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麗奈の心

  次の日の朝。


健司はきちんとした服装で家を出る。手には親から渡されたお土産をもっている。 母さんからは、ちゃんと挨拶をして将来のことをお願いするのよと言われたが、初めて顔を見る娘の彼氏に、いきなり将来のことを言われても普通はおかしいと思われると言い返すと、「お前には男としての気概がないのか」と言われた。 母さん、何か間違ってない?



10時過ぎ、駅に到着すると麗奈が待っていてくれた。相変わらず… 猛烈に綺麗だ。


「健司君、それじゃ 早くお家に行こう」


そう言って、彼女は俺の手をぐいぐい引っ張って歩いていく。


「何か緊張するな… 」


「大丈夫だよ。健司君のことは前から言ってるし… 私の初めての彼氏だから親も喜んでくれてるよ」


しばらくして麗奈の家に着く。わりとおしゃれな感じの一軒家だ。


玄関を入ると、麗奈の両親が出迎えてくれた。



「こんにちは、初めまして。麗奈さんと付き合いさせて頂いてる鈴木健司と言います」


「こんにちは、私は麗奈の母で立花加奈と言います。麗奈が初めて連れてくる彼氏を楽しみに待ってました」



優しそうで凄く綺麗な人、麗奈は完全にお母さんに似たんだと思った。


「こんにちは、私は麗奈の父で立花省吾といいます。これからも麗奈と仲良くしてやって下さい」


穏やかで優しそうなお父さんだ。


「これは母さんからお土産にと持たされたもので… 」


「健司君、そんなに気を使わ無くても… ありがとうね」


「それじゃ、健司君 私の部屋へ行こう」


そう言って麗奈は俺の手取って自分の部屋に向かった。



「優しそうなご両親だね」


「うん、母さんも父さんも大好きだよ」


麗奈の部屋は女の子らしく、明るいカラフルな色調でまとめられている。可愛い小物も多く何とも賑やかな部屋である。



「どう、健司君 初めての女の子の部屋は?」


「やっぱり男の部屋とは全然違うな… 」


俺の部屋や、直人の部屋とは全然違うので感心した。


「とりあえず、好きなところに座って。 ベッドで寝ててもいいよ」


さすがにベッドはまずいだろう… 俺はその辺に座った。


「何か飲み物でも持ってくるけど、何がいい?」


「コーヒーか紅茶のどちらかで… 」


「そしたら私と同じで紅茶でいい?」


「いいよ」



麗奈はそう言って部屋を出て行った。麗奈の部屋を眺めると、ベッドの横には俺がゲームセンターでとってあげた熊のブーさんが置いてあった。それを見て何だか懐かしい感じがした。 あの時から俺と麗奈は始まったんだったな… 


麗奈は紅茶を持ってきてテーブルに置くといきなり抱き着いてきた。


「わーい、私の部屋に健司君がいる~」


そしてキスをする。初めは軽くだったが、だんだん激しくなる。


それから麗奈は、俺の傍にぴたっと寄り添うように座った。


「どう、健司君。初めての女の子の部屋は興奮する?」


「そうだね。俺の部屋と雰囲気が違いすぎて… やっぱ落ち着かないかな」


「興奮したら、そこにベッドがあるからね」


「ご両親がいるのに、そんな度胸はございません」


麗奈さん、なんか最近過激になって来てませんか……



「健司君の意気地なし… クスッ」

時と場所が異なれば、ちゃんと意気地を出します……



それからいろんな話をしていたが、俺の部屋でアルバムを見てたのを思い出し


「そう言えば、麗奈の小さいときの写真、見てみたいな」


俺が麗奈に言うと


「じゃ、とってくるね」


と言ってアルバムを持って来た。

そこには、まだ赤ちゃんの写真から小学校の時の発表会、運動会などの写真があった。小さいときの麗奈もほんとに可愛かったが、中学入学時の写真を見ると、もはや美少女としての麗奈が完成していた。俺の中学時代のアルバムを見ても麗奈以上の子はいない。


けど、アルバムを見ていて何故か少し違和感を感じたのだが、それはどんどん美貌が完成されていく麗奈の変化に驚いていたからなのか……



急に麗奈は


「健司君、お昼に何食べたい?」


そう聞いてきたので、ハンバーグが食べたいと麗奈に言うと


「じゃ、私が作るね。お買い物もあるから健司君は部屋でしばらく待っててね」


そう言って、部屋を出ていき、お母さんと買い物に出かけて行った。




しばらくすると、部屋をノックする音がして


「健司君、少しいいかな」


麗奈のお父さんの声がした。


「はい。いいですよ」


そう俺が返事すると、麗奈の父さんは扉を開けて俺の顔を見て言った。


「少し話があるんだ。下のリビングに行こうか」


俺とお父さんは一緒にリビングに言った。


「健司君、そこにかけて」


「はい」



俺は、うちの娘に変なことをしてないな?… みたいな事を言われないかとドッキドキ。

(昨日は未遂に終わったので、まだちょっとしかしてません)




