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二人の会談

麗奈は栞に電話をかける。



「もしもし、麗奈 どうしたの? こんな夜遅くに」


「あしたさ、健司君が紹介された例の女の子と会う」


「何でそんなことになったの?」


「今日 健司君からその後どうなったのか聞いて… 今は友達だって… 」


「それはちょっと… 健司君もひどくない?」


「多分なんかあったんだろうね、健司君なら友達になろうなんて言わないだろうし…」


「あれだけ可愛いのに、なんで彼女は健司君にこだわるんだろう… 」


「だから黙っていられないんだよ… 」


「何か久しぶりだね… あんたのその口調。 さすが学校のマドンナだね」


「そんなの関係ないよ… 今は健司君と大事な時期なんだ… 」


「そんなに進展してるの?」


「お互いの家にも行ったし、両親にもあった」


「凄いじゃない、だったら気にしなくても彼女の入る隙間は無いんじゃ…」


「それでもだめ。彼女は最強の敵よ」


「確かにあの顔だしね…」


「そこは関係ないよ。彼女の気持ちが最強なのよ」


「言ってる事よく分からないけど…」


「彼女は決してあきらめない。たとえ彼女の目の前で私と健司君がキスしていても…」


「何かあんたら見てると感覚がおかしいんだけど…」


「健司君は決して私を裏切らない。それは分かってる」


「ならいいじゃん…」


「でも、彼女は決してチャンスを逃さない。もし私が失敗すれば確実に健司君を持っていく」


「なら、あなたがしっかり健司君を抱きかかえていればいいじゃん」


「私だってそんなの分かってる。けどね、ほんのちょっとした失敗もしないで付き合っていくなんて不可能なことだよ。」


「……」


「栞、自分のちょっとした失敗で一番大切なものを持っていかれる恐怖をずっと抱えて生きていける?」


「何か大げさじゃない?」


「私の性格が悪いって、栞は言ってたよね? もし私が逆の立場で健司君を奪うんだったらそれなりに考えがある」


「なんか怖いね…」


「やっと巡り合えたんだよ… 何年もかかって… 絶対に離さない」


「麗奈、もうちょっと落ち着きなよ。冷静じゃないと話もできないよ…」


「そうだね…」



麗奈はかなり感情が高ぶっていた。





  次の日、月曜日の夕方


夕方4時過ぎ、俺の携帯に連絡が入る。俺は麗奈に言われた通り教室にいる。


『健司君、もうすぐ学校に着くよ』

『そしたら、正門前で待ってて。俺の彼女は愛理さんの顔知ってるから… 』


「もしもし、麗奈、もうすぐ彼女が正門前に着くよ」

「わかった。健司君は近くに来ないでね」


「分かったよ」

「それじゃ 行ってくるね」


彼女はそう言って電話を切った。



教室から正門の方を見ていると、何やらざわざわとしている。どうやら愛理さんが到着して、うちの学生が愛理さんを見てざわついているみたいだ。その様子を見ていると、見慣れた女の子が急いで愛理さんの方へ向かっていく。あれは裕子だ。



「愛理、本当に話し合いするの?」


「そのために来たんだよ」


「何もそこまでしなくても… 」


「だって、彼女の方からのリクエストだよ… 」


話しているところに、麗奈がやってきた。麗奈の顔をふと見た裕子はびっくりした。健司のクラスを訪れたあの表情ではなく、氷のように冷たい。寒気がする。



「愛理さんかしら?」


「そうです。初めまして、立花さん」


「じゃ、行きましょうか」


二人は黙って歩いて行った。



周りは騒然となっていた。他校の制服を着たものすごく可愛い学生が、学校のマドンナと共に去っていく。一体何が起こっているのかとみんな噂していた。



麗奈たちは駅前のカフェに入る。席について注文をし終わると愛理の方から話し始めた。



「初めまして、結城愛理と言います」


「初めまして、私は立花麗奈と言います」


「回りくどいのは嫌だから、端的に話しましょう」


愛理はそう言って、自分の意見を話し始めた。


「率直に言って、私は健司君のことが大好きです。誰に何を言われてもこの気持ちを変えるつもりはありません。たとえ健司君が振り向いてくれなくても変わりません。私の意志で私が決めたことですから…」



そして麗奈も言う。

「私は健司君に告白されて、健司君に望まれて付き合っている。私たちに干渉して欲しくはないんだけど… 」


「健司君からいろんな話を聞きました。初めて立花さんと出会った日のことも… 立花さん、最初に好きになったのはあなたの方からですね。あの話を聞いて、完全に健司君がはめられてるのは分かりましたよ。健司君は鈍いから全然気づいてなかったですけどね… それと健司君がはめられてたことは言ってませんので… でも、あなたは自分の力で健司君を振り向かせたのだから、私の負けです。


私が健司君と初めて会った時にはすでに、健司君の心にはあなたの影があった。結構頑張ってモーションかけたけど、健司君は振り向いてはくれなかった。知り合ったのがあなたの後だったことを後悔しました。でもね、立花さんも理解してもらえると思うけど、私も理想の人を求めて行動して努力をしてきました。そしてやっと健司君を見つけたんです。だから簡単にあきらめられないんです。」



麗奈は愛理が何故健司にこだわるのかが分かった。そしてその理由が自分と似ていることも理解できた。だから余計に愛理が引かないであろうことも理解できた。


「あなたは先のない恋を続けてて、それで幸せになれるの?」

麗奈が愛理に言うと


「では、立花さんは健司君と一生添い遂げるという保証があるのですか? それが無いと言うのであれば、いつかあなたたちは離れることになる。その時になれば私にも先は見えてきますよ」


