19-3
「ルークさん、今の話は本当ですか?」
「う、うん。ごめん、セラちゃん。いつか改めて話そうと思ってたんだけど……。まさかこの場に皇女様が来ていると思わず……」
ルークさんは申し訳なさそうに言う。
私もエリオット様が現れるまで正体を内緒にしていたわけなので構わないけれど、突然の衝撃情報に驚いてしまった。
「言い訳になるけど正体を伏せるのに慣れちゃっててさ……。俺は皇女様の従弟といっても、臣下に下った皇弟の息子だから、公に姿を見せたことはないんだ。だから、魔術師団に入ってからも副団長として自由にやれていた。このまま魔術師団でやっていくためには、出来る限り正体を伏せておく方がやりやすいと思って。でも、セラちゃんには話しておくべきだったね……」
「あ、ルークさん、副団長だったんですね」
そこも初耳なので驚いた。
確かに魔術師団員の方達はルークさんの指示を受けて動いていたけれど、割と気安い態度で接しているのでまさか副団長だとは思わなかった。
「お気になさらないでください。正体を隠していたのは私も同じですから」
「セラちゃん……」
「それに、どのような立場であろうとルークさんはルークさんですもの! 私にとって、いつも笑顔で私を明るく励ましてくれていたルークさんこそがルークさんです」
「セラちゃん……!」
ルークさんは感動した顔になる。
「セラフィーナ嬢。ラピシェル帝国にはまだ瘴気が蔓延している。今後もルークに協力してもらえるだろうか」
「はい、もちろんです!」
皇女様にそう言われ、私は勢いよく答えた。もちろん最初からそのつもりだ。そのために私は帝国に戻ってきたのだから。
「よろしく頼むよ。それから悪いんだが、ルークのこともよく見ておいてやってくれるか? いつもへらへらしているからわかりにくいが、これで意外と繊細なところがあるんだ」
「ちょっと皇女様……」
「もちろんです! 私でお役に立てるなら!」
私は迷わず答える。
ルークさんにはたくさんお世話になったので、私もこれからはお返ししていきたい。
「ありがとう。あなたのような人が帝国に来てくれて嬉しいよ」
皇女様はにっこり笑ってそう言った。
凛々しい顔立ちの皇女様は、笑うと驚くほどルークさんに似ていた。
それから皇女様は従者に連れられ、宿屋を後にした。
皇女様が去っていった後、ルークさんはこちらを向く。
「ようやく帰ってくれた……。セラちゃん、ごめんね。突然で驚いたでしょ」
「いえ、皇女様にお会いできて光栄でした。それに、ルークさんのこともいろいろと知れてよかったです」
「はは……。隠し事はやっぱりよくないね……」
ルークさんは恥ずかしそうに言う。
それからルークさんは気を取り直すように咳払いすると、こちらに向き直った。
「改めてセラちゃん、帝国に来てくれたこと感謝するよ。来てくれたからには、絶対にセラちゃんが幸せに生きられるようする」
「まぁ、ありがとうございます。ルークさんにそう言っていただけると頼もしいです」
「絶対にこの国に来てよかったって思わせるから。いつかエリオット様といたとき以上に幸せだって思わせるから、楽しみにしてて」
ルークさんは明るい笑顔でそう言った。
私は彼に向かって笑みを返す。サフェリア王国でエリオット様と別れてから、ずっとどこか強張っていた心が緩んでいくような気がした。
思えば、最初に会った時からそうだった。ルークさんはその明るい笑顔で、いつも私の心を照らしてくれた。
私の耳元で、シリウスが言う。
『セラ、これから新しい人生の始まりだね』
「そうね。楽しみだわ」
『せっかくだから帝国中の精霊を味方にして成り上ってやろうよ。世界一の精霊師って言われるくらいに! 皇族の協力もあることだし!』
「ふふ、そういうのもおもしろそうね」
私はやけに張りきっているシリウスを見て笑ってしまった。
あの日、王宮を抜け出してから、随分と色々なことが変わった。
ずっと私には何の力もないと思っていたけれど、私にも人々を助けたり、笑顔にしたりすることができるのだ。ラピシェル帝国での日々は、自分の狭い世界が広がっていくような、未知の体験の連続だった。
私はこの国に来て、随分と色んな感情を知れた気がする。
「セラちゃん、改めてよろしくね!」
「はい、よろしくお願いします!」
私はルークさんに向かって笑顔で言った。
寂しさは未だに胸に残っているけれど、もう振り返らない。私はこの国で新しい未来に向かって進むのだと、そっと胸に決意を抱いた。
終わり
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