健司と麗奈の遊園地2
とりあえず、昼食も終わり昼からのアトラクション巡りを再開する。
麗奈は
「午後はこの感じで行く」
と言って、健司の腕に自分の腕を絡ませた。軽くからむ腕と腕は何となくちょうど良い感じ。このままいくつかのアトラクションを廻り、暑くなってきたのでお化け屋敷にでも行こうかとなった。
「麗奈さんはお化け屋敷大丈夫?」
「あんまり自信ないな。私、結構怖がりなんだ。」
嘘である。
麗奈はこのときを狙っていた。お化けなんて小学生4年で信じるのをやめた。
「俺もあんまり自信ないんだけど」
嘘である。
健司は前回愛理と行った時もまったく気にしていなかった。
二人とも狙っていた。ここでさらなる一歩を踏み出そうと思っている。
お化け屋敷に入ると、二人とも全力で計略を開始する。
先攻は麗奈、「キャー」と言って健司の腕にしがみつき胸を押し当てる。
健司のダメージ10 麗奈のダメージ5
後攻の健司、驚いたふりして麗奈に抱き着く。
健司のダメージ10 麗奈のダメージ20
次の攻撃は麗奈のはずだが、抱き着かれたショックで体制が揺らぐ。そのまま健司の方へまっすぐダイブ。正面から思いっきり抱き着くことになる。麗奈の立派な両胸は健司の胸にべったり押し当てられる。
健司のダメージ30 麗奈のダメージ20
慌てた健司はよろめいて麗奈にもたれかかり、麗奈の頭を抱えて思いっきり抱きしめた形となる。
健司のダメージ20 麗奈のダメージ30
とどめは、二人ともふらつき健司は麗奈を抱える状態で壁に手をつきようやく支える。安定はしたが健司が麗奈を支えている腕は麗奈の胸のあたり、しかも壁ドン状態でお互いの唇までの距離10cm
健司のダメージ50 麗奈のダメージ50
ここでめでたく二人そろって限界突破となった。
お化け屋敷内で、お互いに想像を絶するほど絡み合い、息絶え絶えで出て来た二人を見て、他のお客さんは静かに引いていった。 静かに……
二人とも、真っ赤なのか、真っ青なのかよくわからない顔色となったので、とりあえずベンチに座って休むことにした。 二人とも同じことを思っている。
『 自分たちは経験が浅すぎる、これ以上やると死んでしまう 』
付き合った経験が一度もない者たちが、いきなり全てを得ようとした結果、燃え尽きた。そこには、愚か者たちの屍がよこたわっていた。
健司たちは一日の体力の1/3を一気に消耗させたが、お互いに抱き着いた時の興奮と幸福感はしっかり記憶に残している。ある意味収穫も大きかった。
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今日の健司君は私が思ってたのとは違う。 なんか… すごい… とってもいい。
どうやって手をつなごう… と、思ってた矢先に健司君から繋いでくれた。さらに
「今日だけ麗奈さんを彼女のように思ってもいいですか?」
だって!!! キャャャー …ハァハァ
健司君が今日から、彼女にしてくれるって言ってくれた! あれ? 「今日だけ」か……でもすごい。
こんなこと健司君の方から言ってくれるなんて夢みたい! なんでだろ? 何でもいいや… 出来ればこのままゴールの結婚までなし崩し的に …ハァハァ…
落ち着こう、落ち着こう… 急いては弘法も木から落ちる? だっけ…
慎重に行こう。何か健司君見てて今日はいける気がする。私ならやれる!
とりあえず、暑くなってきたから… 自然と上着を全て脱げばいいんだっけ…?
