健司と麗奈と愛理
麗奈と愛理が話し合っていた頃
「健司、今日はちょっと付き合え」 直人が言った。
「私も一緒に行く」 裕子も続く
「分かってるよ」 健司も同意する。
三人は駅近くのハンバーガーショップに入った。
「裕子から聞いた。お前いつから立花先輩と付き合ってんだ?」
「創立記念日の休みの日からだよ…」
「なんでもっと早く俺らに言わなかったんだよ」
「愛理さんのことがちゃんとけりついてからと思ったんだけど… 」
「ちゃんとけりつかなかったんだろ?」
「直人、あんまり健司を責めるのかわいそうだよ… 愛理だって、私に頼んで健司をだました部分もあるんだからさ…」
「それで… 今日のは一体何なんだよ?」
「昨日、立花先輩に紹介の後のこと聞かれて… 愛理さんに付き合えないって言ったんだけど、どうしても友達にはなってくれって言われて… それを立花先輩に言ったら…」
「そらそうなるわな。誰でも怒るよ、愛理さんはお前の彼女候補だったんだぞ…」
「でも、俺は愛理さんにも不義理なことしてしまったし… 」
「どうして…」
「おれ、あのころすでに立花先輩が気になってて…」
「何てタイミングが悪いんだかな…」
「話し合い… どうなってるんだろ… 愛理なら無茶なことはしないと思うけど…」
「健司、帰ったら立花先輩からよーく話を聞くんだぞ」
「けど、校門で見た立花先輩、すっごく怖かった。寒気がしたもん」
「なんでも、うちの学校のマドンナは本当はあれが通常らしいけどな… なんか3年生になって、妙に優しくなったらしいけど… 」
「俺もその表情初めて見たよ。昨日愛理さんの事を出した時に…」
健司は、いきなり怒り始めた昨日の麗奈を思い出した。
「けどなぁ~ 変な奴に追いかけまわされてたと思ったら、いきなりマドンナと付き合ってるってなぁ~ お前って、普通な人を相手にできないの?」
「俺に言われてもどうしようもないだろ… 相手に言ってくれ… 」
「で、どうなんだよ… マドンナさんとは?」
「週末にお互いの家に行って両親に紹介された… 」
「そんなに進んでんの! もうすぐ結婚でもするのか?」
「んなわけねーだろ。ちゃんと付き合うんだから、挨拶ぐらいしとかないと…」
「こんな短期間に“なんでそうなった?”だよな。お前は常識を超越してるよ」
「だから、俺に言っても知らん」
麗奈と愛理の話し合いが終わった後、麗奈は健司に電話をかける。
「健司君、愛理さんと話し合いはしてきたよ」
「そう… 結局どうなったの… 」
「やっぱり健司君に直接会って話したい。ちょっと遅くなるけど家に行っていい?」
「いいよ。親には言っておく」
それからしばらくして、健司に連絡が入り、麗奈を駅まで迎えに行って家に着く。
「夜分にお邪魔します」
「麗奈ちゃん、いらっしゃい。気にしなくていいのよ」
母さんには俺が麗奈に少し心配をかけたことを言ったところ、きちんと話し合いなさいと怒られて今の状況となっている。
「麗奈さんのご両親さえ良ければ泊って行ってね」
「ありがとうございます」
「じゃ、部屋へ行こうか」
そう言えば麗奈さん、なんか大きなカバンもってきてません?
