15-2
「セラフィーナ様、こちらですわ」
アメリア様が、神殿の奥の扉を開けて言った。
中にはたくさんの精霊師たちがいて、緊迫した空気で話し合っていた。
彼らの後ろに精霊の石が見える。
銀色の台座の上に置かれた、水晶玉のように透き通る美しい石。しかし、精霊の石がいつも纏っている光は、大分弱まってしまっていた。
精霊師たちが順番で力を送っているが、石に目立った変化は現れない。ほんの数秒だけ光の強さが増すものの、すぐに元に戻ってしまう。
精霊師たちが焦ったような声で話すのが聞こえてくる。
「どうする、力を送ってもちっとも効果が現れないぞ」
「どうして急に弱まってしまったのか……。王国の瘴気が増え過ぎたせいなのか?」
「精霊の石の光が完全に消えてしまったら、まずいことになるな」
アメリア様は、深刻な顔で話す彼らの方へ向かっていった。
「皆さん、場所を空けてください。セラフィーナ様を連れてきましたわ」
「セラフィーナ様を?」
精霊師たちの視線が一斉にこちらへ向く。
彼らの顔に、嘲りの色が浮かんだ。
「アメリア様。私たち王宮精霊師たちが何時間も続けて魔法を使い続けても、全く効果が現れていないのですよ。失礼ながら、セラフィーナ様お一人でどうにかできるとは……」
精霊師の一人がアメリア様に向かって言う。
シリウスが私の首元で不愉快そうな声を上げた。
『なに、あいつ。たかだか王宮精霊師のくせに生意気な。こっちは王太子の婚約者だっていうのに!』
「わかっていたけれど、歓迎はされていないみたいね」
私は小声でシリウスの言葉に答える。
すると、アメリア様が精霊師たちに向かってにっこり笑って言った。
「まぁ、何をおっしゃるのですか。セラフィーナ様は精霊師の名門シャノン公爵家のご令嬢ですのよ。彼女が力を送れば、たちまち状況が改善するはずですわ」
アメリア様はそう言って、私を精霊の石の前に引っ張っていく。
『いつもそんなこと言わないくせに。この女、セラに魔法を使わせて効果がないところを周りに見せたいだけなんじゃない? シャノン公爵家のご令嬢もこの程度なんですね、みたいな』
シリウスは不機嫌そうに呟いた。
さすがにアメリア様がそんなことを考えているとまでは思わないけれど、彼女の笑みには何か裏を感じて戸惑ってしまった。
このまま言う通りにしてもいいのだろうか。
しかし、精霊の石の光は今もどんどん弱まっていっていて、このまま何もしないのは躊躇われる。
「セラフィーナ様、お願いします」
「……わかりました」
違和感を抱えたまま、私は精霊の石の前に立った。
石の前に手をかざし、石に力が戻ってくれるよう願いながら力を込める。大切な石なので、負担がかからないように慎重に力を送った。
すると石の光がだんだん強まり始めた。
私はもっと光が強まるよう、目を閉じてさらに力を送る。
このまま力を送れば、少しずつでも石が光を取り戻してくれるかもしれない。石に負担がかからないよう、ゆっくり力を込めて……。
その時突然、バキンと鋭い音がした。
驚いて目を開け、正面の石を見る。飛び込んできた光景に驚愕してしまった。
そこには、台座の上で無残に崩れ去った精霊の石があった。




