15-3
『セラ……! 石が……!!』
「ど、どうして……!」
精霊の石には無数のひびが入り、壊れてしまっている。
石の割れた箇所からは、どす黒い瘴気が溢れだしていた。きっと、この石が長年吸収してきた瘴気だ。
精霊師たちから悲鳴が上がる。悲壮に満ちた声があちこちから聞こえてきた。
私は壊れた精霊の石を前に立ち尽くす。
どうして。石が弱っているのを考慮して、慎重に力を送っていたのに。どうして……。
「セラフィーナ様、どういうことですか!? 一体何をしたんです!?」
その時、アメリア様が私の肩を掴んで怒鳴った。
「わ、私にも何がなんだか……」
「ただでさえ精霊の数が減っているときに、精霊の石まで壊すなんて!! 一体どうしてくれるんですか!?」
アメリア様は顔を歪めて怒鳴っている。
そうしている間にも、精霊の石からは瘴気が溢れだし、部屋を黒い空気で埋め尽くしていった。
先ほど森で感じたのと比べ物にならないくらいの息苦しさが襲ってくる。
中にいる精霊師たちは混乱しきっていた。
「ご、ごめんなさい……! すぐに瘴気を鎮めます……!」
瘴気だけでも浄化しようと、私はすぐさま精霊に祈る。
しかし、溢れ出た瘴気が多過ぎるのか、動揺でうまく力を使えないのか、一向に精霊に祈りが届かなかった。
必死で頭を回転させるけれど、何も打開策は出てこない。
すると、アメリア様が吐き捨てるように言った。
「精霊の加護を受けているはずの精霊師が、精霊の石を壊すなんて……。あり得ませんわ。セラフィーナ様、あなた、本当は精霊の加護による力ではなく、悪魔の力を借りているのではないですか?」
アメリア様がそう言った途端、精霊師たちのざわめきが一層大きくなった。彼らはこちらを不審そうに見ながら話し出す。
「悪魔の力?」
「まさか、精霊師として大した力のないセラフィーナ様が殿下の婚約者になれたのは、悪魔に力を借りて操っていたからなのではないか……?」
「現に今セラフィーナ様が力を使ったことで精霊の石が壊れたんだ。その可能性も十分あり得る」
精霊師たちは私に冷たい視線を向ける。
すると、私の肩に乗ったシリウスがシャーシャー唸りながら言った。
『セラ!! 言い返してやんなよ!! なんなんだよこいつら、勝手なことばかり言って腹立たしい!!』
「シリウス、どうしよう。私はどうすれば……」
『セラは悪くないんだから堂々としてなよ! こんな奴らの言葉に耳を貸すことない!』
シリウスが大声でそう言ってくれる。
けれど、そう励ましてもらっても動揺は収まらなかった。
私が石を壊したせいで、サフェリア王国がさらに窮状に陥ってしまったら……。
するとその時、突然閉まっていたはずの扉が大きく音を立てて開いた。
反射的に視線をそちらに向ける。
扉の向こうにいた人物を見て、私は目を見開いた。
「どうして……」
「セラちゃん!! ようやく見つけた!!」
そこにいたのは、ラピシェル帝国で別れたはずのルークさんだったのだ。
ルークさんは息を切らしてこちらへ近づいてくる。
アメリア様も精霊師たちも、突然現れたルークさんを驚いた顔で見ていた。
「ルークさん、どうしてここへ……?」
「セラちゃんが浮かない顔していたのがどうしても気になったから、サフェリア王国まで来ちゃったんだ。エリオット様に頼んでも会わせてくれないだろうと思ったから、こっそり王宮に忍び込んじゃった」
「し、忍び込んだって……!」
あっさりととんでもないことを言うルークさんに唖然としてしまった。
ルークさんは部屋の中を見回しながら言う。




