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告 白

観覧車を降り、閉園間近となった遊園地を出る。


「では麗奈さん、少し早いですが晩御飯を一緒に食べに行こう」


そう言って俺は彼女の手を握って歩きはじめる。


「駅近くのビルにあるレストランを予約しておいたんです」

「本当! 何か今日の健司君素敵すぎる…」


麗奈さんは、少し驚いていたが物凄く嬉しそうだった。予約した甲斐があった。ビルの高層階に予約したレストランがある。平日なのでお得なディナープランがあったのでそれを頼んでおいた。 二人して席に着き、夕暮れの景色を眺める。


今日一日 本当に楽しかった。 

それ以上に自分の気持ちを確かめられた事が重要だった。もしかしたらこれからが本番である。


「何か、健司君と一緒にこんな所にいるなんて夢のよう…」


麗奈さんが不意に言った。俺の方を見るのではなく、遠くの方を見て……


「遊園地って、閉園になると寂しくありません? あれだけたくさんの人がいて賑わっていたのに嘘のように誰もいなくなってしまう。 子供の時、最後まで遊んでて帰るときにふと見た景色が忘れられなくて……」


「でも、今日は何だか寂しく感じないんですよ。楽しかった遊園地は閉まっても、俺の傍には麗奈さんがいる… 」


なんとなく俺が今思っていることが口に出た。それを聞いていた麗奈さんは真剣な眼差しで俺の手を握りしめて言った。


「健司君がさみしい思いをするなら、ずっとそばに居てあげるよ。私も健司君の傍に居たい…」



その言葉を聞いて… その時の麗奈さんの表情を見て俺は何だか心が温かくなるのを感じた。

(本当に麗奈さんがそうしてくれるなら、どんなにいいだろう……)



それから料理が運ばれてきて、今日あったことを思い出しながら二人で楽しい食事をした。


食事が終わり、今日最後のお願いを麗奈さんに言った。


「少し歩くと遊園地を見下ろせる丘に公園があるんですよ。一緒に行ってくれませんか?」


「行くに決まってるでしょ」


麗奈さんは俺の腕をつかんで微笑んでいる。10分ほど歩いて公園につき、すっかり暗くなった風景を見ながらベンチに座る。


ここからは、さっきまで遊んでいた遊園地が見える。少し冷えて来たので二人で寄り添うように座り、互いに手を重ねている。


「今日は健司君と本当の恋人同士になれた感じがして、すごく楽しかった」


「俺の方こそ麗奈さんのこと本当の彼女だと思って幸せを感じてましたよ」


「ねぇ、健司君、暗くなった遊園地を見に行こうよ」


彼女は立ち上がって遊園地が良く見える方へ進んでいく。公園の柵に手をついて二人で眺める。


「健司君、少し寒くなってきたから私の後ろに来て」


俺が彼女の後ろに回ると、彼女は背中を俺の胸にくっつけて、


「こんなとき私の彼氏だったら、私を包み込むように温めてくれるはず…」


と言った。俺は両腕を彼女の前にまわし、後ろから彼女をそっと抱きしめた。柔らかな彼女の体と香りを感じると、俺は自然と抱きしめる力が強くなる。


いま彼女はどんな表情なんだろう… こちらからは見えない彼女の表情が気になるが、もう少し、あと少しだけでいいからこのままいさせてほしいと思っていた。



「ねえ 健司君… 」



彼女はそう言いながらゆっくりと振り返る。その瞳は真っすぐ俺を見つめていた。その瞳に見つめられていると…… 俺の顔は自然と彼女に近づいて行った。何かに吸い込まれるように… 


俺がこれから何をしようとしているのかは自分で分かっているが、多分もう止められない。自分でもどうしようもないのがわかる。



そのまま俺は、彼女の唇に俺の唇を重ねた。彼女もそれをしっかりと受け止めてくれた。どれくらいの時間がたったか分からない… ふと彼女が少し震えているのがわかり、唇を離して顔を見ると、その綺麗な瞳から涙が流れていた。


ただ、その表情は何か安心したような穏やかな表情だった。 俺は彼女を抱きしめた。彼女も俺を抱きしめた。初めは包み込むようにやさしくだったが、だんだん力強く互いに抱きしめた。


少しの沈黙の後、彼女は言った。



「健司君、問題を出していいかな?」


俺は急に何だろうと、戸惑ったが彼女に合わせる。


「難しい問題ですか?」


「それは健司君次第だよ…」



「健司君、今私が望む言葉を… あなたの口から言ってくれないかな?」



今麗奈さんが望む言葉… それは俺が望む言葉でいいのか……


「麗奈さんが言ってほしい言葉は分からないけど、俺が伝えたい言葉はあります… 麗奈さんが好きです。これからもずっと一緒に居てください」



「正解……」



麗奈の瞳からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。健司はその顔を優しく胸に押し当てた。そしてもう一度、今度はお互いに近づいて唇を合わせた。 そして互いに抱きしめあう。


健司も麗奈も同じ思いで抱き合っていた。


 『 今はこれで十分。これ以上何もいらない 』


しばらく二人で抱き合っていたが、麗奈が、


「健司君、言ったよね? ずっと一緒に居てほしいって」


と言った。


「本当にずっと一緒に居てほしい、離したくない」


「じゃ 約束して。絶対に離さないで、私だけを見つめていて、私の全てをみて」


「約束します。麗奈さんだけを見つめ続けていきます」


「それともう一つ。今からは麗奈と呼ぶこと」


「分かったよ、麗奈」


「よく出来ました、健司君 クスッ 」


麗奈は健司に思いっきり抱き着いた。その顔は満面の笑みだった。


帰りは二人とも無口になっていたが、時折目が合うとそれだけで幸せを感じることが出来た。二人の気持ちが繋がったことで、二人とも胸がいっぱいとなりこれ以上何も考えられなかった。


マドンナと健司の深い関係はここから始まります。互いに初めてできた好きな人への感情がどのように成長して変化していくのか見守ってください。

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