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「……うるさい! 用がないのならもう戻れ!! 俺は俺の利益のためにセラフィーナを探しているだけだ!!」
「はいはいわかりましたよ。都合がいいからセラフィーナ様を婚約者にしておきたいんですね。そういうことにしておきます」
「なんだその反応は! 全く信じていないだろう!!」
レオンは俺の顔をちらりと見ると、やれやれと手を挙げる。
「大丈夫です。私はちゃんとわかっていますので。ご命令の通り下がりますが、こちらのハーブティーだけでも飲んでくださいね。メイドに作らせた疲れに効くものですから」
「……わかったからさっさと行け」
レオンは俺に向かって憐れみの滲んだ笑みを向けると、扉を開けて出て行った。
部屋に残された俺には、悶々とした気持ちだけが残る。
(……別にセラが大切なわけじゃない。セラが一番俺に都合がいいから見つけたいだけだ)
セラの姉たちやアメリアのほかに、もっと婚約者として都合のいい存在がいれば、すぐにでもそちらを選んでやる。
しかし、その思いとは裏腹に、セラの顔が頭から離れなかった。
頭から追い出そうとするたびに、余計にセラのことで頭が埋まって行く。
レオンの言葉が頭に何度も蘇った。
(違う。俺はセラを想っているわけじゃない。あんな女全く好きじゃない。……そうでないと、母上に示しがつかないではないか)
考えないようにするから余計に頭から離れないのだ。
どうせベッドに入っても今日もよく眠れないだろう。
いっそ今日はセラのことだけ考えていようと、セラを住まわせていた別邸に足を運んでみることにした。
***
王宮のはずれにある別邸は、夜中に訪れると昼間よりいっそう物悲しく見えた。
セラを王宮に連れきてからずっと、ここで暮らさせていた。
こんな場所に一人でいるのは心細いだろうと思わなかったわけではない。
レオンを始めとする臣下たちに、セラを本宮殿の方に移してはどうか進言されたことも何度かあった。
しかし、その度に進言を斥けてきた。
母上のことを考えると、シャノン家の娘に対し別邸に住まわせる以上の暮らしを与えることなど出来なかったからだ。
しかしそれでよかったのだろうかという考えが、今になって何度も浮かんでくる。
ガタガタいう扉を押し開け、別邸の中に足を踏み入れた。
別邸に入ると、途端にセラの姿が目に浮かんでくる。
公務に疲れたり、嫌なことがあったりすると、俺は無意識にセラのいるこの別邸に向かっていた。
セラは俺が訪れると、いつも満面の笑みで出迎えてくれたから。
こんな寂しい場所に一人で住まわせているというのに、文句を言ってきたことは一度もなかった。
『私はいつでもエリオット様の味方です。お許しいただけるなら、これからもずっとおそばにいさせてください』
どうにも気持ちが塞いで別邸にやって来たある日、セラに手を取ってそう言われたことを思い出す。
あの時、張り詰めていた心が確かに和らいだのだ。
「……なんでいなくなるんだよ。そばにいるって言ったのに……」
なぜ俺はこんなに必死にセラを探しているのだろう。
自分で自分がわからない。
ただ、セラがもうここにいないと考えると、胸が痛いほど締め付けられる。
必ずセラを見つけ出そうと、改めて心に決めた。
もう一度セラに会えば、わけがわからないこの感情も消えてくれるはずだ。