「麗奈、そのカバンは…」
「お泊りセットと明日の学校用」
「泊ってくのかい?」
「だって、健司君のお母さん良いて言ってくれたんだし… 」
ま、今日は色々話もあるし… 長くなるかもしんないしね…
「麗奈のご両親は…」
「健司君に大事な話があるって言ったら、頑張っておいでって…」
左様でございますか…
「とりあえず、荷物を置いて話をしよう」
俺たちはベッドにもたれて話し始めた。
「それで… 結論はどうなったの?」
俺は最初から核心を聞いた。 麗奈が怒りだすことも覚悟していた。
「健司君… あのね… すっごく気が合っちゃった」
はい? 今何て言いました? あのお怒りはどこへ……
「健司君のいいとこきっちり分かってる。彼女はなかなか見る目があるね。そんな彼女にとって大好きな健司君が、私を愛してくれてるんだから… 私は本当に幸せ…」
麗奈はどこか愛理さんと共感を持てたようだ。
「健司君は正直、愛理さんのことをどう思う? 女の子として… 人として… 」
「正直、紹介された日に衝撃を受けた。俺たちまだ高校生なのに彼女はしっかり自分を持ってる。あれだけ可愛いんだから、楽しく生きるんなら簡単にできると思うのに、自分の目的のために自分から前に出で行く。決して妥協もしない。
見てて、自分が小さく見えた。 女の子として、当然見た目は俺が出合った人の中で一番可愛いい… 凄く魅力的で男なら誰でも彼女を気に入ると思う… ただ、俺は彼女と知り合った時は麗奈のことが頭にあったから… 彼女は本当に強い子だ。 俺は彼女から学ぶことが多かった」
愛理さんと一日一緒に居て、あの日感じたことを正直に言った。
「健司君の言う通りだね。愛理さんは強い。私もかなわない。真っすぐで、何ごともよく考えている。愛理さんを彼女にできた男子は最高に幸せになれると思うよ」
「私ね、今日愛理さんに完璧に負けた。このまま行ってたら私から健司君はいずれ離れて行ってたのかもしれない… それを愛理さんは気づかせてくれた。健司君は、私の思ってた通りの人。私が思ってほしいことを思ってくれて、言って欲しい言葉を言ってくれる。健司君は私の心をどんどん満たしてくれる。だけど…
私は… 健司君の心を満たせてるの? 私が浮かれててその大事なことを忘れている事実を彼女に教えてもたった。 これから私が何を考えるべきなのかも… 」
「実は俺も愛理さんに大事なことを教えてもらった。正直、愛理さんとの一日がなかったなら、俺はあの日麗奈に告白出来てなかったのかもしれない… 自分が思うんだったらそれを行動に出すべき… それが俺を後押しして麗奈に告白出来た。俺は本当に失礼なことを彼女にした。彼女から教えてもらったことを麗奈のために使った…」
「健司君、私は今までほとんど人を信用してこなかった。嘘を言う、騙す、裏切る、変な話だけど、恋敵の彼女の話を聞いて初めて信じられる人を見つけた。
彼女は嘘を言わない。自信があるから嘘が要らない。だから彼女と友達になることにした。健司君の気持ちが私に向いてる限り、彼女は健司君に手出ししない。私の事を応援してくれる。要は私が健司君の幸せを考えて、健司君が私だけを見るように頑張ればいい。そう考えると彼女は最強の味方に思える」
「麗奈が言うこと、俺もわかる気がする。あの子は絶対に嘘は言わないもんね。俺は彼女の彼氏になることはできないけど、力にはなってあげたいと思う」
「そういうわけで、今日から私も健司君も愛理ちゃんと友達だよ。健司君に自由に連絡とってくれてもいいし、二人で出かけてもいいって言っておいたよ」
「さすがに二人でお出かけは… でも確かに心強い友達ができたと俺も思う」
「でも、健司君 なんで紹介された日、愛理ちゃんの方を振り向かなかったの? あんな可愛い子で、愛理ちゃんも健司君にはモーションかけたって言ってたよ。少しぐらい好きな気持ちが湧かなかったの? 私にとっては本当に助かったけど… あはは」
「なんか、頭の中に麗奈のことがあって… 愛理さんと手を繋いでてもこれが麗奈とだったら… 何て思うこともあって… 愛理さんには失礼だけどね」
「でも、両天秤にかけようとか思はなかったの? あんな可愛い子なかなかいないよ?」
「俺はそこまで器用じゃないし、一人好きな人が出来たらそれで手一杯だね…」
「やっぱり健司君らしい… だから私と愛理さんは健司君を好きになったんだよ」
「それに、俺が好きになったのは学校のマドンナだよ。余裕なんてないよ… 」
「私はマドンナなんかじゃないよ… 勝手にみんなが言ってるだけ…」
「けど、沖本先輩に麗奈の武勇伝聞いてて… 告白するの怖かった… 」
「どんな武勇伝?」
「なんか、麗奈に地獄に落とされたのは30人以上とか… 俺、31人目になるかなって…」
「あはは… もし健司君をフッてたら… 50人目だったかな?」
よかったぁ~ マジ良かったぁ~ 真実を知らなくて… 麗奈さん怖い…
なんだかんだ言って、麗奈と愛理さんが仲良くなってくれたのは嬉しい。今日はどうなる事かと思ったが、俺も麗奈も結局、愛理さんが凄い人だと認めている。




