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それから早速、私はアメリア様と塔に向かうことになった。
協力するのはもちろん構わない。私の力が少しでもサフェリア王国の役に立つなら嬉しい。ただ、私にはひとつ心配事があった。
ラピシェル帝国でルークさんが言っていた、精霊に一度にあまり大きな力を与えるとよくないという言葉のことだ。
ルークさんが言っていたようにアメリア様が私の功績を乗っ取ろうとしているとは思わないけれど、アメリア様が知らずに精霊に力を与え過ぎているのだとしたら問題を伝えておく必要がある。
塔までの道を歩いている最中、私は声を潜めて彼女に言った。
「アメリア様、少しよろしいでしょうか? 精霊に力を送る時のことでお伝えしたいことがありまして……」
「伝えたいこと? なんでしょう」
「実は私、王宮を出ていた間、ラピシェル帝国に行っていたんです。そこで、精霊に詳しい方と会いました。その方は、精霊に一度にあまり強い力を送るのはよくないと言っていて。短時間で強い力が与えられると、精霊には負担が大き過ぎるのだそうです。せっかく精霊が作ってくれた森や川も短期間で消え去ってしまうのだとか。ですから、アメリア様も今後は緩やかに力を送られた方が……」
私がそう説明すると、アメリア様の顔が引きつった。
眉間に皺が寄り、口元がひくひく動いている。いつも聖女らしく微笑んでいるアメリア様らしくない表情に驚いてしまった。
「……その話、一体誰が話しておりましたの?」
「ラピシェル帝国の魔術師団の方です。帝国では精霊が公には信じられていないので、独学で学んだとおっしゃっていましたが、とても精霊に詳しい方なんですよ」
私はルークさんのことを思い出しながら言う。サフェリア王国では知られていない大精霊のことを知っているくらい、ルークさんは精霊に詳しい人だった。
「そう……。そうですの。それは考慮しなくてはなりませんわね」
アメリア様は引きつった表情のままで言う。
今までのやり方に水を差して、不快にさせてしまっただろうか。私のような出来損ないの精霊師の助言なんて、アメリア様にはうっとうしいのかもしれない。
けれど、もしもアメリア様のやっていることで精霊に悪影響が出ているのなら、そのままにしておくわけにはいかないのだ。
「……セラフィーナ様。助言をありがとうございます。今後は力加減に気をつけようと思いますわ」
「ありがとうございます。アメリア様」
アメリア様は先ほどまでの引きつった表情が嘘のように、柔らかい表情になって言った。
私はほっとして彼女の言葉にうなずく。
わかってくれてよかった。少し疑ってしまったけれど、やはりアメリア様はこの国のことを考えている精霊師なのだ。
私は先ほどまでより軽い足取りで、塔までの道を急いだ。
隣を歩くアメリア様が、私に鋭い視線を向けていることなんて、この時は全く気付いていなかった。




