prologue'3
「お待たせ、竜弥」
廊下の窓から外を眺めていると、俺の背後から声が聞こえた。
それが俺に対するもので、その声の主が隼だということは、言うまでもなく分かる。
ちなみに、俺が日頃世話になっているこの校舎は、学校の中では「西校舎」と呼ばれている建物で、その中でも二階に俺たち一年生の教室はある。
二階があるということは一階もあることは言わずもがなだが、さらにその上、三階も存在する。
二階は一直線の廊下に、教室が六つあり、突き当たりの角を曲がったところにもう一本の廊下と教室が二つある。
俺の高校は一学年六クラスで、六つの教室はそれぞれが生徒の主な拠点だ。
二つある別の部屋は、教科が別教室で行われる際に使われる。
三階は立ち入らない生徒も多い。
その理由は、部活動でしか利用しないからだ。
その部活動も、将棋部や囲碁部といった、教室を拠点に活動する文化系のため、無関係の生徒は三階に上がる必要がないのだ。
ちなみに俺は一度だけ立ち入った事がある。
ほんの興味本意で階段を上がっただけだったのだが、廊下に出た瞬間に感じた雰囲気と言うかオーラに、俺は謎の恐怖を感じてしまい、直ぐに立ち去った。
廊下は何故か照明がついておらず、その上、奥の方から聴こえる将棋や囲碁を置くパチパチという音が、暗い廊下の雰囲気のダークにマッチしていた。
かくいう俺も外見はバリバリ文化系なのだが、そういったジャンルには疎く、むしろ体育系なのだ。
ギャップというものが俺には色々と強く出ているらしい。
そんなかんなで三階は俺には無縁の領域だ。
一階は、美術室、会談室、応接室、昇降口などがあり、何れも特定の教科や特定の場合にしか使用しない。
西校舎はまあまあ大きく、それと同じ形の校舎が反対側、対象に東校舎がある。
そして、その両校舎の間に、最も大きく職員室などがある本校舎が建っている。
東校舎の主な構成は、西と二階の教室の学年が二年生に変わっただけだ。
本校舎には、三年生の教室や、その他の集会場などのホールもある。
が、まだまだ俺たちのような下級生には知らない設備も多い。
その辺も、進級するごとに新たな発見があって楽しかったりもする。
「今日は天気も良いから、のんびり出来そうだよ」
「太陽もあるしな・・・・・・って言っても、あそこは丁度木で陰になってるか」
俺が言う、あそこ、と言うのは、俺たちが毎度訪れる固定ポイントだ。
裏山の一ヵ所は、最高に陰や太陽の当たり具合が丁度良く、尚且つ斜面の傾きもベストなのだ。
そこに寝転がれば、睡魔が来なくとも快楽に包まれて寝入ってしまう。
おまけに校舎からは見えない位置にあり、先生や他の生徒に見つかることは殆どない。
その気になれば、そこで授業をサボる事も可能ではある。
考えただけで、胸の奥が変にうずうずしてしまう。
こんな所で喋っているだけ時間の無駄だ。
合流してまもなく、俺たちは廊下を走っていき、階段を下って下駄箱に、正確には裏山に向かった。