エピローグ(一)
後日談として語られるこの内容は、一体誰の耳に届くのか。
非常にどうでもいい話のような気もする、特に前者あたりが。
別段なにがあったというわけでもないし、興味をそそるような芳しいあれやそれに該当だってしない。
曖昧に登場するあれやそれの単語に置換すべき言葉は自身で探ってもらうとして、結論から先上げすると、家賃が二倍の額に膨れ上がってしまったという点か。
なぜだと訊いてほしくはない。
どうせ遼自身のポリシーが勝手に抑留をオーバーキルし、強制的に語る破目になるのだから。
全く持って困ったものだが、理由は壁に貫通した金を無事銀行に送ることに成功させた矢先、ひび入り崩壊の音を奏でる壁を唖然とした顔で眺めていると、タイミングよく二○二号室に入室してきた大家さんと壁穴を通じて笑みを交わし、脳天怒髪を思いっきり突かれたところで、遼の視界は脆く崩れ落ちるようにブラックアウト。
一番の強敵は大家さん(未婚パワーを糧とし)に違いない。
二○二号室と二○三号室を大家さんの許可の下(無理強いだとも)、有り余っていた金で改築工事を行い、一つの空間として広げ繋がってしまった。
無論諸経費以外に余った金は銀行にぶっ飛び、遼の財布もチャラリ~と悲劇めいた音を鳴らせるようにまで至った。
嬉しくもないし逆に泣けるし、懐がどうしようもなく寒い。
冷凍庫に一時間入り浸っていたみたく凍り付いたといっても過言にはならないさ。
それ程の面持ちを心情も何もかも雪の大地に晒されてしまった。
因みに今の家賃額は『四万二千円』。
低く感じる奴は爆発でもすりゃいいと願ってやれるし、高いと思える奴は過去の遼だ。
もとが二万千円だったのが急に倍になるというのは、骨が折れるとかそういう次元じゃない。
もはや死んでしまうわ!
今日は激しく己に同意出来る。
何? 椿姫さんの力をフル活用すれば問題解決だって? 確かにそうだ。
あいつの力を使えば一発で億万長者に伸し上がれることだろう。うはははははははっ、う、ごほっごほ。
と、取り乱してすまない。
しかしそれは無理な話だ。
理由は簡単、あいつの力に規制を掛けてやった。
能力コントロールがおっつかない上、万が一発動に別チェーンが掛かり他人の金を奪ってしまうともかぎらない。
それだけは勘弁してほしいし、迷惑だって掛けたくないからな。
ならば、使用せずに禁止してやった方がいいだろう。
うむ、使わないに越したことはない。
それに力を発揮することによってまた御堂みたいな、椿姫を付け狙う連中がやってくる可能性だって否定できないし、ならばこちらから御免こうむりたいところ、力を発動せずに封印を施す方が最大公約数的にも四捨五入する的にもいいわけだ。
地味に平和主義だし、戦わずのんびり過ごせることを希望する。
そういえば遼も核とかなんとか言われていたが、生活するうえで全く支障をきたさないため、放置択一を保っている。
そちらに関しては重宝するが、変化したというよりかはおかしな感性に浸りし問題が一つ浮上した。
――謎力保有者が近くにいるのかどうかを、肌か脳かで直感的に感じ取り解るようになってしまったことだ。
その証拠に椿姫が近くに寄ると体が反応するように一線が走る。
よく解りはしないが、謎力核の能力なのだろう。
真面目に厄介だな、これ。
しかしまだ極微で大して反応したりはしないし、役にも立たないと思う。
というわけで居場所把握能力保留。
当然の如く放置だ。
それがいいさ。最善の処置とも呼べる。
まぁそんな厄介な特性を身に付けつつも元気にやっていくつもりだ、一人の人間として。
世界的大不況の最中、家賃も増額(倍)、非常にくえぬ足枷である。
思考言病も継続でバイトにもつけず、泣きを呑み、今までと同じマンネリと化す切羽詰った苦しい現状。
だけど、変わったこともあってボロアパート二○二・三号室に身を置く新たな住人『金子椿姫』と一緒に乗り越えていこうと思う。
笑って暮らせる、日常を求めて。
一巻分、これで全部終わったあああああっ!!
ここまで読んでくださったみなさん、お気に入り登録してくださったみなさん。
本当にありがとうございました!!!
(まだ続くんですけどね!




