第七話 おさつオールスターズ
ですよね、っつか小銭と間違えるなんてどういう神経して……んー?
再び弄る?
どうやら遼の予想は的中していたみたく、例のブツ『五千円札』を取り出した。
樋口一葉さんとのご対面! なんという『おさつオールスターズ』! 何かの間違いだと言ってくれ!
「あ~ん、また間違えたぁ」
……お前、ドジっ娘ってレベルじゃねえぞ! それよか、次は五円なんだな。
今までの長期に渡った前振りはギャグ的要素の含まれた渾身のネタで「じゃっじゃーん。五円! ご縁があるんだよ~なんちって」とちろり舌を出す展開になるに違いな、そう確信しきったところで外れてしまうのが、もはやお馴染み定評付けされていたようだ。
『一万円札』
「またあんたかぁぁぁぁあ!」
「きゃっ、ど、どうしたのお?」
いても立ってもいられず思わず突っ込んでしまった。
はいなんでやねん!
梨璃雪は驚いたのか、くるっとこっちを振り返っている。
しかし手には先生がいない。あんっ?
「もー、吃驚するから驚かすのはやめてよね。寿命が縮まっちゃったよー」
ついでにお金も減っていくな。
それよかお前の大先生消失マジックのが驚きだ。
一万円の行方が気になる遼は目をきょろきょろと移動させ、現状の把握作業に取り掛かる。
その間二秒。
ものの見事に視界に捉えた。
賽銭箱の淵に引っ掛かっていた一万円札は風に吹かれたせいかひらひらと舞い落ちる際に軌道を変え、寺の縁の下に吸い込まれるように潜り込んでしまった。
今遼は無性に叫びたい。
諭吉大先生ーっ! と。
しかし当の本人はそれに気付いてないのかそれとも一万円などと思考を活かしスルーをかましているだけなのか、可愛らしく小首を傾げ、頭上には?マークが見受けられた。
アホの子ってなんだろうな。しかし遼の正直魂が、許しまいと煌びやかにも揺れる。
「さっきの一万円だけどな」
遼は言った。
しかし間髪入れずに梨璃雪も言い返す。
「一万円? あぁあれねー。ホント返さなくてもいいって言ってるのにぃ。それじゃ、私はもう行くねー」
手を振りつつも遼を見据えながら(あぶねぇぞ)、去っていってしまった。
なんてこったあの放置プレイと化された福沢大先生をどうすりゃいいんだ。
流石に、ほかっておくのは不味いよな?