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図書室と先輩~ネオ!~  作者: にま
彼の憂鬱、彼女の鬱憤
1/102

その1 彼はこの頃憂鬱です。

「ねえ、今日も図書室に行くの?」


 朝の挨拶をすることもなく、着席したばかりのオレに話しかけてきたのは、隣の席の新開映子(しんかいえいこ)だった。

 中学三年の時の同級生。付き合っていたわけではないが、女子の中では最も親しくしていたと言っていいだろう。

 高校で同じクラス、隣の席になるにいたっては「これは偶然じゃない。運命だよ」などと同じ中学出身の連中から冷やかされた。

 実はオレも、心の中では(うぉっしゃ!)ってガッツポーズをとっていた。

 だが、彼女にはそんなつもりはなかったようで、そのことで距離が縮まるということはなかった。

 残念無念、意気消沈。

 こうしてオレのリア充計画はいきなり頓挫したのだった。

 そして現在、問題が発生している。そんな彼女のオレに対する態度が妙な具合になっているのだ。それもなんだか望まぬ方向で。

 二学期に入ってからだろうか、どうにもこうにも不機嫌だ。チクチクチクチク、ことあるごとにトゲのある言葉をオレに投げつける。

 原因についてアレコレ考えたものの、いまだにわからない。

 オレ、彼女になにかしたっけか? たぶんなんかやっちゃったんだろうなあ。でも、覚えがないんだよ。


「ねえ、聞いてんだけど?」


 せっかちなのは中学時代から変わっていない。いや、その前に朝の挨拶はしようよ。


「あー、新開さん? 僕は図書委員で、しかも今日は当番なんです。だから図書室に行くんですが、それが何か?」


 自分で言いながら「説得力ねえ!」とダメ出しをする。

 委員会活動は全員参加ではない。うまくいけばどこにも所属することなく済む。だが担任の指名やくじ引きで、面倒な委員を押し付けられるのは御免だ。

 自分でいうのもなんだが、オレは何かにつけ運がない。ならばと思い、自薦で図書委員に手を挙げたというわけだ。

 理由は「サボりやすそう」だから。ただこの作戦は結局のところ大失敗だった。その間違いに気付いたのは、図書委員枠を確保した後だった。

 もしかしたらオレ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 

 でもまあ、なってしまったものはしかたがない。それに悪いことばかりでもなかったしな。

 ガンバレ、オレ。


 「だからあ、なんでそんなに真面目になってんのって聞いてるんだけど?」


 真面目になっちゃいけないのか、オレ?

 いや、そもそも真面目なつもりはないので、それについては否定する。


「いやいや、そんなことはないので安心してください。不真面目さだけが僕の取り柄ですから」


 この口調が気に入らなかったのか、彼女がさらにトゲのある声をオレに向けた。


「知ってんのよ。先週も、それに昨日も図書室行ってたよね。それも当番?」


 う、それはそうだけど……。って、あれ?


「オレが図書室に行ってたこと、なんで知ってるの?」


 だがこれは、どうやらつついてはいけない藪だったようだ。


「そんなことどうだっていいでしょ!」


 彼女はすごい剣幕で怒鳴るとそっぽを向いてしまい、もうオレに話しかけてはこなかった。

 あー、しまった。蛇を出してしまった。


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