愛理は淡々とそう語った。



「私もずっと探し続けてようやく健司君を見つけた。そして健司君も振り向いてくれた。どうしてあなたはそこに割り込んで来ようとするの? 健司君は絶対に渡さない」


麗奈がそう言うと


「私は健司君にも言ったけど、健司君と友達になれるんだったら、決してあなたたちの邪魔はしないと誓いました。健司君があなたを望む限り、あなたと健司君が上手くいくように応援すると言いました。私は自分が好きになった人には幸せになってもらいたい。他人から見たら馬鹿みたいに見えるんだろうけど、それでいいんです。」



「そんなことを言われても私は信じられない。私には健司君が絶対必要なの」


「今の立花さんの感情がどのようなものか、その言葉を聞いて理解できました」


「健司君は私と友達でいることを認めてくれました。立花さんが認めてくれないんならそれでいいです。それなら健司君と友達でもなくなり、私は私のやりたいようにできる… そちらの方が都合いいかも… 今ならあなたから、健司君を奪えそうな気がします」



麗奈には愛理が何を根拠にそんな自信があるのか見当もつかなかったが、その話が嘘のようには思えなかった。 いや、多分そうなる気もしないでもない… 



「今のあなたは健司君に夢中になりすぎて自分の事しか見えてないんです。健司君の本当の幸せを中心に何か考えてますか? あなたのエゴを健司君に押し付けてませんか? 自分の幸せだけを考えていませんか? そんなのだったら話は早いです。いつか破綻しますよ。私はそのころに健司君の前に現れればよい、簡単な話ですよ」



麗奈には何も言い返せなかった。最近、健司が麗奈の心を満たそうとしてくれる。満たされればもっと満たしてほしいと感じるようになる。それが健司の幸せに必ずつながっているのか考えていない。麗奈は愕然となった。 また、愛理に敗北したような感じがした。



「私が本当に健司君を略奪したいなら、さっきのあなたの発言を聞いた時に、友達になることをあきらめると言って、席を立ちましたよ。そうすれば、ほぼいつかは健司君を奪える。でもそうしたくはないから、あなたのだめなところを言ったんです。本当に健司君を奪うんだったら、ほころびそうな部分をわざわざ教えたりしません」



麗奈は放心状態となっていた。確かに愛理がその気になればやられていたと感じる。自分でも最近、健司に対するいろんな欲求が抑えきれずになってきているのがわかる。いつか健司は疲れてきて、他の誰かに安らぎを求めるかもしれない。



「私がどのような手段で健司君を奪っても、あなたという心の傷が必ず残る。負い目を抱えながら、無理矢理私と一緒になって貰っても健司君は決して本当に幸せにはなれない。健司君が私を選んでくれて、本当に幸せになるには、あなたという存在をよく考えた上で、自分で判断してくれた時だけです。あなたがしっかりしていれば、多分そういう時は来ないのかもしれないけど…」



麗奈は自分の甘さに気づいた。愛理は健司と一緒に過ごす時間などほとんどない。私はいつも健司と一緒に居る。なのに愛理の方が健司の事を、健司の幸せを考えてる。




「だから、私は健司君を略奪なんかしません。そんなことをしても健司君の心に一生傷を負わせるだけだから… 残る手段は、あなた方自身の問題で別れたときだけです。そこに私という原因があってはならない… だから私は友達として、あなたたちのために力を貸す、もし、あなたたちが別れることになっても、私はそれを防ぐ存在で頑張っていないと健司君は絶対に私の傍には来てくれない…」



「あなたの言いたいことは分かった。本当にあなたは力ずくで私から健司君を奪うことはしないと思う。でもあなたは強すぎる。その強さが私を不安にさせる… 」



「私がいくら強くても、あなたの彼氏なんですよ、健司君は。あなたが彼の幸せを守っている限り、私にはどうしようもないでしょ… 」



「なんとなく分かった。私がしっかりして、健司君を支えている限り、あなたは私の味方になってくれるということね…」



「そうです。 ただし、私のことを友達と思ってくれて無いとだめですけどね… あはは」


「分かったわ。あなたは健司君の友達であり、私とも友達、これでいいかな?」


「十分です」


「あなただったら、自由に健司君に連絡とって話してもいいわ… なんなら二人で出かけてもいいよ…」


「本当にいいんですか…」


「だって、そんなとこでこそこそしないでしょ… 特にあなたは…」


「当然です あはは」


「でも味方にしても敵にしても、あなたは最強だわ… フフフ」



「でぇ~、友達になった記念に今から健司君のいい所とか、惚れた部分を話し合いません?」


そう言った愛理に対して麗奈も


「それだったら時間が足りないかも…あはは」


といって、二人で楽しく話し始めた。二人で話した結論では、どうやら二人とも健司の同じ部分を見て好きになったということである。二人は連絡先を交換して連絡を取り合うことを約束した。



( 愛理の感想 )

 裕子から聞いてたけど、あそこまで美人だなんて思わなかった…  普通にびっくりした


( 麗奈の感想 )

 危なかったぁ~ 沖本君に健司君誘い出して貰うのあと数日遅れてたら… 完全にアウトだった

 あの子とよーいドンで、ガチンコで競り合っても勝てる気しないよぉ~


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