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第四話:異世界人はビビりすぎだと思う

今回、ユニークスキルや魔術の説明を入れようと思っていたのに話の流れ上、入れることができなかった………。


説明はもっと後になるかもしれない。

期待していた人、ごめんなさい!



ギルタの森に隣接して存在する町。


その町の名前は森の名前と同じくギルタと呼ばれている。

このギルタの町は大人しく、Lvの低い魔物たちが生息するギルタの森がすぐ隣にあるので、駆け出しの魔物使いがお世話になる町の一つである。


駆け出しの魔物使いがお世話になるということは当然、モンスターギルドも存在し、そのモンスターギルドのギルタ支部は今日も早朝から数多くの魔物使いで賑わっていた。


しかし――――――。










ギルタ支部、会議室。


その部屋でふわふわと浮かぶ映視眼。

ギョロリとした目から放たれている光は壁を照らし、照らされた場所に浮かびあがっているのはある映像。

その映像に映し出されているのは昨日、ギルドの職員が見たとされる〝人間〟である。

このギルタ支部の幹部たちは円卓を囲って、その映像について議論を交わしていた。


「やはりどう見ても人間です!! あの黒髪黒目にエルフと似ながらも短い耳! 伝承の通りじゃありませんか!」


長い耳を持ったエルフの若者が主張する。


「馬鹿を言うな! 人間は遥か昔の前時代に滅びたとされているんだぞ! 今の時代にいるわけがない!」


それに初老の狼獣人の男が反論する。


「なら、この映像に映っているこれを何と説明するつもりですか!? それに人間には彼らが造ったとされる道具、古代魔具(アーツ)があるじゃないですか!! あれの規格外さは知っているでしょう!? あの滅びの原因を克服する古代魔具(アーツ)があってもおかしくない!」


「ぐっ、しかし…!!」


「静まらんかっ!! この小童どもがっ!!」


熱くなりすぎた幹部たちをこの中で最年長であろう老人が一喝した。


「ギルドの幹部が揃いも揃って駆け出しの魔物使いのように浮き足だちよってからに………」


一瞬、静寂に満ちた後、一人の若い幹部が老人に詰め寄る。


「しかし、ギルドマスター! 人間なんですよ! あの伝説の、全ての魔物の祖、始まりの魔物と言い伝えられる!!」


「わかっておるわい、そんなことは。だからこそ落ち着いて冷静になれと言うておるんじゃ」


真っ白く長い髭をたくわえた老人、このギルタ支部のギルドマスターはため息をつきながら、髭をいじる。


人間――――。


それは我々、エルフや獣人、ドワーフに竜人などの総じて〝ヒト〟と呼ばれる種族が誕生する前の時代。

遥か昔の前時代と呼ばれる時代に繁栄していたとされる魔物だ。


各地に点在する遺跡に残されていた文献や映像記録の古代魔具(アーツ)によると彼らは、それはもう凄まじい強さを持った存在だったらしく、もしも今の時代にそれが一人でも現れたのなら、たった数日で世界は滅ぶだろうと学者たちに言わしめたほどである。無論、そんな彼らにかなう生物は存在しなかったらしい。


そんな彼らが何故滅んだのか。

それは十数年前に遺跡から発掘された古代魔具(アーツ)よって発覚した。

その古代魔具(アーツ)自体は何の変哲もない映像記録のものだったが、そこに記録されていた映像が決定的なものだった。


ところどころにノイズが走っていて、詳しくは分からなかったらしいが、映っていたのは別の魔物へと変貌していく人間たちの姿だったらしい。


この人間たちが変貌した、後に魔王(・・)と呼ばれる七体の最初の魔物たちを始まりとして、今の世界に存在している様々な魔物へと枝分かれのように変化していったのではないかというのが学者たちの総合的な見解である。

そして、これが人間が始まりの魔物と呼ばれる由縁でもある。


何故、彼らが突然、他の魔物へと変貌したのか。

それは未だ解明されていない。


「世界を滅ぼせるような力を持つ魔物なんですよ!? 暢気に話し合いをしてる場合じゃっ……!!」


「落ち着けと言うとるだろ、バカタレが。まだ人間と決まったわけではないのだぞ?」


「しかしっ……!!」


「それに仮に人間だったとして、儂らを滅ぼす気なら、とっくの昔に滅ぼしているはずじゃ。にもかかわらず儂らは生きておるということはまだ滅ぼすつもりはないということじゃないかの?」


