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「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています  作者: 水谷繭
17.過去のこと

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17-4

 精霊たちはお父様を取り囲むように近づいていった。あっという間に無数の精霊たちによってお父様の体が埋め尽くされていく。


 お父様は驚いたように精霊を見ながら、苦しそうに天井へ手を伸ばしていた。


「なんなのかしら、これ……」


『きっと精霊が怒ってるんだよ! セラを傷つけるから!』


 シリウスが嬉しそうな声で言った。


 私は異様な光景をただ呆然と見ていた。


 精霊たちはお父様に光る糸のようなものをぐるぐる巻きつけていく。お父様は苦しそうにもがいているけれど、精霊の数が多すぎてちっとも抵抗が意味を成していなかった。


 そのうち、だんだんとお父様の叫び声が小さくなっていき、やがて止んだ。


 目の前には糸でぐるぐる巻きにされたお父様が倒れている。


 精霊たちはその様子をくすくす笑いながら眺めていた。


「ど……どうしましょう……」


 私はぐるぐる巻きにされたお父様を前に困惑する。部屋にいた侍女は、あまりの事態に固まってしまっていた。


 すると、シリウスが楽しげな声で言う。


『セラ、こいつ死んだかな? いい気味だね! セラを散々ひどい目に遭わせてきた奴が、精霊に何もできずに倒れるなんて!』


「死んではいないはずだけど、このままにしておくのは危険だわ」


 糸は体だけでなく、顔まで覆ってしまっていた。これでは息が出来ないはずだ。


 私は急いで顔の糸を外す。お父様は息はあるものの意識を失っているようで、糸を外しても動かなかった。


 私が糸を外している最中、精霊たちは私の周りをぐるぐる回りながら文句を言っていた。


「……とりあえず、これで息が吸えなくなることはないわよね」


『こんな奴、放っておけばいいのに』


「そういうわけにはいかないわ。……あの、侍女さん」


 私が振り返ると、侍女は怯えた目でこちらを見る。動揺している彼女には申し訳ないけれど、後始末を頼むことにした。


「お父様を医務室まで運んでいただけますか。私、これから行くところがありまして……」


「しょ……、承知しました」


 侍女は操り人形のようにこくこくうなずく。


 私は部屋にいる精霊たちに向かって言った。


「精霊さん、助けていただきありがとうございました。ちょっとやり過ぎのような気もしますけれど……。おかげで死なずに済みました」


 お礼を言うと、精霊たちは嬉しそうに部屋をくるくる飛び回る。


 しばらく楽しそうな顔で私の周りをぐるぐる回っていた精霊たちは、やがて満足したのかふっと消えてしまった。


 後には嵐で荒れてしまった部屋と、ぐるぐる巻きのお父様、狼狽した侍女という異常な状況が残される。


 このまま出ていくのは憚れるけれど、すぐにでも行きたいところがあったので、気持ちを切り替えることにした。



「……シリウス、行きましょうか」


『どこに行くの?』


「エリオット様のところへよ」


『セラ、またエリオットの元へ戻る気?』


「……いいえ。違うわ。でも、もう一度エリオット様と話したいの」


 私は、きっとエリオット様に近づかない方がいい存在なのだろう。私が生まれる前からそれは決まっていたのだ。


 でも、最後にちゃんと話したかった。


 私はシリウスの頭を軽く撫でた後、エリオット様の部屋に向かって駆けだした。


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