19-1
自分の部屋に戻って支度を終えると、私は鞄を持ってルークさんの元へ向かった。
「あ、セラちゃん! 支度は終わった?」
「はい、終わりました」
私は鞄を見せながら答える。
「じゃあ、行こうか! 王宮の人たちへのお別れも済んだ?」
「はい。ちゃんとお別れできました」
私は少し切ない気持ちになりながら答える。
ルークさんは私に向かって手を差し出した。
「それじゃあ行こう。セラちゃんが戻ってきたらみんな喜ぶよ。魔術師団員も、司教様も子供たちもみんな」
「私も早く皆さんにお会いしたいです」
私は微笑んで、ルークさんの手を取った。
それから、私とルークさんは王宮の門まで向かった。そこにはすでに立派な馬車が用意されていて、使用人たちがかしこまってその前に並んでいた。
「馬車まで用意してくれるなんて、親切だよね」
「ええ、本当に。そいうえば、ルークさん。ルークさんがサフェリア王国に来たときはどのような方法でいらしたんですか?」
「それはもう徒歩で歩き回って、どうにか王宮にたどり着いた感じかな」
「そ、それは大変な苦労を……! 改めて来ていただいてありがとうございます」
私は心からお礼を言う。
ルークさんが追ってきてくれなければ、私はアメリア様の罠にはまって今頃投獄されていたかもしれない。
「気にしないで。セラちゃんのピンチにはいつだって駆けつけるよ」
ルークさんは太陽みたいに笑って言う。
思わず頬が緩んでしまった。ルークさんといると、いつも心が軽くなる。
それから私たちは数日かけて国境まで向かい、関所を抜けてラピシェル帝国まで戻ってきた。
ティエルの街まで向かうと、帝国滞在中に泊まっていたあの宿屋の前に、大勢の人が集まっていた。
魔術師団の制服を着た人たちに、街の住人らしき人たち。それから、司教様と子供たちの姿まで見える。
「あ、ルーク様! 本当にセラさんを連れて帰って来れたんですね!」
魔術師団員の一人がこちらに気づいたようで、明るい顔で駆けてきた。
「ここで待っていたのか?」
「ええ、ルーク様から通信機でセラさんを連れて帰れると連絡をもらってから、みんな気が気ではない思いで待っていたんですよ!」
彼はそう言うと私に向かって笑顔で言った。
「おかえりなさい、セラさん!」
彼の言葉に続いて、ほかの人たちも次々に言葉をかけてくれる。
「セラさん、おかえりなさい! サフェリア王国で嫌な目に遭いませんでした!?」
「みんなセラさんが戻ってくるのを待っていたんですよ!」
「セラさんが王国でひどい目にあっていないか心配で仕方なかったんですから……!」
彼らは本気で私を心配してくれていた様子だ。私は胸がいっぱいになってしまった。
「ありがとうございます。サフェリア王国でひどい目に遭ったりはしておりませんのでご心配なさらないでください。ちょっとピンチにはなりましたが、ルークさんのおかげで無事に解決しましたし」
「本当ですか? それならよかったです。セラさんが悲しんでいると俺たちもつらいですから。って、あ、セラフィーナ様とお呼びするべきですよね。申し訳ありません」
「いえ、どうか今まで通りセラと呼んでください!」
私は慌てて答える。帝国の人達に様付けされるのはなんだか落ち着かないのだ。
すると、人混みの影から不機嫌そうな顔をした司教様が姿を現した。
彼の周りには教会の子供たちがいて、みんなキラキラした目でこちらを見ている。
「セラフィーナ、戻ったそうだな」
「はい、司教様。この前はご心配おかけしました。せっかく呼んでいただいた儀式にも参加できないまま終わってしまって」
「別に気にすることはない。不可抗力だったようだしな」
司教様は厳めしい顔のままで言う。相変わらず不愛想な司教様だけれど、おそらく私を心配してここまで来てくれたのだと思ったら、嬉しくなってしまった。
「セラちゃん、戻ってこれてよかったね!」
「また教会に来てくれるでしょ?」
子供たちが私の服を引っぱりながら言った。私は彼らに向かって、もちろんですとうなずいた。




