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「セラ……どこに行ったんだ……」
深夜、セラの捜索から戻ると俺は自室でしゃがみ込んだ。
今日もセラの痕跡はどこにも見つからなかった。
王宮付近の町で聞き込みを行っているが、セラらしき人物の目撃情報は出てこない。
セラのショールが見つかった崖でも、ショール以外の痕跡は何も見つからなかった。
全くセラの行方を辿れないことに疲弊していた。
ただ逆に言えば、それはセラが死んだという証拠も見つかっていないということでもある。
崖の下まで出来る限りの捜索を行ったが、セラの死体も、血痕もどこにもなかった。
そのことにだけ希望を抱き、セラを探し続けている。
「……セラが死ぬはずない。きっとすぐに見つかるはずだ」
別邸から持って来た遺書を眺めながら、自分に言い聞かせるようにそう呟いた。
セラはきっとまだ生きているはずだ。
馬鹿な真似をする前に、早く見つけてやらなければならない。
そんなことを考えていると、扉を叩く音がした。
「エリオット様、少しよろしいでしょうか」
「なんだ、入れ」
扉の外から聞こえてきたのは、臣下のレオンの声だった。
レオンは昔から俺のお目付け役のような役割で、セラフィーナと初めて会った日にも一緒にシャノン家を訪れていた。
レオンは俺が返事をすると、静かに中へ入ってくる。
「失礼します。エリオット殿下、お茶をお持ちしました。少し休まれてはいかがでしょうか。昼間は公務で、夜はセラフィーナ様の捜索を毎日続けているのでは体がもたないでしょう」
「放っておけ。セラの捜索を人任せに出来るか」
そう答えると、レオンは眉根を寄せて難しい顔になる。
レオンの視線は、机の上に置いてあったセラのショールの上で止まった。
「……殿下、そこまでセラフィーナ様のことを想っていらしたのですね」
レオンがしみじみとそう言うので、俺は目を見開いた。
すぐさまレオンに言葉を返す。
「何を言っている! 別にセラを想っているから必死で捜索しているわけではない。セラを婚約者にしておくのが一番都合がいいからどうしても見つけたいだけだ!」
「……え?」
レオンは俺の顔を凝視して、目をぱちくりしている。
「なんだその顔は。俺が何かおかしなことを言ったか」
「い、いえ……。都合の問題でしたら、セラフィーナ様の姉君二人のどちらかを新しい婚約者にすることも出来るのでは?」
「嫌だ。それでは陛下やシャノン公爵を喜ばせるだけだ。俺はシャノン家の出来損ないを婚約者にして、陛下たちに嫌がらせをしたいのだと何度も言っているだろう」
「確かにいつもそう仰られていますが……。それなら聖女と謡われるアメリア様を新しい婚約者になさっては? 能力は十分で国民からの人気もありますし、彼女であればシャノン家の令嬢を差し置いて婚約者に選んでも反対は出にくいと思いますよ。陛下やシャノン公爵の思惑を斥けられるのでは?」
「そ、それは……。でも、俺はアメリアはどうにも苦手なんだ。笑顔に裏がありそうで気味が悪い。べたべたくっついてくるのも気にいらない。セラならそのようなことはないからな」
「結局セラフィーナ様がいいんじゃないですか……」
俺がどうにかセラを探す理由を説明すると、レオンは腹立たしくも哀れむような目を向けてきた。頬がかっと熱くなる。





