弱虫シリーズ(1)
小説初投稿ですが楽しんで考えました。
宜しくお願いします‼︎
僕は弱虫だ。
湯船に肩まで浸かりながら独りごちている。
僕は就職しているのだけれど両親と共暮らしだ。
一人になれる個室はトイレ、風呂場くらい。
じめじめした僕が風呂に入ると辺りのタイルから青苔が生えてきそう。
パラサイトシングルと言うそうだ、僕みたいな奴を。
親元から自立せず寄生虫のような者を。
親の寄生虫か‥‥初めて聞いた時、苦笑した。
ふと ドゥンポンと蛇口から雫がこぼれて、僕は我にかえった。
また物思いに耽って風呂の湯がすっかりぬるくなってしまっていた。
身体が冷えてしまいそうで僕は風呂から出ようとして
扉を開けると、そこは異世界だった‥‥
‥‥なんて事はなく。
いつもの見慣れた僕の世界が転がっているだけだった。
なんだか昼食の匂いがするから、母が支度しているのだろう。
井の中の蛙よ。
井の中にも空を作ればいい。
そういつかの偉人は言っていた。
僕の空はここでも見つける事が出来るかな‥‥。
タンスから衣服を引っ張り出しながら考える。
これからもずっと同じ引き出しから出し続けるのだろう服を。
先ほど他人の言葉を引用したけど、
親から教わったのは
「良い子でいなさい」
「なんにも出来ないノロマ」
嫌でも呪詛のような言葉は何度も頭で繰り返し回る。
今でも今後もずっと。
スリッパを履いた足音が近付いて来る。
次のアクションは僕を呼ぶ言葉だと分かっているから。
「母さん、今いくよ」
彼女の望む元気な声でそう言う。
僕はやっぱり弱虫だ。
皆様、ここまで読んで下さりありがとうございます。
また別の作品で会えると嬉しく思います。