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「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています  作者: 水谷繭
18.エリオット

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18-1

 部屋の扉を叩くと、中から驚いた顔をしたエリオット様が顔を出した。


「セラ、一体どうしたんだ?」


「エリオット様……」


「顔が真っ青だぞ。何があったか知らないがとりあえず中に入れ」


 エリオット様は怪訝な顔をしつつも部屋の中に入れてくれる。私は重々しい気分で部屋へ足を踏み入れた。



「エリオット様、申し訳ありませんでした」


 部屋に入るなり、私は深く頭を下げた。


 エリオット様の困惑した声が降ってくる。


「何を言ってるんだ? なぜお前が俺に謝るんだ」


「……お父様が王妃様に対してしたことを聞きました」


 そう言うと、エリオット様の表情が凍りついた。


「一体どこからそんな話を」


「お父様本人からです。私がラピシェル帝国へ行くことを聞いたらしく、先ほど王宮にやって来ました。エリオット様のお母様が追い詰められたのは、父のせいだったのですね……」


 私はいたたまれない思いで口にする。


 エリオット様は顔を歪ませた。


「……シャノン公爵のせいだと断言することはできない。元々、母上は体が丈夫な方ではなかったんだ。それに父上が母上を大事にしてさえいれば、シャノン公爵が何をしてこようが影響はなかった」


「それでも、お父様のしたことは許されないことです。……本当に申し訳ありませんでした」


「やめろ。お前には関係ないことだ」


 エリオット様ははっきりそう言った。私はぶんぶん首を横に振る。


「関係あります! 認められていなかったとはいえ、私はシャノン家の娘なのですから。それなのに、私は過去のことを知ろうとしませんでした。エリオット様がシャノン家が嫌いだと言った言葉の意味すらちゃんと考えたことがなかったんです」


 後悔に駆られながら言う。


 何がエリオット様は今も私を見てくれないだ。エリオット様のことをちゃんと見ていなかったのは、私も同じではないか。


 しかし、エリオット様は首を横に振った。



「お前が気にすることではない。俺が勝手にこだわっていただけだ」


 エリオット様は迷いのない声でそう言う。


 私の胸に余計に罪悪感が募る。


「エリオット様。王妃様は亡くなるしばらく前から、本宮殿を追いやられていたのだと聞きました。本宮殿を出た王妃様が住んでいらしたのは、もしかして私が住まわせてもらっていたあの別邸なのではないですか?」


 尋ねると、エリオット様は言葉に詰まった。


 それから彼は苦々しい顔でうなずく。


「ああ、そうだ。悪かった。あの寂れた別邸にシャノン家の娘を住まわせたら、シャノン公爵への復讐になると馬鹿なことを考えていた。お前を本宮殿に近づけなかったのも、母上が追い出された場所にシャノン家の人間を入れたくなかったからだ」


「そうだったのですね」


 色々なことが腑に落ちていく。


 私はエリオット様にとって、いわば母君の(かたき)の娘なのだ。憎まれるのも無理はない。



「悪かったよ。子供じみたことをしたと今は反省している」


「いいえ、エリオット様がそうされるのも無理はありませんわ」


「お前にそう言われたら余計に立つ瀬がなくなるだろ」


 エリオット様は悲しげな声でそう言った。


 エリオット様の態度は弱々しかった。いつも堂々としているエリオット様のそんな姿に戸惑ってしまう。


 先ほどまでエリオット様とは離れるべきだと思っていた気持ちが揺らぎだす。


 私は最後にお父様のことを謝って、ちゃんとお別れをしてから出ていきたかっただけなのに。



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