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アネットとピート  作者: 忠 六郎
3/5

第3話 学園にて

「おはようございます、アネットさん、ピートさん」


二人が教室に入ると、一人の女子生徒が挨拶をしてきた。


「おはようございます、ビクトリア様♪今日も綺麗な御髪ですね♪」


「お、おはようございます、ビクトリア様」


二人に挨拶をしてきたこのビクトリアというゴージャスな金髪女子は、隣国の王女である。

彼女は人としての常識を身につけるという訳のわからない理由で、この学園に留学していた。


「アネットさんもお可愛い…いや、相変わらず素敵ですよ」


ちなみにビクトリアも、生徒会からの御触れを守っている一人である。

さすがの彼女も、この学園の友人達のおかげで、少しは空気を読むことを覚えたらしい。


「あ、ありがとうございます。ビクトリア様みたいに美人な方に褒めていただけて、ボク嬉しいです♪」


そう言ってはにかむように笑うアネットは、女性のビクトリアから見ても可憐であった。


(い、いけないわ!ビクトリア!私には国に可愛い二人の妹がっ!)


そして教室に居たビクトリア以外の生徒達も、


「ウソ…だろ…?あれで男のフリ…」


「ねぇ…もう私、限界…アネットさんと女子トークを…」


「これ…このまま続けるの無理じゃね?」


と、ヒソヒソ声で話していた。


(ア、アネット…)


そしてピートも、そんな周りの空気をひしひしと感じていた。


「アネット、それじゃ席に着こうか。それではビクトリア様、後ほど」


「う、うん。ではビクトリア様、失礼致します〜」


ピートはアネットの手を引き、彼女の席まで引っ張っていく。


「はぁ〜」


「どうしたの、ピート?疲れちゃった?」


登校するだけでヘトヘトになったピートに向かって、隣の席に座ったアネットがこれまた可愛いらしく小首傾げる。


((((かわっ♪かわえぇー♪))))


ピートを含めた、教室にいる全員の気持ちが一致した。


「あっ!じゃあボクが肩を揉んであげるよ♪」


アネットはいいことを思いついたと手を打って、ピートの肩を正面から掴んで一生懸命揉み始めた。


「よいしょ、よいしょっと。どう、ピート?気持ちいい?」


「う、うん。気持ち…いい」


実のところ正面からの肩揉みは一切効果はなかったが、ピートは思わずそう返事をしていた。


そしてその周りでは、


(((ギャー!可愛いー!)))


と、教室中の生徒がそれぞれの姿勢で悶えていた。

シスコン疑惑のあるビクトリアでさえ、背筋をピンと伸ばして二人の様子を凝視している。


「あ、ありがとうアネット。もう大丈夫だよ」


「え?もういいのかな?」


「うん」


「そう、じゃあ交代だよ♪」


アネットはそう言って、ピートに背中を向けた。


「えぇっ?俺が揉むのか!?」


「だってボクも揉んで欲しいんだもん。ダメ…?」


(((ダメじゃないっ!)))


再びピートを含めた全員の気待ちが一致した。

すでにこの教室の生徒は、人気アイドルのコンサートばりに心がひとつになっている。


「じゃ、じゃあ失礼して…。

せーの、よいしょっと」


「んっ!んんっ!」


ピートが肩を揉むのに合わせて、アネットの体がビクンビクンと跳ねる。


「こうか…?この辺か?」


「あっ、あぁ!あんっ!」


「よし!ここもか!」


「あぁん!だめぇ!き、気持ちいいのっ!」


ピートが夢中になって肩を揉み続けると、アネットはなんだか艶めかしい声を上げ始めた。


「ここか…?ここがええのんかっ?」


「そう、そこぉっ!ピート!もっとぉ!」


「「「もうやめろ!!!」」」


さすがにこれ以上教室ではまずいと、クラスの全員が叫んで二人を止めた。


「はっ!ご、ごめん、アネット!」


「ううん、いいの…。ボク、すごく気持ち良くなっちゃっただけだからぁ…」


アネットは頬を染めてクッタリとしている。


ガララッ!


「はーい!じゃあ今日も授業を始めるわよー!」


とそこで、タイミングよく担任のレベッカが教室に現れた。


これはクラスメート達が、可愛いアネットを見てちょっとドキドキする物語。

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