若造
長老は思った。
もし、彼女が人間的で人間的なものだとするなら
もし、彼が不完全な人間的で人間的なものだとするなら
今の自分はなんなんだろうかと
彼女は我々の価値観としては最も正しいとされている「彼を殺す」という選択肢を選ばなかった。
いや、むしろそれ以外を選ぶ方法も権利も意味もないはずなのだ。
でも彼女はそこに意味だけを見つけ、それを他を寄せ付けないほどの絶対的な価値観として置いていた。
そして彼はその意味が理解出来ずに煩悶としている。
でもそのこと自体、自分には理解できてないことに長老は気づく。
彼女を理解しようとする心
決してそこに彼女を異端だと排除しようとするものは見受けられない
長老は…
長老ならば
長老として
我々の世界を守る義務がある
それは間違いなく彼女を正しい方向に導くこと
しかし、長老自信がその「正しさ」というものを見ようとしたとき、何か霧のようなものに包まれて見えてしまう
我々の正しさは、我々にしか、わからない
決して外の人間には
では、彼女は我々の正しさに背こうとしているのか
おそらくそれが正しい表現だとは長老は思わなかった
彼女の最大の価値観が我々の正しさとは逆の方向にあった、ただそれだけのことではないのだろうか
長老としての判断
我々の世界を守るための判断
その絶対的な判断が、自分というたった個人の府に落ちなさ、ただそれだけで揺らいでいることに気づいた
「さて、どうしたものか」
長老はあらゆる面倒ごとを一挙に引き受けたような疲労感を感じた