もうちょっと栞と綿密に計画立てておくんだったー … でも、お化け屋敷はやばかった。お化け関係なく失神しかけた。事故みたいな感じだけど、健司君に抱きしめられて、心臓止まりかけた。
最後なんて健司君の唇まであと10cm、何であと10cm前に出れなかったのよぉ~
事故を装って健司君の唇を奪えたのに~ こんなチャンス… もうないよぉ~…
でも、全ては私の経験の無さが原因か… でもね、でもね… 抱きしめられるのすっごく良かった。あれ、癖になっちゃう。 とりあえず、手をつないだり、腕をくんだりには結構慣れてきた。 てか、ずっと手をつないでいたい。
まだ時間はある。 これからだ。 多分今日はチャンスだ、逃したくない!でも本当のこと言うと… 結構きつい… 今日の帰りまで精神力が持ちますように
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ようやく精神が安定したので、次にどこへ行こうか考える。まだ俺も麗奈さんも十分な精神力の回復が行えていない状況なので、二人でゆっくりできるところを選択する。
「そう言えば俺、彼女出来たら乗りたかったものがあるんですけどいいですか?」
「健司君が行きたい所なら何処でもいいよ」
俺は愛理さんの手を引っ張ってボート乗り場へ向かう。
「一度、恋人とボートに乗ってみたかったんですよ」
「何か健司君らしいね」
麗奈さんは、にこりと微笑んでいた。
ボートを借りて俺が漕ぎ出し、池の中央へ向かう。二人っきりでゆらゆらとボートに揺られると、なんだかすごく和む。麗奈さんもくつろいだ表情で水面を見つめる。水面に反射した光が麗奈さんの顔をキラキラと照らす。
光に照らされた麗奈さんのうつろな表情は、美しいという言葉では形容しきれないものであった。見惚れるとはこのことなんだと実感した。本当に美しい。その姿に俺の気持ちが吸い込まれる。
俺の視線に気づいた麗奈さんは
「どうしたの?」
と、優しく微笑む。俺の口からは何も言葉が出てこなかった。言葉を出せなかった。
「健司君、何でさっきから無口になってるの?」
優しく問いかけられる。良い言葉も出てこないので正直な気持ちを言った。
「水面の光を受けてキラキラ光る麗奈さんの顔に見惚れてたんです」
「……」
麗奈さんは顔を赤らめて俯いて何も言わなかった。そんな表情も凄く綺麗だった。ずっとこうして眺めていたい… 何かそれだけで満たされるような気がする……
自分の気持ちがようやく分かった。自分は麗奈さんにきっちり惚れている。この気持ちをどう伝えれば良いんだろう… 今こんな近くにいるのに、なぜ不安に思うんだろう…気持ちを伝えた瞬間に、あの優しそうな表情が曇ってしまったらどうしよう……俺の心に不安がよぎる。彼女により近づいて幸せを感じれば感じるほど不安も大きくなる。
ボートを降りた俺たちは、それから遊園地をぶらぶら歩く。 途中でクレープを買ってベンチで休憩。麗奈さんはしきりに自分のクレープを俺に食べさせ、俺のクレープを欲しがって食べる。「だったら交換しましょうか」と言うと、それでは意味がないと言っていた。
何の意味?… よく分からないが、とりあえず彼女の望むままにしようと思った。
何か午前中とは違い、ゆったりと時間が流れ落ち着いている。この感じがすごくいい。相変わらず手を繋いだり、腕を組んだりして歩いているが、それが当たり前のようになってきている。ときおり腕に触れる彼女の胸の感覚は… 興奮するので自制心を保つのに大変な状態となってしまう。
(麗奈さん… たまにワザとやってません?)
それからいくつかのアトラクションを巡り、夕方となってきたので締めの観覧車へと向かう。
「やっぱ、恋人たちの遊園地の締めくくりは観覧車だよね」 俺が言うと
「そうだよね。二人で見る夕日は格別だよね」 と麗奈さんが言った。
「麗奈さん、今日は恋人みたいになって貰って本当に楽しかった」
「私も今日は健司君を本当の恋人だと思ってたよ」
「すごく幸せな気分を味わえた。何か贅沢をした気分です」
「それは私も同じこと。恋人と楽しめる遊園地なんて最高だよね」
繋いでる手に力が入る。本当は明日も今みたいに手を繋いでいたい。
急に彼女は俺の手を持ち上げ、腕を上げさせて彼女の肩においた。今、俺は彼女の肩を抱いている格好である。彼女と完全に密着した状態となった。彼女は顔を俺の胸にくっつけて俯きながら言った。
「しばらくこのままでいて。このままゆっくりとしていたい」
彼女の肩を抱くと、思っていた以上に細くて華奢に感じた。それと彼女の暖かさが直接伝わってきた。彼女の髪からは何とも言えない良い香りがして女の子を抱きしめている実感がする。
何だか意識が遠のいて今は何も考えられない。興奮してドキドキもするが、少しでもこの時間が長く続いてほしいと思っていた。 二人は何もしゃべらずにしばらくそのままじっとしていた。 でもそれで良かった…… 何とも言えない充実感。




