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「このことはきちんと公にする。そして今までのセラの功績を国民にも知らせて、お前の名誉が回復するよう努める」
「そこまでしていただかなくても。私はただ、この国がよくなって精霊たちが元気になってくれれば構いませんから」
「いや、絶対に国民にも真実を知らせよう」
エリオット様はきっぱりそう言った。
それからエリオット様は、少し後ろから黙ってこちらを見守っていたルークさんに視線を向けた。
「ルーク・アーレント」
「はい。なんでしょう」
「アメリアが能力を偽っていたことに気づいてくれたこと、礼を言う。それから、ラピシェル帝国での数々の非礼を許してほしい」
エリオット様は、真面目な顔でそう言った。
ルークさんはちょっと戸惑った顔をしながらも言葉を返す。
「いや、俺も王子様の婚約者を連れて逃げるとかしちゃいましたし……」
「今思えば、俺はセラフィーナと引き離されても仕方ないことをしていたんだな」
エリオット様は目を伏せて、悲しげな声で言った。
私が口を開きかけると、エリオット様はまっすぐに私の目を見て言った。
「セラフィーナ。ラピシェル帝国に戻りたいと言っていたな」
「は、はい……」
確かに以前そう言った。私はラピシェル帝国での自由な暮らしが楽しくて、力を必要としてもらえる環境が好きだった。
出来ることならずっとあの国で力を使い続けたいと思うくらいに。
「お前が行きたいと言うなら帝国に行って構わない。不都合なく帝国へ行けるよう手配しよう」
「エリオット様」
「今までお前のことを縛り付けてきて悪かった。婚約は解消しよう。これからは王子の婚約者という立場を離れて、自由に生きるといい」
エリオット様は少し寂しげな顔で笑ってそう言った。
私は言葉に詰まってしまう。
「エリオット様、私は……」
「ルーク・アーレント。セラを頼んだ。王家で帝国まで馬車を手配してやるから、セラを連れていってやってくれ。準備が出来るまで王宮にお前が滞在できる部屋を用意しよう。……俺が言うのもなんだがセラはお人好しで騙されやすいから、気をつけて見てやってくれ」
「エリオット様。それはありがたいんだけど、本当にいいの?」
「ああ。セラはここにいるよりもラピシェル帝国へ行った方が幸せだろうからな」
エリオット様は迷いのない声でそう言った。それから私の方に視線を向ける。
「セラ、今まで悪かった。シャノン家の娘であるだけでお前は公爵とは別の人間なのに」
「エリオット様……」
エリオット様は弱々しい声で言う。
それから彼は使用人を呼んで、ルークさんのために客人用の部屋を用意するよう命じてくれた。
部屋に使用人がやってきて、私たちを部屋の外へ促す。
ルークさんは、淡々と使用人に指示を出すエリオット様を見て困惑顔をしていた。
しばらく迷うように腕組みした後で、ルークさんは私に手を差し伸べる。
「……セラちゃん、行こっか。エリオット様も許可してくれたことだし」
「……はい」
私はかすれた声で答えた。
ラピシェル帝国へ戻れることは嬉しい。ルークさんや、魔術師団の人たち、教会の人たちとまたいられることも。
私は躊躇いながら後ろを振り返る。
虚ろな目でこちらを見送るエリオット様を見ながら、私は複雑な思いに駆られていた。




