愛理の作戦
放課後
昼休みの立花先輩の突然訪問でクラス内はざわついていた。立花先輩が2年の教室に普段来ることはあり得ない。彼女の存在感はやはり大きい。
「健司、お前の先輩来てたけど、あれなんだったの? それに横にいたのは立花先輩だよな。おれ、立花先輩を初めてあんなに近くで見た。やっぱすごい美人だな」
直人が聞いてきた。
「立花先輩を知ってるの?」
俺が聞くと
「知らないやつの方が少ないよ。学校一の美人だからな。俺は1年生の時に見に行ったよ」
やっぱ有名なんだ。(俺は知らなかったけど…)
「健司と立花先輩って知り合いなの?」
話を聞いていた裕子が俺に聞いてきた。
「沖本先輩つながりでちょっとね… 」
「へ~ そうなんだ」
裕子が怪訝な表情で俺を見る。
「それより、みんな部活行こうぜ」
この状況で、昨日から麗奈と付き合ってるなんて言えるわけがない。
これ以上つっこまれたくなかってので、早々に部活に行くことにした。
その日の夜の愛理と裕子
「裕子、最近の健司君の様子はどう?」
「愛理とのことも何も話さないし、好きな人ができたとも聞かないかな…」
「ずっとLINEで、次いつ会えるか聞いてるんだけど、最近返事が変わって来てるんだよね… 特に昨日は何か変だったな… 」
「そういえば… 今日珍しい人が健司に会いに来てたかな… 」
「どんな人?」
「2人で来てたんだけど、一人はサッカー部の先輩,もう一人は立花先輩っていう女の人。 その女の人はサッカー部の先輩の同級生らしいけど… 」
「ふぅ~ん、で、どんな人? その立花先輩って人は?」
「うちの学校のマドンナ。むちゃくちゃ綺麗な人。すっごい美人だよ。 なんか健司慌てて出ていったけどね… 」
「それは今日初めて?」
「そうだよ、立花先輩が2年クラスに来ることなんか無いもん」
「やっぱりね… 」
「何が?」
「健司君の恋の相手は多分その人だよ」
「えぇー、そんなことないでしょ?」
「まだ、途中なのか… もう完成したのかどうかは、わからないけどね… 」
「もしそうだとしたら大変だよ? 愛理の競争相手はうちの学校のマドンナだよ?」
「そうね… 全然うれしくない。多分最悪だね… 」
「あの人と顔で張り合っても… 愛理でも勝てるかどうかわかんない… 」
「厄介なのはそこじゃないよ。健司君がただ可愛いや綺麗な子が好きなら私にもそれなりに興味を示すはずなんだよね。特に紹介された日は、その人とまだ親密じゃなかったと思うし… それなのに健司君は私を女の子としてあまり見なかった… 健司君ってそこまで女の子の顔にこだわらないと思う」
「多分、健司君はその立花先輩の顔だけでなく何かに惹かれたのよ。そしてそこが最も大事な部分。そこが変わらない限りこの勝負は私の完全な負けだね」
「なんで愛理がそんなに弱気になるの?」
「はぁ~あ、もう少し早く裕子に紹介してもらうんだった… それだけが後悔」
「愛理が何言ってるのか分かんないよ… 」
「ためしに明日、ふいに健司君の後ろで『立花先輩』って呼んでみて。多分彼は明らかに動揺すると思うから」
「それって、誰でもびっくりしない?」
「じゃ、裕子が後ろの方で、ただ知っているだけの男の先輩の名前を聞いて驚く?」
「それはないよね」
「そういう事。ためしに明日やってみて」
「で、この場合、愛理はどうするの? 流石にリタイアする?」
「ん~、とりあえず私がとる方法は一つしかないかな… 」
「そうだね… 運が悪かったと思ってあきらめなよ」
「何言ってんの? 諦めるなんてありえないよ」
「じゃ、どーすんの?」
「裕子、大事なお願いするね。これだけは私の言うことを聞いて… 明日 ……… ~してほしいの。お願いできる? 」
「別にいいけど、それで何とかなるの?」
「いいからお願いね」
「分かった」
次の日の金曜日
昨日は初めて愛理さんからLINEが来なかった。なかなか会う約束をしないので俺に興味を失くしたのかな? などと考える。麗奈とは電話で学校での二人の関係などを話した。
昨日は突然麗奈が会いに来てびっくりしたが、別れ際のキスはもっとびっくりした。しかし、それよりも麗奈を彼女にできた充実感で俺の心は満たされている。
朝練を終えて教室に入ると、何故か注目を浴びる。多分昨日沖本先輩と立花先輩とどこへ行ったのか、何を話していたのかみんな興味があるようだが直接は聞いてこない。授業が始まり、いつものように時間が流れてお昼休みになる。
直人がいつものようにやって来たが、裕子が見当たらないなと思っていたら
「立花先輩… 」
という声が急に聞こえて、思わず俺はびっくりして後ろを振り返った。そこには裕子がいて
「立花先輩ってやっぱ綺麗だったよね」
と話しかけてきた。俺は麗奈がまた来ているのかと思ったため凄く焦った。
「そうだね。ほんとあんな綺麗な人がうちの学校にいたんだ」
なんとなく俺は裕子の会話に合わせて答えた。裕子は
「健司… 直人、早くご飯食べよ」
といって、俺たちに早く席に着けと促した。その時の裕子の顔は何だか納得できないような表情をしていた。
弁当を食べ終えたとき、急に裕子は話し始めた。
「健司、そういえば愛理とはどうなってんの? 今度時間とって会ってあげてね」
「今は大会も近いし、なかなか時間とれないんだよね」
「ほんとに? 土曜日とかならいくらか時間とれるでしょ?」
「… あのさー 裕子… 」
「愛理からも少しでいいから時間とってほしいって頼まれてるんだよね… 何か考えてることでもあるの? 愛理に直接話しにくいんだったら私が聞くよ?」
「そうだな… あしたさー、夕方4時位に裕子は時間とれる?」
「直人、明日の夕方さぁ~ 健司の話聞きに行ってあげていい?」
「ああ、いいよ。健司も裕子には思ってる事はっきり言えよ。愛理さんに失礼だぞ」
「分かった… 」
明日、俺は裕子に本当のことを言おう。紹介されたんだから愛理さんにもはっきりとした返事をしなくちゃ… 待ち合わせ場所と時間を決めて、その話は終わった。




