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六章・戦乱

 長い廊下を、周りを兵達に囲まれながら、虹龍は歩いて行く。

(何処へ行く気かしら…)

 虹龍の脳裏を、そんな感情がよぎった。

 虹龍が白龍のことが好きなのがばれれば、即刻王の所へ連れて行きそうなものだが、どうやら違う様だ。

 黒龍は、虹龍とは別に連れてかれてしまった。多分、白龍の様に2度と会えなくされてしまうか、最悪、王に背いたとして牢に捕らえられるかだろう。

(心配している余裕は、私には無いけどね)

 虹龍は、まず自分の心配をするしかなかった。


「ちょっと…。どうしてここへ来るのよ…」

 目的地に着いた途端、虹龍は思わずそう呟いた。

 そこは、虹龍の兄の部屋だった。と言っても、昴零の部屋ではない。第二太子 東乱の部屋だ。 ギィと音をたてて、部屋の扉が開いた。

「どうぞ、お入り」

 中から、男の声がした。

 虹龍は、部屋の中に入って行く。

 部屋の窓辺に、1人の男がいた。つり目で、お世辞にも美人とは言えない顔だが、この男が虹龍のもう1人の兄なのだ。虹龍や昴零とは、全く似ていない。


 ここで少し、この東乱について述べておこう。彼は間違いなく虹龍と昴零の兄弟だ。が、父親が同じなだけで、母親が違う。

 元々、虹龍と昴零の母親である王后は体が弱く、彼女に子供が出来なかった時のために側室がいた。五天国では、側室は王后の許しが無ければ迎えられない。事情はまた、別の話のときに述べよう。その側室の子が、東乱というわけだ。結果的には、王后の方が早く昴零を産んでしまった。

 が、この側室が東乱を次期王にするために、昴零を暗殺しようとした。また、前章で書いた虹龍を殺そうとした女官も、この側室がしかけた。

 そんなわけで、側室は後宮を追放されたのだが、王の正統な子である東乱だけが、後宮に残っているわけである。


「どうして、東乱兄様の所へ連れてこられるのかしら?」

 虹龍は棘のある口調で言った。

「君が、妙なことしようとするからだよ」

 東乱は、薄笑いを浮かべながら言う。

「そうじゃなくて、どうしてお父様の所じゃなくて、ここか聞いてるの」

 虹龍の眉間に、しわがよった。

「私も、君に聞きたいことがある」

 東乱は、急に話を切り替えた。どうやら、虹龍の質問に答える気が無いらしい。

「どうやら、君の所に本来伝えるべきではない情報が入っているようだ。賄賂の事や、晶華と白龍の事。誰が君に教えたんだい?」

 答えは1つ、昴零だ。

「それを聞いて、どうするの?」

 虹龍が言った。

「それは君には教えられないな」

「なら、言わないわ」

 虹龍は東乱に背を向け、部屋を出ようとした。

「何処へ行って、どうする気だい?」

「もちろん、白龍の所よ」

「君1人で何が出来る。黒龍もいない。後宮で育った『公主様』に出来ることなんて、たかが知れてるよ」

 東乱の嫌味ったらしい声が、虹龍の頭に火を点けた。

「あんたに言われたくないわ!名前だけで実力の無い太子になんか!!全て昴零兄様に劣っていて、同じ父親をもっているなんて嘘みたいなあんたに!!!」

 クスッと、東乱の笑い声が聞こえた。

「私はあいつとは違うよ。欲しい物は、何をしてでも手に入れる」

 自信満々の東乱の声がしゃくにさわり、虹龍は何も言わず部屋を出て、自分の部屋に向かった。

 

 後宮の公主の部屋は広い。当然のことだが、虹龍には今日ほど、この部屋が広いと思ったことはなかった。

 部屋の中には真夜中だというのに、明かりひとつ無い。

 虹龍は東の空を見ながら、物思いに耽っていた。東の空は、ほんのり明るい。夜明けが近いのだろう。

 虹龍が考えているのは、昼間の東乱との会話のことだった。


―欲しい物は、何をしてでも手に入れる


 東乱がどうもがいても手に入らないもので、そして欲しがりそうな物は王位だ。そうすれば、全て説明がつく。


―賄賂の事や、晶華と白龍の事や。誰が君に教えたんだい?


