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「王宮の庭でメイドたちが、精霊師が森の奥の神殿に集まっているって話しているのが聞こえたから、一か八かで来てみたんだ。合っててよかったよ。それにしてもすごい瘴気だね。一体何があったの?」
「ええと、実は……」
私はルークさんに掻い摘んで今までのことを説明した。
この神殿には、数百年前に精霊が当時のサフェリア国王に贈った石が祀られていること。その石は王国の精霊に力を与え、瘴気を封じ込めていてくれていたこと。しかしその石を、今私が力を送ったことで壊してしまったこと……。
ルークさんは私の話を真剣に聞いてくれた。
「なるほど、精霊から贈られた大切な石が壊れてしまったと。あれがその石なんだね?」
「はい。そうなんです……」
「あれは……多分星の精霊の石かな。光で周りを浄化できる石」
ルークさんは精霊の石を横目に見ながら言う。私は驚いてルークさんを見た。
「見ただけでそんなことがわかるんですか?」
「うん。予測だけど。前に外国の精霊師の元を回っていた時に、似たような石を見せてもらったことがある」
「そんなことをなさっていたんですか」
「うん。ラピシェル帝国には精霊師がいないから、どうにか精霊師について知りたくて国の外を回ってた」
ルークさんはあっさりと言う。
それからこちらを見て笑った。
「大丈夫だよ。セラちゃん。数年前に精霊の石について研究していた精霊師のおじいさんに会いに行ったことがあるんだ。すごく博識な人で、精霊の石の効果や特性、壊れたときの修復方法まで熟知してた。あの人のところに行ったら、数百年前の石だってきっと直せるよ!」
「ほ、本当ですか……?」
「うん。心配ないない。そんな不安そうな顔をしなくても大丈夫だよ」
ルークさんは励ますようにそう言ってくれた。
足元から力が抜けそうになる。
「とりあえず、今は神殿に立ち込めた瘴気をなんとかしよう。瘴気さえ消せればどうにでもなるよ!」
ルークさんは私の背中を叩いて元気に言った。
そうだ。今は瘴気を何とかしなければならないのだった。
私は部屋に立ち込める黒い霧を見つめる。
「落ち着いて。セラちゃんなら大丈夫。いつもラピシェル帝国でやってくれていたみたいにしてみて。きっと精霊はセラちゃんの頼みを聞いてくれるよ」
「……はい」
ルークさんに言われた通り、心を落ち着かせる。
先ほどまであれほど不安だったのに、ルークさんの言葉を聞いていると、本当にどうにかできそうな気がしてきた。
いつもやっていたように、集中して呪文を唱える。
すると、先ほどまでは全く呼ぶことができなかった精霊が、少しずつ集まり始めた。
精霊はキラキラした光を振りまきながら、部屋中をくるくる回りだす。
精霊たちのおかげか、神殿を覆い尽くしていた瘴気がだんだんと薄まりだした。瘴気はどんどん薄くなっていって、やがて消えていく。
私が呪文を唱え終わる頃には、神殿の空気はすっかり澄み渡っていた。
「セラちゃん! やっぱり君はすごいよ! できたじゃないか!」
「ルークさん……」
明るい声でそう言われ、胸に安堵が広がる。
安心したのと同時に足から力が抜けて、私は床に座り込んでしまった。
「わ、大丈夫? セラちゃん」
「はい、大丈夫です……っ」
私は安心して涙声になりながらも、言葉を返した。
へたり込む私の周りを、精霊たちがくるくる回る。私はかすれた声で精霊たちにお礼を言った。




