表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています  作者: 水谷繭
1.殿下のために死んだことにします

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/13

1-6

 それから、元々悪かった私の待遇は、どんどん悪くなっていった。


 部屋を物置に移され、食事をダイニングルームで取ることを許されなくなって。


 今までは一応は受けさせてもらっていた家庭教師の先生の授業も、「精霊と契約も出来ないお前には必要ない」と受けさせられなくなった。



 両親のそんな態度を見て、二人の姉は目に見えて私を見下すようになった。使用人たちもそれに習うように、私を蔑んだ。


 由緒あるシャノン家に私のような出来損ないが生まれたのは一家の恥で、家族は出来ることなら存在自体を消し去ってしまいたかったのだと思う。


 私は来る日も来る日も、薄寒い物置小屋で膝を抱え、気まぐれに分け与えられる食べ物を口にしながら、どうにか命を繋いで来た。



 いいことなんて何にもない日々だったけれど、ある日私の世界に光が差した。


 精霊のシリウスと出会ったのだ。


 ある日、私が言いつけられた庭の掃除を終えて、木の影で休んでいると、後ろからがさごそ音がして、白いふわふわした生き物が出てきた。


 驚いてその生き物を見ると、どうやら猫のようだった。真っ白な毛に、水色の澄んだ目をしたとても可愛い猫。


 しかし普通の猫ではなかった。その猫の左肩には、白い小さな羽根が生えていたのだ。


 はっとして、返事が返ってくるわけないと思いつつも、思わず尋ねる。



「あなた、もしかして精霊?」


 前に絵本で読んだことがある。


 この世界の精霊は基本的に透明な羽根の生えた人型をしているけれど、稀に動物型の精霊がいるらしい。


 他国では聖獣と呼ばれることもあるそうだけれど、この国では動物型の生き物も全て精霊と呼んでいる。


 ただ、この子が本当に精霊ならば、どうして私にもはっきり姿が見えるのかわからないけれど。


 猫は私をじっと見ると、私の膝に右足をかけてきた。



『そうだよ。君、僕が見えるんだ』


 突然猫がしゃべったことに驚いて私は固まった。


「あなた、喋れるのね」


『そりゃあね。人の言葉くらいわかるよ。君こそ僕が見えるなんて驚いた。この家の使用人なの?』


「ううん、私、この家の娘なの。そうは見えないだろうけれど」


『えっ、このお屋敷のお嬢様ってこと? 嘘でしょ? なんでそんなボロボロの服着てるの?』


 白猫は驚いた顔で口を開けている。私は苦笑いで説明した。



「私の家は精霊師の名門なのに、私は精霊をちゃんと見ることすらできないの。あなたのことはなぜかはっきり見えるんだけど。名門の家に私みたいな出来損ないが生まれたことをみんな恥だと思っているみたいで、私はいないものとして扱われているのよ」


『ふーん、なかなかいかれた家なんだね』


 白猫は目を細め、呆れた顔で言う。


 それから何かを思いついたようにぱっと目を輝かせた。


『それなら僕が契約してあげるよ』


「えっ」


 私は驚いて白猫を見た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ配信中】
「殺されたくなくて悪役な婚約者を愛でていたら、なぜか溺愛されました」
k5b2g5nkfi82c1216xsth83jkrtn_1tf_d8_jg_4qvh.jpg
Renta
Renta!では4話まで、他電子書店では3話まで配信中です。 すごく素敵なのでぜひ読んでください!
ピッコマ
めちゃコミック
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