帰宅部生活4日目。
と、いう訳で私たち一年生計四名――まあ、特に面識もないんだけど――は、(頭の)おかしな三年生二名に連れ(去ら)れて、場所を移動してきていた。現在、三年三組の教室前。
「はーい、到着」
荒川さんがウザさMAXなテンションで私達を教室に招き入れる。どこのバスガイドさんだ。
「一年生のみなさーん、本日はわが帰宅部に入部していただき、まことにありがとうございまーす」
私たちの前で黒板を背に立ち、臆することなく挨拶をすると、荒川さんは胸に手を当てて恭しくお辞儀してみせた。どこまでもウザい人だ。
ってか、論ずるところはそこじゃない。
「あの、私まだ入部するなんて一言も言ってないんですけど」
「『まだ』でしょ? どーせ入部することになるよ、大丈夫大丈夫」
さらっと言ってのける荒川さん。ふざけんな一生入るか。一体何が大丈夫なんだ。
「ふざけんな、ってのはちょっと酷いな、僕泣いちゃうなぁ」
あ、また本音が漏れてたか。私の前にしゃがんで両手を組み、上目遣いにアヒル口をする荒川さん。はっきり言ってキモい。
「はっきり言ってキモい」
「なんだよそれぇ、ずけずけもの言うなぁ」
「それはあんたでしょ」
「ほらまたぁ」
「荒川、いい加減にしろ。それとも自分の鉄拳で地に伏すか」
私と荒川さんをたしなめたのは、軍人みたいに歩く三年生男子だ。
自分のこと「自分」とか言っちゃってるし、一々動作が軍人真似てるっぽいし、やっぱりこの人もマトモな人じゃなかったみたいだ。っていうか、ほんとに軍人気取ってんじゃないだろうか。なんだっけ、ミリオタ、ってやつか。
それを悪く言うわけじゃないけど、やっぱろくな人がいない。ほかの部員もきっと普通の人なんかいないに違いない。
「あ、いや、ごめん均ちゃん、それはやめて、真面目に痛いから」
「分かれば良い」
さっと荒川さんから手を引く軍人系男子。荒川さん、完全に手なづけられている。
「早急にすすめろ」
「う、うん、わかった」
ガクガクと頷く荒川さん。手なづけられてるっていうか、最早しもべだ。
「えーっと、じゃあまず、部員の紹介から――」
荒川さんが喋り始めたその時、
「失礼する」
教室の引き戸を勢いよく開けて、誰かが入り込んできた。
驚く私達(一年生)。その他は、微妙な顔でそこを見つめている。
その腕に巻かれた腕章には見覚えがあった。――生徒会の腕章である。