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第六話:異世界に来て、早々に俺終了のお知らせ

また1ヶ月以上かかっての更新………。


ありえないくらいの亀更新。


こんなグズでのろまな作品を読んでくださる皆様に感謝です。

「懐かしいねー。子供の頃と全然変わってないよ」


エカテリーナはギルタの森を見回しながら言った。


「ね、ね、ルシファーも覚えてるでしょ? 最初の頃はよくここで魔物を倒してあなたを育ててたし」


ルシファーはやはり無表情で静かに頷く。


「うーん、童心を思い出すわぁ……」


エカテリーナはほわほわとした空気を醸しながらトテトテと森の道を歩いていく。


あまりの和やかさに偵察隊のAランカーたちですら、あれっ? 俺たちこここに何しに来たんだっけ? ピクニック? なんて馬鹿げたことを考えだしはじめる始末である。


「さーて、ここでいいでしょ」


しばらく歩き続けたエカテリーナは突然、立ち止まった。


「ここら辺が森の中心地だよね? そうでしょ、ルシファー」


魔性の魅力を醸し出す顔を持つ魔王はこくりと頷く。


「エカテリーナ殿? いったい何を為されるおつもりですか? まずはその魔物が確認されたとされる魔力泉へ向かうべきでは?」


Aランカーの中で初老の男がエカテリーナに訪ねる。

エカテリーナはそれに対してふふんと得意気に胸をそらした。


「そんなめんどくさいことをしなくてもいーんだよ。だって私のルシファーには魔力感知のスキルがあるんだから」


ほう、初老の男から感嘆のため息が漏れる。

エカテリーナは何ともないように言い放ったが、警戒の上位互換スキルである魔力感知は習得が難しいスキルなのだ。

それは魔王も例外ではない。


実は魔物自身の強さはスキルの習得に関してはあまり関係がないのである。

強いからレアなスキルを持っているとは限らないのだ。

その逆、一見、弱そうに見えても実は強力なスキルを持っていた、なんてこともある。

故にレベル差のある対決でレベルの低い方がレアスキルを使いこなして勝ったなどはさして珍しいことではないのだ。

だからSランカーたちが持っている種族の頂点でそれより下の魔物が叶うはずのない魔王に対して、多種多様なスキルを使いこなして互角に闘える魔物(・・・・・・・・)を持つAランカーも何人か存在している。


そんなAランカーたちが持つ、この世の不条理と理不尽を体現する魔王と互角に闘える鍛えあげられた数少ない魔物は〝勇者〟と呼ばれ、畏怖される魔王とは対称的に英雄視されている。


