第一話 隙だらけのアネット
小説家になろうでもう一つ連載している、
「ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?」(https://ncode.syosetu.com/n0435do/)と同じ世界で別な話を書きたいと思って始めた小説です。
一話づつは短い話になりますが、楽しんでいただけたらと思っています。
よろしくお願い致します。
アネットとピートは、とある世界のとある国に住む主従の二人。
それぞれアネットは領主の家の長男で、ピートはその家に仕える騎士見習いだ。
しかし、そんな二人はお互いに大きな秘密を抱えていた。
「ふぁ〜、おはよう、ピート♪」
「お、おはよう、アネット…」
ピートの朝はアネットを起こしに行くことから始まる。
彼は毎日アネットを起こす時、視線のやり場に困っていた。
(ア、アネット!今朝も胸が溢れちゃってるよっ!)
というように毎朝、寝起きのアネットの胸が、彼女のシルクのパジャマからハミ出しているからだ。
アネットは寝る時、サラシを胸に巻いてベッドに入るのだが、大抵朝には解けてしまっている。
「ア、アネット!早く着替えて!」
「ふぁ〜い」
そう…アネットは王子として育てられたお姫様であり、ピートはだいぶ前からその事に気付いていた。
そんな秘密を抱えながら二人は生活をしている。
「あ〜ピート?今日はなんだっけ?」
「昨日と変わらず学園だよ、アネット…」
(アネット、お願いだから微妙に見える位置で着替えるはやめてくれ…)
アネットは毎朝、彼女の部屋の大きな洗面所で着替えるのだが、なぜかいつも少し扉を開けた状態で着替えるのだ。
(ピ、ピートから見られちゃいそうだけど、ちょっとだから大丈夫だよね…?
だって…開けてないと、ピートの声が聞こえなくて寂しいんだもん…)
彼女はそう思いつつ、胸を隠すためのコルセットを身に着けるが、その姿は完全にピートの位置から見えていた。
ちなみにアネットはすくすく育っている為、最近コルセットの損傷が著しい。
「お、お待たせピート♪」
「あ、あぁ、じゃあ行こうか、アネット」
アネットとピートはいつものように並んで城の廊下を歩く。
二人は国立学園の男子生徒用の濃紺のブレザーを着ていた。
「今日も頑張ろうな、ピート♪」
とニッコリ笑うアネットは、肩までの長さ金髪を、小さな桜の髪留めでまとめていた。
そんな髪留めを付け、体の一部以外が小柄なアネットは、男子の制服を着ていても完全に少女と判る。
(アネット…やっぱり可愛い…)
ピートは横を歩くアネットの魅力に完全にやられていた。
「さぁ朝ごはんだぞ♪」
と言って、アネットが扉を開け、二人はダイニングに入り席につく。
「二人ともおはよう」
「アネット、ピート、おはよう♪」
とアネット達に挨拶をしたのは、アネットの父、ショーン・マクガイアと母のエリス・マクガイアである。
とある地方の領主であるショーンは、仕事の都合でこの首都の町に住んでいた。
「おはようございます、お父様、お母様」
「領主様、奥方様、おはようございます」
アネットの従者であるピートだが、一緒に食卓につく事が許されていた。
というか、それがアネットとエリスの希望であった。
「ではいただこう。いただきます」
「「「いただきます」」」
そして、いつもの様に四人での朝食が始まった。
食事の最中、アネットの父、ショーンの頭の中はある事で埋め尽くされていた。
(もう隠すのムリ…だってウチの娘、可愛すぎるんだもん…)
というように最近、アネットを王子として育ててきたショーン自身が、その設定に限界を感じていた。
そして、そんなショーンの隣りに座るエリスも、
(だから私は最初からムリだって言ったのに…。
だいたいアネットは産まれた時から美人さんだったのよ!)
と心の中で思っていた。
ちなみにこの両親は、ピートにアネットが女の子だとバレている事に、もちろん気付いている。
「お父様、お母様、今日のお食事も美味しいですね♪
この炒り卵の作り方、あとでコックさんに習ってこようかなっ♪」
当然、王子はこんな発言をしない。
(((可愛いすぎかよっ!!!)))
と、一緒に席に着く全員が思い、引きつった顔のまま、今日も朝食が終わった。
改めてになりますが、小説家になろうではもう一つ、「ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?」(https://ncode.syosetu.com/n0435do/)
というお話を連載しております。
そちらの小説はアネットとピートとは違い、長編の小説になっております。
このアネットとピートに登場予定の人物も「ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?」には登場しております。
良ければそちらの小説もお楽しみ下さい。