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金の力はパステリー  作者: 河合 翔
金の力はパステリー(2)
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第五十三話 一時閉幕

「なんで男の浪漫ロマンではなく需要ありけりのスク水なんだよ!!」

「えっ? …………えっあっ」


 カーッと赤面、同時に血の気が引くような状態であることもうかがえた。


「キャ――――――――ッッ!!」

「うあっ」


 いつ聞いても女の金切り声は、遼の耳には優しくないようだ。近い位置にいるのがなおの事耳を傷める原因になっていることもつゆらずに。


「やっやっ、見るなぁ」


 男勝りに喋るあの瀬央がここまで取り乱すとは。予想を遥かに超える反応に、水の絡みつきが揺るぎ溶け出す。


 チラッ。


 一瞬にして気付かれないように振り返ると、椿姫のスカートはまだ浮いていて――ものの見事な縞パンでした。


「……ふぅ、一時はどうなることかと思ったわ。そんでもってスク水って何?」


 無知で有名な椿姫が、スカートの端を絞りながら耳に届いていたことを口にした。


「スク水ってのは小中学生の女の子がプールなどで身に着けるものでって、今はそんなこと熱弁してるゆとりはないか」


 出雲高校女子セーラー服は特殊なモノで、上と下が一応は繋がっているため、下方のひらひらを本当にスカートと称しているのが正しいことなのかと疑いの眼差しを自身に向けつつ、遼は水を蹴りダッシュしだした。


 目的は瀬央、今は隙が大分できているから難なく攻めることが可能なはず。やるべき行動は押し倒す! と、予定通りに瀬央のふところに飛び込んだ遼は、瀬央の肩をガッと掴んで水に押し倒した。


 さっきより水が引いているのは気のせいか、どちらにせよ水がクッション代わりとなって吸収し、痛みはないだろう。


「うっ」


 急に攻め込まれたのが利いたのか、水面が軽く波打ち揺れ動く。情緒不安定にも瀬央は喉を滞らせた。


「さぁ、これで形勢逆転だな。おとなしく負けを認め……」


 次は遼が喉を詰まらせる番だったようで、やってしまった行為に声が出なくなる。


「……はっ。こ、この野郎……ああああぁぁ」

「だ、だから何なのよって……は~る~か~」


 不可抗力すぎる結果に遼自身が苛まれ、次に瀬央が硬直し、最後に椿姫が怒りをあらわにした。


(待て、誤解だ。早まっちゃいけない。何事にも順序ってもんが存在していてだな……)


 人はこれをラッキーハプニングと言うかもしれない。いや、きっと言うことだろう。遼は無防備な瀬央を押し倒した際、態とではないが胸を鷲掴みにしてしまったようで、


「椿姫とは大違いの巨乳……璃梨雪とどっこいだろうか。制服越しからでも温もりが伝わる。濡れたお陰かスク水とセーラー服が密着して、浮き上がった突起……あーっ、また声にっ!」

「そ、そんなやらしい目で見てたの、遼……?」


 椿姫のドン引く音が背後からでも十分に聞こえた。まって! 違うんだよ! なぁ。だってえっと、


「も、揉み応えのある胸ですネ?」


 ――これが今の遼が思っていたことだった!


「いいいっ、いつまで触ってんだーっ!」

「はるかぁっ!」


 ダブルで鉄拳が遼の顔面に炸裂。表裏一体の合わせ業に、遼完全にノックダウン。しかし、それとは別に永遠とも呼べる至福の感触を得た遼はとても幸せそうに、殴られたというのにもかかわらず、顔をほころばせていた。


(今はスカートを捲っただけでも捕まる時代(高校生で)。ホント不可抗力にしろ、胸を掴んだなんて訴えられたら絶対に裁判で勝てる気がしない)


 さらに別の意味で心臓音をばくばくさせる遼であった。ごばっしゃーん! という無駄に壮大な効果音を水飛沫であげたと同時に、なにか吹っ切れたように屋上を浸水していた水が、まさかのまさか屋上から滝となって周囲下方から降り注いだ。


 ショック・ウェーブを彷彿とさせる波打ちで右にばっしゃーん! 左にばしゃーっ! 水を出していた瀬央もここまで被害が大きくなるとは予期していなかったようで、顔をあわわとさせている。


 言えた義理ではないが、仕方がない状態に目を逸らせつつ言葉を投げ掛けた。


「お、おい。水を出した張本人がお前なんだから、逆に水を別の場所に飛ばすことくらいできるだろ?」


 この立案に対し、


「くっ、ウチが得意としているのは異物の移転プリズムであって、送転レジェルはまだ完璧でないんだ。未熟なまま使えばイレギュラー昇華が起こるかもしれない」


 ……聞きなれない単語が右の耳から左の穴を素通りしていく。さっぱり意味が解らない。


「ああ、うん。そうなのか」


 適当に相槌あいづちを打って水で乾いた箇所をポリポリと掻いた。なんだろう、この状況。


「こらーっ! 何をやって、うわあ。み、水が」

「やだ、水浸しじゃない……」


 遅ればせながらこの騒ぎに駆けつけた教師陣が現れた。まだ両耳に水が入って聞こえ辛かったが、さっきから下の方で聞こえている悲鳴は空耳じゃないんだな。帰り際の生徒達とかの。


(……厳重注意だけで済むのかなぁ)


「ホント、やれやれだぜ」


 自分自身のせいかもしれないのに、呟かずにはいられない遼だった。

※タイトル、小説ではありませんのでご注意を。

というよりも! お伝えしたい大事なことが!

なんとですね、長らく無駄に話数を増やしてきたこの金パスですが、ついに10万文字を突破致しました!!

多分他の小説だと20、30章くらいでいく10万文字とかですが、いやはや感涙咽び泣きそうですよ……。

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