13 十歳 ギルバート・イシス
町での情報収集はひどいものだった。
朝から町の人々に「本がある場所は存在するか?」や「本が置かれている店はあるか?」と聞いても、嫌な顔をされるか、曖昧な答えしか返ってこない。「そんなものはない!」と怒鳴る者もいる。
……変な町だ。
不親切というよりも、余所者を排斥しようとしている。俺たちが誰かに声をかけるたびに、どんどんと怪しまれる。
冷ややかな目で見られるようになり、ヒソヒソと声を潜めながら俺たちの話をしている。
「遊びに来たのかと思ったけれど、なんだか色々と聞き回っているみたいなの。本がどうとかこうとか……」
「フレッドさんとこの知り合いらしい。……たしか、昔いた騎士団の知り合いの親戚? ……みたいなことを言ってた気がする」
「全員似ていないわね……。特に一人、ずっとフードを被っているもの」
「この町を荒らしにきたんじゃないのか?」
そんな声が聞こえてくる。
こんな体験は初めてだった。王都ではこんなに噂されることはない。良くも悪くもお互いに干渉しない。王都はみんな余所者同士だ。
田舎だからこそ、団結力みたいなものは凄いのだろう。
俺たちは中心地を少し離れて、人の気配がないところへと一時的に移った。
「溶け込み方を間違えましたね……」
ベティが困ったようにそう呟いた。すぐにリラが言葉を返す。
「そもそも溶け込む予定じゃないもの」
それはそうだ。俺たちは長くても一週間しかここにはいられない。それぞれ要務が残っている。
「どうしますか? 殿下」
ベティは視線を俺へと向ける。少し間を置いた後、俺は口を開いた。
「お前たちは町の人々をなんとか懐柔しろ。俺は別行動をする」
フードを被りっぱなしだと、怪しさは拭いきれないだろう。
「お一人で行動なさるのですか?」
「ああ」
「せめてベラだけでも」
「いや、俺一人で大丈夫だ」
「…………くれぐれもお気をつけて」
どこか不満そうだったが、ベティはすぐに折れた。本当は俺が一人でどこかに行くことは嫌なのだろう。
双子やリラは俺の勝手な行動をある程度は許してくれる。これは信頼関係を築いているからこそ成り立っているものだ。それも俺は重々理解している。
修道院へとまた足を運んだ。
あの女の子にもう一度会いたいという気持ちもあったが、修道院にもしかしたらイーヴィアの書の手掛かりがあるのかもしれないとも思った。
……だが、町の様子からして、俺を歓迎してくれるとは思えない。
閉鎖的な町だ。もうすでに俺たちの情報は修道院にも来ているだろう。