「よーし、ルシファー、魔力感知!」


そんな〝勇者〟と呼ばれる魔物すらもあほみたいに理不尽極まりない圧倒的な力でねじ伏せる魔王がいるのもまた事実。


そして目の前にいるのがその魔王なのだから。


主からの命令を受けたルシファーはスキルを発動させる。


「んー、ちゃっちゃと見つけたいし、感知範囲を森全域に広げちゃえ、ルシファー!」


「なっ……!?」


エカテリーナから発せられた言葉にAランカーたちは絶句した。

魔力感知の範囲は精々、半径一キロが限界だとされている。

森全域をカバーするなど不可能である。


だが、理不尽の象徴である魔王は彼らのそんな常識を嘲笑うかのように、粛々と主の命令を実行する。


ルシファーはスキルの効果を高めるために魔力を集中させる。

それに応じて、その燕尾服を着た背に高密度の魔力で構築された二対の翼が出現する。


これこそが魔王ルシファーのユニークスキルの一つである〝欲望の翼〟である。

効果は基本ステータスを強化するという単純なものだ。

これだけなら別にさして強力なスキルではないように聞こえるが、このスキルの脅威的なところはその強化が翼の数(・・・)に応じて、さらに上昇していくということである。

さらにダメ押しとばかりにスキルの効果まで強化するのだ。

まさしく魔王が持つにふさわしい凶悪なスキルである。


「さてさて、見つかった? ルシファー」


Aランカーたちが改めて魔王の理不尽さに戦いているのをよそにエカテリーナは無邪気にルシファーに問う。


すると突然、ルシファーは姿勢を正して、ある一点の方角を見つめた。

それと同時に背に現れていた魔力の翼が二枚から一気に十枚へと数が跳ね上がっていた。


「どうしたの、ルシファー? 何でいきなり全力……」


そこでエカテリーナはルシファーが纏う雰囲気は明らかにさっきと違っていることに気づいた。


「……そこまでしなきゃならないほどの魔力を持った魔物がこの森にいるの?」


エカテリーナの声も先程とは違い、真剣味を帯びている。

その言葉にルシファーはゆっくりと頷いた。


「……これは一筋縄じゃいかないかも」


エカテリーナの発した言葉に弛緩していた空気が一気にはりつめる。

Sランカーである彼女が一筋縄ではいかないとなると本当に洒落にならない事態であることは間違いない。


Aランカーたちはそれぞれ指に嵌めている指輪を掲げた。

その指輪は突然、輝いたかと思うと次の瞬間、それから光が放たれた。

放たれた光はそれぞれ形を作り、やがてAランカーたちの相棒の魔物へと変貌を遂げた。


「何、あなたたち。もしかしてついてくる気?」


その様子を見ていたエカテリーナは一切のふざけもない様子でAランカーたちに問う。


「無論です。そのために私たちはここに来たのですから」


Aランカーの中の丁寧な口調をした若い男がそれに答える。


「……別にいいけど、いくら偵察と言っても下手すると死ぬかもしれないよ」


Sランカーであるエカテリーナが放った重い言葉。

さっきまでおちゃらけていた彼女の姿はどこにもなく、それがその言葉が冗談などではなく、掛け値なしの本気であることを物語っている。


「そんなことでいちいち躊躇っていたら魔物使いなんてやっていけませんよ」


Aランカーの一人の言葉に彼ら全員が頷く。

それに呼応するかのように彼らの相棒の魔物たちも覚悟を決めた様子である。


「……上等。なら行くよ」


エカテリーナ率いる偵察隊は魔王ルシファーが感知した桁違いの魔力の発生源である魔物を目指して、動き出した。










「未だに森の終わりが見えないとか……。どうなってんだ、この森は」


自分の知らないところでヤバイ奴等がこっちに近づいてきていることを露とも知らない俺は暢気に出口を目指して、森をさまよっていた。


常にスキルの警戒を発動していたので、魔物とはちあうことはなかったが、何時間も森の中を歩き回って、スキルも使いっぱなしでは疲労も早くたまるのか、さすがに俺もくたびれていた。


「……ちょっと休憩するか」


スキルを解除してどっこいせ、と近くの木の幹に腰を降ろす。


「ふう……」


一息つく。


「……………」


静寂が場を満たす。


――――おかしい。


今日の森って、こんなに静かだったか?

小鳥の囀ずりやら虫の鳴き声やらで、結構賑やかだった気がするんだが。


それに魔物の気配もまるでない。

数十分前までは警戒のスキルでちらほら見かけてたのに、今じゃ全然だ。

別にあの不思議泉が近くにあるってわけでもなさそーだが。


……何にも起こらないといいけど。


念のために再び警戒を発動させる。


「っ――――!!?」


息が詰まった。

まるで心臓を鷲掴みにされたような息苦しさが俺を襲った。


「かはっ!」


あまりの苦しさに思わずスキルを解除してしまった。

あのままだったら動こうにも動けなかった。


「何なんだよ……」


思わずぶるりと震えた。


ありえないモノが近づいてきている――――。


しかも気配なんて生易しいものじゃなかった。

まるで重圧(プレッシャー)だ。


たぶんこんなのがいたから森にいる生物は全員、どこかに引っ込んだんだろう。


ただあるだけで周りに重圧(プレッシャー)をかけるような存在。


冗談じゃない!

異世界に来て、早々に死にたくない!


三十六計逃げるにしかず!


俺は脱兎の如く駆け出した。

しかし――――、


「うええっ!?」


駆け出した先にいきなり頭に角が生えていて背に七色の翼も生やした、明らかに人間でない燕尾服を着た美青年と耳の長い、金髪の美人が現れた。

何故か美人の方は驚愕の表情を浮かべているが。


そしてスキルを使わずとも本能的に分かった。


――――こいつだ。


この青年があの重圧の主だ。


反射的に反対側に駆け出そうとしたが、さっき現れた美青年と女の子の仲間だろうか、後ろにもいつのまにか怪しい男がいた。

この男もさっきの美人と同じく驚愕の表情を浮かべている。

何を驚いているんだ?


その脇には明らかに魔物と分かる狂暴そうな犬? がいる。


気づけば周囲にも同じようなのがいて、どうやら囲まれてしまったらしい。


……何で俺、囲まれてんだ?


落ち着け、俺。

パニックになっては駄目だ。


そういえばこの人たちって明らかに魔物じゃないよな……。

むしろその脇にいるのが魔物だろう。

見た目的に。


よくわかんないけど、話が通じる相手かもしれない。

そういえばさっきの金髪の美人さん、耳長かったよな。


……あれか。

異世界の花形であるエルフなのか!?


思わず後ろを振り返る。


「●▲■◆! ◎▽!」


それと同時に金髪美人さんが奇声を発した。

さらに奇声に反応したのか美青年の目がカッと開かれる。


怖っ!!

何だよいきなり。


あっ!

そういえば翻訳能力つけてなかったっけ。

ミスったなー。

つけてなきゃ、話もできないじゃないか。


てか、やっぱりあの金髪美人さん耳長かったな。


エルフだな。

間違いない。



【名称】神崎直人

【Lv】1

【種族】人間

【職業】魔術師

【ユニークスキル】

人の知恵 掌の欲望 ???

【スキル】

洞察 翻訳能力 超魔力 火魔術Lv2



警戒とつけかえた。

特に深い意味はない。

今は話をすることが先決だからな。


「あははは! Lv1のくせに何てふざけた魔力にスキルなの!」


俺が金髪美人エルフさんに向き直ると、彼女は楽しくて仕方がないといった感じの笑みを浮かべていた。


「フフ、Lv1って分かった時は拍子抜けしたけど、さすがは伝説の人間と言ったところかなー。何でLv1なのか知らないけど、気に入った。むしろ育てがいがあるし。絶対、捕獲するんだから」


何か今、すんごい物騒な単語が聞こえた気がする。


「あの……」


「捕獲するのって久しぶりー。えっと、確か捕獲対象を弱らせなきゃならないんだよね」


その瞬間、俺は衝撃と共に吹き飛んだ。




捕獲フラグ、爆誕。


次の更新はいつになることやら……。

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