第3話 学園にて
「おはようございます、アネットさん、ピートさん」
二人が教室に入ると、一人の女子生徒が挨拶をしてきた。
「おはようございます、ビクトリア様♪今日も綺麗な御髪ですね♪」
「お、おはようございます、ビクトリア様」
二人に挨拶をしてきたこのビクトリアというゴージャスな金髪女子は、隣国の王女である。
彼女は人としての常識を身につけるという訳のわからない理由で、この学園に留学していた。
「アネットさんもお可愛い…いや、相変わらず素敵ですよ」
ちなみにビクトリアも、生徒会からの御触れを守っている一人である。
さすがの彼女も、この学園の友人達のおかげで、少しは空気を読むことを覚えたらしい。
「あ、ありがとうございます。ビクトリア様みたいに美人な方に褒めていただけて、ボク嬉しいです♪」
そう言ってはにかむように笑うアネットは、女性のビクトリアから見ても可憐であった。
(い、いけないわ!ビクトリア!私には国に可愛い二人の妹がっ!)
そして教室に居たビクトリア以外の生徒達も、
「ウソ…だろ…?あれで男のフリ…」
「ねぇ…もう私、限界…アネットさんと女子トークを…」
「これ…このまま続けるの無理じゃね?」
と、ヒソヒソ声で話していた。
(ア、アネット…)
そしてピートも、そんな周りの空気をひしひしと感じていた。
「アネット、それじゃ席に着こうか。それではビクトリア様、後ほど」
「う、うん。ではビクトリア様、失礼致します〜」
ピートはアネットの手を引き、彼女の席まで引っ張っていく。
「はぁ〜」
「どうしたの、ピート?疲れちゃった?」
登校するだけでヘトヘトになったピートに向かって、隣の席に座ったアネットがこれまた可愛いらしく小首傾げる。
((((かわっ♪かわえぇー♪))))
ピートを含めた、教室にいる全員の気持ちが一致した。
「あっ!じゃあボクが肩を揉んであげるよ♪」
アネットはいいことを思いついたと手を打って、ピートの肩を正面から掴んで一生懸命揉み始めた。
「よいしょ、よいしょっと。どう、ピート?気持ちいい?」
「う、うん。気持ち…いい」
実のところ正面からの肩揉みは一切効果はなかったが、ピートは思わずそう返事をしていた。
そしてその周りでは、
(((ギャー!可愛いー!)))
と、教室中の生徒がそれぞれの姿勢で悶えていた。
シスコン疑惑のあるビクトリアでさえ、背筋をピンと伸ばして二人の様子を凝視している。
「あ、ありがとうアネット。もう大丈夫だよ」
「え?もういいのかな?」
「うん」
「そう、じゃあ交代だよ♪」
アネットはそう言って、ピートに背中を向けた。
「えぇっ?俺が揉むのか!?」
「だってボクも揉んで欲しいんだもん。ダメ…?」
(((ダメじゃないっ!)))
再びピートを含めた全員の気待ちが一致した。
すでにこの教室の生徒は、人気アイドルのコンサートばりに心がひとつになっている。
「じゃ、じゃあ失礼して…。
せーの、よいしょっと」
「んっ!んんっ!」
ピートが肩を揉むのに合わせて、アネットの体がビクンビクンと跳ねる。
「こうか…?この辺か?」
「あっ、あぁ!あんっ!」
「よし!ここもか!」
「あぁん!だめぇ!き、気持ちいいのっ!」
ピートが夢中になって肩を揉み続けると、アネットはなんだか艶めかしい声を上げ始めた。
「ここか…?ここがええのんかっ?」
「そう、そこぉっ!ピート!もっとぉ!」
「「「もうやめろ!!!」」」
さすがにこれ以上教室ではまずいと、クラスの全員が叫んで二人を止めた。
「はっ!ご、ごめん、アネット!」
「ううん、いいの…。ボク、すごく気持ち良くなっちゃっただけだからぁ…」
アネットは頬を染めてクッタリとしている。
ガララッ!
「はーい!じゃあ今日も授業を始めるわよー!」
とそこで、タイミングよく担任のレベッカが教室に現れた。
これはクラスメート達が、可愛いアネットを見てちょっとドキドキする物語。