 もし、あそこで虹龍が昴零がばらしたと言えば、それは昴零が王に背いた証拠になる。

 多分東乱は、そんな情報を探しているのだろう。昴零が居なければ、東乱に次期王の位がまわってくる。虹龍の夫が王になる可能性もあるから、鬼門国にいかせる。そうすれば、邪魔者は消えて、東乱に王位が落ちてくるだけではなく、現王の信頼も貰える。

(そうだったのか…)

 全てが分かった虹龍は、フッとあることに気が付いた。

 東乱の元に連れて行かれる原因となったのは、黒龍との会話を部屋の外にいた兵に聞かれてしまったからだ。しかし、何故部屋の外に兵がいたのだろう。後宮には、よっぽどの事がなければ入れない。何か、理由があったはずだ。


 東の空が本格的に明るくなってきた。太陽が地平線から顔を出す。

(朝か…)

 虹龍は、ぼんやりそう思った。結局、一睡もしていない。

 と、何処からか妙な音がしてきた。地響きのようなその音は、地震の時の様だが今は全く揺れていない。

(何?)

 そう思ったとき、太陽と同じ所に黒い影を見付けた。それは次第に近くなってくる。

 人だった。何万という武装し武器を持った人の群れ。中には馬に乗った者もいる。

 軍だった。しかも、五天国のではない。

 恐らく鬼門国の。

「どういうことよ…」

 虹龍は思わず呟いた。何故、鬼門国の軍がここに来る。


「東乱兄様!!」

 叫びながら、虹龍は東乱の部屋に飛び込んだ。窓辺の椅子に座っていた東乱が、目を見開いた。

「なんなの、あの鬼門国の軍は!」

 虹龍の質問に、東乱は眉根を寄せた。

「君のせいで、ここまで来てしまったんだよ。奴等は」

 奴等とは、鬼門国の軍の事だろう。

「やはり、待ってはくれなかった様だ。昨日、君を渡すつもりだったから」

「え…?」

 虹龍は、自分の耳を疑った。

「どういうこと?」

「君は昨日、鬼門国へ行くはずだったんだ。あの、鬼門国の軍に連れられてね。後宮から約束の場所までは、うちの軍が送って行くつもりだったけど」

「……」

 虹龍は、暫く声が出せなかった。

 つまり、昨日虹龍の部屋まで来た兵は、虹龍を鬼門国の軍の元まで送るために来たのだ。しかし、虹龍と黒龍の話を聞いてしまった。虹龍が来ないから、鬼門国の軍はここまで来た。

「もう、鬼門国の兵は、攻撃態勢に入っている」

 東乱が、窓の外を見ながら言った。

 スッと、虹龍の顔から血の気が退いた。


(私の、せいなの?)


 虹龍が、鬼門国へ行きたくないと言ったから、白龍のことが好きと言ったから。

 ドンッと音がした。鬼門国の軍が大砲を撃ったのだろう。後宮が戦場となるのだ。


  私のせいで?

  私の気持ちに関係なく

  私がいけないの?

  じゃぁ!


 虹龍は、床に座り込んだ。

「なんで皆のために、私一人が犠牲になれば良かったとか言うのよぉ!!!!」

 涙は出なかった。悲しみより、怒りが全てを支配した。

 こんにちは、星蘭です。

 前回まで、実は私の考えた初期設定とずれてて、

「やべぇー。話にまとまりつかなくなったら、どうしよう…」

とか思ってました。

 とりあえず、今回で初期設定、というか、本当に私が書きたかった話が書けて良かったです。

 ただ、東乱は急に出てきたキャラクターです。

 なんとなく出しただけっだたりするけど、重要キャラになりかけている。

 それではまた、次回の後書きで会いましょう。

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