16-1
ルークさんと共にアメリア様をエリオット様の元まで連れていくと、エリオット様は心底驚いた顔をしていた。
サフェリア王国にいるはずのないルークさんがここにいるのだから無理もない。
エリオット様ははじめ不審そうな顔をしていたものの、事情を説明すると、王宮にいる者達には気づかれないように衛兵を呼んでくれた。
そして、アメリア様を衛兵に引き渡したのち、彼女が力を送った地について調査すると約束してくれた。
そして現在、私とルークさんとエリオット様は、ソファとテーブルだけがある狭い部屋で向かい合っている。
「それで、一体どうしてお前がここにいるんだ」
「いや、セラちゃんが心配で。忍び込んじゃいました」
「忍び込んだって……」
エリオット様は呆れ顔をする。そんなエリオット様に構わず、ルークさんは説明した。
「それより、エリオット様にアメリア様の力のことでお伝えしたいことがあるんです。彼女の力はセラちゃんの功績を乗っ取っていた可能性が高い」
「……どういうことだ?」
「今までアメリア様は、元々はセラちゃんが力を送っていた場所に、自分が力を送ったほうが早く成果が出るからと言って向かっていたんですよね? 彼女の言葉通り、セラちゃんが長年力を送っていた場所でアメリア様が力を送ると、あっという間に森や川が出来たと」
「ああ、そうだが」
「精霊は本来、そういった物理的な加護を短期間で与えられないはずなんです。無理に短期間で大きな変化を作りだそうとすれば歪みが出て壊れてしまう」
「どういうことだ? 実際にアメリアは荒れ地に森を作りだしていたぞ?」
「正確には、後々どうなるかを考えなければそういうこともできます。ただ、精霊に大きな負担をかけることにはなりますが。アメリア様が今までそんな大きな変化を作り出していたのなら多分……」
ルークさんの言葉にエリオット様の表情が強張った。
「……その話は本当なのか?」
「こんな嘘は吐きませんよ。エリオット様、この王宮に精霊を隠せるような場所はありますか? 精霊のオーラを押し隠してしまうような……」
「王宮内で精霊を隠せるような場所となると、神殿前の森くらいだな」
エリオット様は硬い表情で答えた。
精霊は常に辺りを照らすようなオーラを纏っているので、たくさんの精霊が集まっていると、精霊を認識できる者ならば気配でわかってしまう。
しかし、瘴気の多い場所では、精霊のオーラと瘴気が混ざり合うため、気配がわからなくなるのだ。
それは、精霊が生きていても生きていなくても同じだ。
「……今すぐ確認に行こう」
エリオット様は、硬い表情のままそう言う。
私とルークさんは、彼の言葉にうなずいた。
エリオット様に案内され、神殿前の森まで向かう。やはりそこには禍々しい気配が漂っていた。
森を歩いて、精霊の気配をわずかにでも感じる場所がないか探す。
すると、木々の後ろにうっすらと精霊の気配を感じる場所を見つけ、私たちはそこへ近づいた。
木の後ろを覗き込んだエリオット様とルークさんが同時に声を上げる。
「これは……!」
「ひどいな、なんてことを……」
二人は地面を見つめながら絶句していた。
私も魔力を下げて、シリウス以外の精霊が見えるようにする。
飛び込んできた光景を見て息を呑んだ。
そこにはたくさんの精霊たちが、真っ白な顔をして折り重なっていたのだ。精霊たちはぴくりとも動かない。




