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『精霊の加護に感謝しないなんて、とんでもない国だね。そのうち滅びるんじゃない?』
「シリウス、不吉なことを言ってはダメよ」
『だってさぁ。なんだかまるで、サフェリア王国の王子と聖女みたい。あいつら、セラが一日中精霊に力を送ってるのに、その功績を全てスルーするんだもん。セラも帝国の精霊たちみたいに怒っていいと思うよ』
「私の力は本当に大したことないもの。怒ることじゃないわ」
私とシリウスがそんな話をしていると、ルークさんがずいっと近づいてくる。
「セラちゃん、祖国では精霊に力を送ってたの?」
「はい。私に出来ることはそれしかなかったので、塔の上で国中の精霊に力を送り続けていました」
「へー! それはすごい!」
ルークさんの目がどんどん輝いていく。
それからルークさんは、期待に満ちた声で言った。
「セラちゃん、ちょっと頼みがあるんだけど。今から外に出て精霊に力を送ってみてくれないかな?」
「えっ、でも、私の力は本当に些細なものなんですよ」
「全く問題ないよ! 力を送れるだけすごいって。試しにやってみてくれない?」
ルークさんは手を合わせてそう頼んでくる。
私の力なんて大して役に立たないと思ったので、期待に応えられなかったら申し訳ないとは思ったけれど、少し試してみるくらいならいいかもしれない。
「わかりました。ご期待に沿えるかはわかりませんが……」
「本当? ありがとう!!」
承諾すると、ルークさんはたちまち笑顔になる。
私は少しでも役に立てたらいいなと意気込んだ。
私の肩で、シリウスが呆れた声で『セラのお人好し』と呟いた。
***
そういうわけで、私とシリウスとルークさんは、お店の外に出て町の真ん中あたりにある広場へ向かった。
「この辺りで力を送ってみてくれる?」
「わかりました。やってみます」
私は広場の真ん中に立ち、手を組み合わせて力を込める。
目を閉じて集中していると、感じないと思っていた精霊の気配を遠くにわずかに感じられた。あれは、山が見えた方角だろうか。
私はそこにいる精霊たちに向かって、魔力を送る。
「え、え!? なにこれ!! セラちゃん光ってない!?」
『セラの魔力は強いんだよ。サフェリア王国では誰も認めてなかったけど』
「え、何これ、本当に力を送ってるだけ!? なにかとんでもない魔法発動してない!?」
私の後ろでルークさんと、ルークさんの足元に移動したシリウスが何やら話している。
私が精霊に力を送っている様子はそんなに驚くような光景なのだろうか。
少し集中力を削がれながらも、精霊の気配に力を送り続けていると、遠くから精霊の気配が近づいてくる感覚があった。
そのまま力を込め続けていると、その気配がだんだんと増えてくる。
「セ、セラちゃん!! 精霊が!! なんか戻って来てるんだけど!!!」
「まぁ、本当ですか?」
私は目を開けてルークさんを振り返った。
ルークさんは口をあんぐり開けて、視線をきょろきょろ彷徨わせている。