「ならば尚更、今の内に……」


そこまで言った幹部の若者をギルドマスターはギロリと睨み付けた。


「今の内? 今の内にどうするというのだ? この支部にある僅かな戦力で人間と戦うつもりか? 世界を滅ぼせるような相手に? それこそ自殺行為以外の何物でもないぞ? そんなことをすれば儂らは今すぐに滅びることになるに違いないからのう」


「っ……!!」


正論を突きつけられて、口をつぐむ幹部の若者。


「それにさっきも言ったが、まだ人間と決まったわけではない。まずは冷静にあれが何なのかを見極めねばならん。でないと何の対策も立てられんからの」


「…………」


「そんなに心配することはない。保険と言ってはなんだが、儂が信頼する数人の魔物使いを呼んでおいた」


「ギルドマスターが信頼する魔物使い?」


「ああ。儂の孫娘のエカテリーナとAランクの魔物使いを数人な」


ギルドマスターの発言にその場にいた幹部全員が息を飲んだ。


「ギルドマスターの孫娘のエカテリーナって、まさかあの魔王(・・)持ちのSランクの?」


「それ以外に誰がおる?」


その言葉を聞いた瞬間、幹部たちの顔から焦りが消えて、余裕が現れ始めた。

当たり前である。

何せ唯一、人間に対抗できるであろう魔物である魔王を持つSランクの魔物使いなのだから。


ギルドでは魔物使いたちの強さを分かりやすく表すためにランクによる階級制度を用いている。

ランクは一番下のFから一番上のSまでの七階級まであり、その中でまさに最強と言っていいSランクの称号を持つ者は世界にたった五人しかいない。

そしてその五人全員が、全ての魔物の祖と言われる人間が変貌した最初の七体、魔王(・・)と呼ばれる魔物の内、現時点で存在が確認されている五体を、それぞれ一体ずつ保有しているのだ。

だが、そんなギルドの最高戦力である彼らにも難点がある。


「まさかSランカーが参戦してくれるとは……」


「あの超人たちの一人がね……」


そう。

その五人全員が揃いも揃って、奇人変人にして超人の曲者なのだ。


彼らは基本的に所在地が不明で、ギルドの緊急召集にもまず応じない。

というより連絡が届かない場所にいるのだ。

例えばそれは魔物の楽園と呼ばれる魔界だったり。

竜種の魔物たちが支配する遥か天空にある〝極天地〟だったり。

世界最古の遺跡である〝神〟の深奥だったり。


本来なら人が行けるような場所でないところに彼らはいることが多いのだ。


「お孫さんだとしても、よく呼べましたね、ギルドマスター」


「今回はたまたまこの近くまで来ていたようでの。運がよかったわい。昼過ぎぐらいに来ると言っておった」


とにもかくにも、ギルドにとって彼らが来てくれるということは百人力であった。


「……ふむ。ところであの後に帰ってきた方の職員の容態はどうなっておる?」


ギルドマスターは隣に立っていたこの支部の秘書の女性に声をかけた。


「ああ、はい。彼なら昨日に比べて随分と落ち着いてきましたよ。初めは錯乱していてどうにもならなかったんですが、今は会話ができるぐらいにまで回復しました」


映視眼を持つ職員は無事に帰ってきたのだが、彼が人間の監視を頼んだという、もう一人のウルフハンターを持つ職員は酷く錯乱しながら帰ってきたのだ。

とても話が聞ける状態ではなかったので、直ぐ様にギルドの医療施設の元に連れていったのだが……。


「原因は何じゃったんじゃ?」


「医師によれば強烈な魔力を浴びたのが原因ではないかとのことです。ただ浴びただけではここまで酷くなるはずはないので、浴びる前から精神的に不安定だったのかもしれないと……」


