Maybe Love
「芽依、勝負っ」
昂也が挑戦的な目つきで、私に線香花火を突き付けてきた。
私はそれを受け取って、にっと笑う。
「負けないよっ」
幼馴染。
ずっと昔から一緒。
隣同士が1番自然で。
近すぎて近づけない距離にいる。
大切な、ただの幼馴染…そのはずだった。
いつだろう、昂也が異性に変わっていったのは…。
一歩を踏み出す勇気がなかったの。
だから、いつだって平行線を辿っていて。
そう、その秘めた恋心は、君に対しての初めての秘密。
「あはっ俺の勝ちっ」
満面の笑顔で君が言う。
私も満面の笑顔と、ちょっとの悔しさを含んだ表情で“もう1回っ”と要求した。
「だーめ、俺が気分よく終わるんだから」
「けちー」
ふっと微笑んだ昂也の顔は、昔とは違った。
無邪気なだけじゃない、その笑顔。
その笑顔は、私の鼓動を速くするには十分過ぎるほどの効果があった。
「また来年、ね」
昂也は立ち上がり、後ろにあったガードレールに背中を預ける。
いつの間にか伸びた身長。
…ううん。
“いつの間にか”
そんな訳はなかった。
昂也の成長は、私が1番知っている。
気付いていた。
だんだんと、少しずつ、でも急速に伸びた身長も。
顔つきが、少年から大人に近づいていっている事も。
昔よりも、全然大人びた微笑を時々見せる事も。
だって毎日一緒にいたんだから。
気付かない訳がなかったの。
だから、気付かないフリをした。
だんだん、手の届かない所に行ってしまいそうに思えて。
気付きたくなかった。
真上にあった街灯は、ちかちかと点滅を繰り返す。
そんな街灯を見上げ、私も昂也に倣って立ち上がった。
そして、目の前にいる幼馴染に声をかける。
「…ね、昂也」
私は隣でガードレールに寄りかかる昂也を見上げた。
「ん?」
私に向けてくれた瞳は、いつも通り変わらない。
交わらせた視線、それが妙に恥ずかしくなって、少し逸らす。
昂也の瞳から、首元まで視線を下げた。
「…好き、かもしれない」
夏の夜風が頬を撫でていく。
それは一瞬だったはずだけど、昂也の言葉が降ってくるまでは永遠の時間。
長すぎる…。
「何、かもしれないって」
やっと返ってきた言葉は、くすっという笑いを含んだ声だった。
熱くなった顔を、夏の生温い空気が助長して、更に熱くさせる。
「俺、好きだよ、芽依の事」
指先に、触れた。
温かい、昂也の指先。
「ずっと昔から」
触れた指先に熱がこもる。
顔は未だに上げられない。
「…知ってる」
なんて強がってみせたけれど、そんな余裕が一体何処にあったのか。
余裕なんてない事を、上げられない顔が物語っていた。
「嘘吐け。初めて言ったぞ」
「昔、毎日のように言ってたよ?」
「え、嘘だろ!?」
「ほんとだって!」
思わず顔を上げた。
いつも通りの会話に、熱は少し落ち着いた。
だけどその瞬間。
見計らったかのように、街灯は電気が切れて点灯しなくなった。
それと同時に、ふわっとした感触が唇に走る。
やっと、すぐ目の前に昂也の顔がある事に気が付いた。
体が再び、熱を持つ。
「―――あの日の“好き”と今の“好き”が違う事くらい、気付いてんだろ?」
昂也、ねえ。
「…好きだよ」
私の“好き”だって、あの頃とは違うんだからね?
End…
幼馴染ならではの感情、表せていましたでしょーか?笑
久々の幼馴染ストーリーでしたw
…何の障害もなくくっついたな、この2人…^^;
それでは。
ここまで読んで下さった皆様に、最大の愛と感謝を込めて。
With love...
ありがとうございました!