がそちらを向くと、みんな向きを変えて離れていった。



麗奈は学校中にある程度影響力があると聞いてたが、そんなものでは済まないほど大きいことを俺は実感した。 ある意味これも初めて見る麗奈の一面である。


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