強烈な魔力。

精神的に不安定。

どれも初心者の森であるギルタの森には本来なら縁のない言葉である。


人間なのか―――…。


「ふむ。やはり森で何かがあったのは間違いないの。で、彼の話は聞けたのか?」


「いえ、それが」


「ん?」


「森で何があったか、聞こうとすると、ありえないぐらいに怯えて蹲ってしまうんですよ」


「怯える……?」


「森でいったい何が?」


会議室にいる全員が再び映像の中の人間を見る。


「やはり本当に人間が……」


「人間の仕業か?」


幹部たちが再びざわめきだす。


「しかし、そんな状態ですが、ただある言葉をうわ言のように繰り返していました」


「ある言葉?」


「はい。〝魔力泉〟という言葉を」


「魔力泉……」


――――刹那。


場にある全てが硬直した。

誰も動くことはおろか、息することすらしない。

が、それも数秒後には終わっていた。


「っ…はあっ…はあっ…!!」


「今のは……」


「まさかそんな……」


全員が信じたくなかった。

あまりのことに息をすることすら忘れてしまった。


魔力――――。


そう。

体感したことのないあまりにも圧倒的で強大な魔力だった。


それを感じた発生源であろう場所は、


「ギルタの森……」


人間―――。


古代魔具(アーツ)―――。


学者―――。


強烈な魔力を浴びて錯乱した職員―――。


魔力泉―――。


そして今の、想像絶する魔力の気配――――。


ギルドマスターの中でパチリパチリとパズルのピースが一つに繋がっていく。


「…………」


かつて人間たちが創造し、使っていたとされる古代魔具(アーツ)

現代でも様々な古代魔具(アーツ)が発見されては学者たちに解明されているが、一つだけ発見されているのにもかかわらず未だ解明されていない古代魔具(アーツ)がある。

それが魔力泉。

正確に言うなら魔力泉に埋まっている魔力珠である。

厳密に言うと、根拠はないが、古代魔具(アーツ)の一つではないかという説があるからだ。


何故、解明されていないのか。

答えは単純。

触れられないからである。


学者たちの説によると魔力泉はかつて人間たちの水飲み場か何かだったのではないかと推測されている。

しかし、その説はあまり有力ではない。

解明されていない理由でさっきも挙げたようにヒトにも魔物にも触れられないからだ。

魔力泉の水はあまりに強烈な魔力を含んでいて触れれば、瞬間、魔力中毒で即死するような魔力濃度なのだ。

特にその源である魔力珠はさらに異常で、たとえ何らかの道具を使って間接的に触れても、一瞬で道具を莫大な魔力で侵蝕し、その

侵蝕された道具の魔力で使用者が中毒死する結果になった。

また、あるスキルで触れずに取り出そうとしても、まるでスキルの効果を受けつけず、どうにもならない結果に終わった。

こんなモノでは人間だってただではすまないだろうというのが今までの総合的な意見だった。


だが、もし人間がそれに耐えうるのだとすれば?

そして飲んだ分だけ魔力を吸収できるのだとすれば?


恐らく、あの職員は見たのだろう。

あの人間が魔力泉で水を飲んでいるところを。

その時にその人間が吸収した尋常ではない魔力をモロに浴びたに違いない。

故に錯乱したのだ。

さらにそれからも人間は魔力泉の水を摂取し続けたのだろう。


その結果がさっきの異常な魔力に違いない。


「…………」


嫌な推測だとギルドマスターは思う。


まだ確たる証拠はないが一応、全てにおいて辻褄が合う。


もしもこれが真実なら笑い事ではない。

人間は今も魔力泉の水を飲んでいるのだとすれば、さっき以上に魔力が膨れ上がっていくだろう。


―――冗談ではない。


そんなことになれば、魔王を持ってきたとしても絶対に勝てなくなる。


そしてもはや十中八九、人間だろうが、この推測がはずれで仮に人間じゃなかったとしても、あんな意味不明な魔力を持った魔物と分かれば、放置しておくわけにはいかない。


「全員、聞けっ!!」


ギルドマスターが発した一言に幹部たちが一斉に姿勢を正す。


「これより一時的にギルタの森を完全封鎖する!! それと大至急、今、町にいるAランク以上の魔物使いたちをギルドに召集しろ!! ギルタの森の探索隊を編成する!! ギルド本部にも連絡しろ!! 増援を送ってもらえるように頼め! これらのことをSランカーのエカテリーナが此方に到着するまでに終わらせろ!! さあ、動け!!」


ギルドマスターが言い終わった瞬間、幹部たちは我先にと会議室から出ていった。


「…………」


残されたギルドマスターは未だ映視眼によって映し出されている映像にいる人間を見る。


「人間か……」


かつてこの世界の全てを支配したとされる伝説の魔物。


そして――――。


その圧倒的な力を誰もが手に入れることを夢見た魔物。


「厄介じゃのう……」


ギルドマスターは一人、これから先のことに思いを馳せて、呟いた。





得体の知れない人間にやばいほどに警戒する異世界人。


その人間は実はまだLv1なのに(笑)

それを知ったらどうなるんでしょうね。


ご意見、ご感想、お待ちしております。


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