1/11
序章
その日、彼女は夢を見た。
何処までも続く緑。美しい花畑。
そこに3人の人影。
一人は5.6歳ほどの少女。着ている物は絹だろうか。美しい刺繍が施されていて、いかにも高そうだ。何処か金持ちの娘だろうか。嬉しそうに走り回り、花の上を転げまわっている。
それとともに、もう一人の少年も遊んでいる。少女と同じくらいの歳で、黒い髪と瞳がが印象的だ。着ている物は、少女ほど高そうではない。よく見る、男物の中華服の様で、少女より質素だ。この服も黒い。
もう一人は少年で、二人より2.3歳年上で黒髪の少年に似ている。兄弟だろう。しかし彼は髪が白く瞳は銀だ。きている服も、少年のそれの白いもの。遊びまわる二人を見て、優しそうに笑っている。
「虹龍は可愛いね」
黒髪の少年は、少女に言った。
「そう?黒龍もかっこいいよ」
少女がそう言うと、黒髪の少年は頬を赤らめた。
「白龍もかっこいいよ」
少女は白髪の少年に言った。
「ありがとう」
白髪の少年は微笑んで、そう言った。
美しい思い出。
大好きな時。
もう戻れない過去。