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図書室と先輩~ネオ!~  作者: にま
彼の憂鬱、彼女の鬱憤
8/102

その8 彼女は防御力が低めです。

「寺山くーん。たまには()()以外の本も読んでね」


「先輩、今ソレ言わないでほしいっす!」


 ワタシたちがテーブル席につくいなや、彼に厳しい一言が飛んできた。

 いままで見たことのない表情を次々と見せる彼。

 新鮮ですごく楽しい。

 子ども扱い、といっちゃ失礼かな? 

 どうやら彼はあの先輩には頭があがらないらしい。


 「はは、やっぱりそうなんだ」

 

 そういえば、この図書室って”手塚治虫”が置いてあるのよね。

 嫌いじゃないし、ワタシも読んでみようかな。

 あー、でもそれだけだとなんだし「中原中也」とか脇においておこうかしら。

 彼がかなり恥ずかしそうにしている。かわいいぞっと。

 でも漫画でも面白いものは面白いし、下手な小説なんかより感動できたりするよね。

 そんなに気にすることないよ。

  

 「寺山って小説とか読むタイプじゃないもんね」


 これ見よがしに難しそうな本を難しい顔で読んでいる人って結構いるけど、そんなのはタイプじゃないし。

 だからワタシ的にはそれでもOK。


「まあ、ワタシもこの頃は全然読んでないけどね」


 読書より他に楽しいことが今はいっぱいある。そういうこと。


 テーブル席から室内を見渡してみる。

 ワタシたちとカウンターのあの先輩以外、誰もいない。

 これもニュースでいうところの若者の活字離れなのかな。

 うーん、どうしよう。本を探してみようか。


「寺山のお薦めは? なんかある?」


 口が動くより先に表情が答えている。本当に可笑しいな。


「ちょっと本見てくるね」


 あの困った顔をもう少し見たいけど、あまり意地悪しちゃかわいそうね。

 あー、でも図書室なんて久しぶり。

 こうやって本を眺めるのってやっぱり楽しいや。

 自分の身長より高い本棚を、上からジグザグに見ていく。

 時折目に留まる本。それはタイトルや作者名、装丁によるものではない。

 本屋さんでもそうだな。

 直感というのか、ワタシを引きつける何かを発している本、というのが必ずある。

 けれど中味を見て、それがハズレなときもある。

 ただし、それはその本がつまらないというわけではない。

 例えばモンブランが食べたい時に、そこにあるのがガトーショコラ的な?

 要はその時の気分でかなり左右されてしまうということ。

 そんな具合で次々本をとってはみるけれど、「コレ」というものがまだない。

 ふと見ると、彼がなにやら心配そう。

 とそのときカウンターから彼に声がかかる。


「寺山くーん、奥の棚の一番下」


 ん、なんだろう?


「左から三冊目」


 まだ見ていないところだよね。


「それ、カノジョさんにとってあげてー」


 またカノジョって呼ばれた。ウフッ!

 カウンターを見ると、なんと本を読みながらその指示を出していた。

 何の本がどこにあるのか、全て熟知しているのだろうか?

 そして彼がその場所に行き、一冊の本を取り出す。

 表紙をめくって……。

 何、どうしたの? 今すっごくいい顔したよね。


「なになに?」


 満足げな顔をした彼に駆け寄る。

 さっきまでの困り果てた表情が一変している。 

 なんだろう、子供がおもちゃを手にした時のような顔。

 気付いてないのかな? 今めっちゃいい笑顔してるよ。

 やだもう、そんな顔見せられたら……。


 萌え死んじゃう!       


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