麗奈のお父さんは話し始めた。


「実はね、私は麗奈の本当の父親ではないんだ」


一瞬、何のことだかよくわからなかった。


「私が加奈と結婚したとき、加奈には11歳になる麗奈がいたんだよ。麗奈の本当のお父さんは麗奈が8歳の時に、突然いなくなった。加奈は悲嘆にくれ、絶望してた。そんな加奈を見て麗奈も無表情になっていったらしい。心配した加奈の友人と私の友人が知り合いだったので、私たちは知り合い結婚した。このとき麗奈は11歳だった。


一緒に暮らすようになっても麗奈は決して笑わなかった。楽しそうな表情を見せなかった。やがて、1年が過ぎたころ、加奈の表情に幸せな感じが見られるようになると、麗奈も少しずつ笑うようになってきた。加奈の幸せが麗奈に伝わっていった。そしてようやく麗奈も表情が豊かになった。


でもね、健司君、麗奈は普通に見えるけど実は男性に対する不信感がすごく大きいんだよ。 なぜ、自分たちを捨てていったのか…  お母さんを愛してたんじゃないのか…


それが原因か分からないが、いまだに男の子を家に連れてきたことがなかった。あれだけ綺麗な顔をしているのだから、彼氏の一人もいて当たり前と思っていたが、一人も連れてこなかった。私と加奈も、やはりおかしいと思ってたんだよ。


それがある日突然、君の名前が出だして急に表情が女の子になってきた。私と加奈はようやく、麗奈の心がひらいたと感じて嬉しくなったよ。今日、君の表情を初めて見たが、何となく麗奈の気持ちが分かった。 いずれ麗奈本人からこのことを聞くとは思うが、麗奈のことを変に誤解されたくないので私は今、健司君に伝えている。どうかそのような麗奈の事情を分かってあげてほしい、健司君。」



話を聞いてて、途中から泣きそうになった。俺の前ではそんな表情を一度も見せたことはない。 いつも俺には笑顔で、にこやかに笑ってくれている。


なぜ、麗奈が男性と付き合うために、譲れない条件があると言ったのか、はっきりと分かった。麗奈は俺に何度も言う。



『 私だけを見て、私だけを愛して、絶対離れないで、私もあなただけを見る、あなただけを愛する 』



あれは、麗奈の誓約なのだろう。自分も誓約する、相手にも必ず誓約してほしい……


お母さんのようなことが起こらないために……



俺は答える。

「俺は今の話を聞く前から、麗奈さんの願いを叶えたいと考えていました。俺の傍にずっと麗奈さんにはいてほしいと思っています。そのために俺は麗奈さんの希望を実現させます。俺にとっても麗奈さんはかけがえのない人です。だから守っていこうと思ってます。」


昨日、麗奈に言った言葉が思い浮かんだ。


「健司君、ありがとう。今の言葉を聞いて安心したよ。麗奈を頼むね」


「はい。俺なりに全力でやります」



麗奈のアルバムを見てた時、何故か笑顔が見られない時があった。特定の年代だけ…


今の麗奈は、俺に無邪気な最高の笑顔を見せてくれる。あの笑顔がある限り、麗奈は幸せであると確信することが出来る……



俺は気を引き締めて麗奈に向き合おうと思ってた時、最後にお父さんから一言


「で、健司君 結婚式はいつにする?」


うちの親と気が合いそうだと本当に感じた。 俺の人生って、もう決められてるの?




麗奈とお母さんが帰って来て、昼ご飯を作り出す。俺は麗奈の部屋に戻っていて、お父さんから話を聞いたことを麗奈には知られないようにする。


「健司君、お昼ご飯できたよ」


「わかった、今行くよ」


麗奈に呼ばれて、リビングでみんな揃って食事をする。当然、俺には麗奈の父さんや母さんから、色々な質問をされるが、本音で全て答える。

(ただし、昨日麗奈に襲われそうになったのだけはナイショ)


「もう、お父さんもお母さんも健司君を困らせないで」


そう言って麗奈は時折怒っていたが、麗奈の母さんが、


「麗奈も嫁入り準備始めないとね」


と言い、続いて父さんが、


「そうだね、健司君に貰ってもらえてよかったよ」


と、言い出すと、顔を赤くして何も反論しないで、


「もう~ お父さんとお母さんったら~」


と言って喜んでいた。 麗奈さん、そこは全て肯定ですか? 何か反論は無いの?

もしかしたら、このままいけば俺の知らないうちに結婚式の日が決まっているかもしれない。

俺だけ当日に教えられるとか……



「これからは、いつでも遊びに来てね。泊って行ってもいいのよ」


麗奈のお母さんが言う。


「そうだね。うちにも息子が出来たようだ」


麗奈のお父さんが言う。


「だって。健司君いつでも泊りにおいでね」


麗奈は笑顔で言った。


おれ、何て言ったらいいの? お言葉に甘えますも言いにくいんだけど…


「とにかくこれからもよろしくお願いします」


これで全てを誤魔化せた… と思っていたら、麗奈が睨んでいたので…


「また今度、ぜひお泊りに来させてもらいます」


と、付け足しておいた。 睨んでいた時の麗奈は… 怖かった。

でも、麗奈の父さんも母さんも麗奈のことを心配に思って言ってるんだろうな… 

そう思うと、たまに泊りに行った方が… とも思う…


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