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「あの、ルークさん! この町にはどうして人がいないんですか? 私たち、サフェリア王国から今朝この町にやって来たんですけど、全然人がいないので不思議に思っていたんです」
シリウスの顔がどんどん引きつってきたので、話題を変えるためにも気になっていたことを質問してみることにした。
「ああ、ここは数ヶ月前から瘴気が溢れすぎて人が住めなくなっているんだ。だから住民はみんな避難してる」
「瘴気ですか?」
「うん。普通の人間なら息をするのも苦しいはずだよ。俺は多少耐性があるのと、瘴気対策の石を持ってるから平気だけど」
ルークさんはそう言って、懐から青紫色の尖った石を出して見せてくれる。
「へー、便利なものがあるんですね」
「うん。といっても値が張るし、使用期限もあるしで、短期間の調査にしか使えないけどね。セラちゃんはこういうの持ってないんだよね? どうして平気なんだろ。本当に何ともないの?」
「全く……。言われてみれば少し空気が悪いような気もしますが」
「セラちゃんも耐性があるとか? それとも大精霊と契約してるから……?」
ルークさんは顎に手をあてて考え込んでしまった。
本当に私は何の苦しさもないけれど、瘴気を感じないことはそんなに不思議なことなのだろうか。
「ルークさんはお仕事でここへ?」
「うん。さっき皇女様にこき使われてるって言ったでしょ? 皇女様にレピドの町……あ、この町の名前ね。レピドの町の瘴気汚染がひどいことになってるから、なんとかしてこいって命令されて、今状況を調べてたんだ」
「そうだったのですか」
やはり最初の予想通り、ルークさんはこの町の調査をしていたらしい。
「俺の予想では、精霊がいなくなったことが関係してると思うんだよね」
「精霊がいなくなったこと? 確かに精霊の気配が全くしませんね」
うっすらとしか精霊を見られない私だけれど、サフェリア王国にいたときはいつもどこかしらに精霊の気配を感じていた。
しかし、この町に入ってからは全くそれがなかった。
「セラちゃんはサフェリア王国から来たんだよね。サフェリア王国は精霊をかなり重要視してる国みたいだけど、うちの国は全く逆なんだ。精霊の存在自体迷信扱いしていて、精霊師なんて職業も存在しない」
「えっ、知りませんでした」
一応はサフェリア王国の王太子の婚約者だったというのに、隣国の状況すらしらなかった。私はちょっぴり反省する。
「俺も出来るなら精霊師になりたかったんだけど、この国じゃ無理だから魔術師団に入ったんだ」
「まぁ、そうなのですか」
「そうそう。あっ、いや、俺のことはよくて。精霊を全く信仰しない国だから、精霊の加護を受けても全て偶然で片付けちゃうんだよ。きっとそれで精霊が怒っちゃったんだと思うんだ。
今、国の各地で精霊がいなくなり始めていて、そうすると今まで精霊が浄化してくれていた場所にも瘴気が満ち始めるから、人が住めないところが増えてるんだよ。一番ひどい状況なのがこのレピドの町」
「な、なるほど……!」
この町に人がいなかった理由を大体理解出来た。
シリウスが私の肩でもぞもぞ動きながら言う。





