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金の力はパステリー  作者: 河合 翔
金の力はパステリー(1)
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第三十七話 傷だらけの戦士

「梢の言ったことは正しい。謎力パステリアス所有者は周囲の人間を不幸にする」



 タバコの吸殻すいがらほうり捨て、ポケットを手に突っ込んだまま踏み潰す御堂。


 不穏な発言と動きを洞察し、椿姫に顔を向けるが、良かった。まだ無事なままだ。


「安心しろ。梢と合間見える最中、金子椿姫に手を出すなどという卑劣な手段には出ん。確かにやれんことはないがな」


 遼の心中を三手ぐらい先読みし、嘘か真か疑うのも無理はない素振りで始めに梢、次に椿姫を指差して有数口含んだ。



「話の本筋に戻るが、謎力パステリアスとは表面上においてはそいつ自身の能力として捉えられているが、実は異なる。謎力パステリアスはな、そいつ自身のことを指し、ゆえに……」



 一テンポほど間を挟み、躊躇ためらうことを捨て、御堂は言った。





「人間ではない」




 この場一帯が静寂に浸された。そんな気がした。



「なに……?」



 真っ先に反応したのは遼。


 他の奴は絶対に指摘しないと思ったからだ。



「どういうことか詳しく聞かせろ」

「どうもこうも言葉の通りだ。人体、思考、能力、どれをとっても人間のそれではない。もっとも進化の低迷期におちいった人間の医学科学共々相違を図ることは不可能だが、我々 未来パステレス革命ロードは見極めの力を得た。血液型検査でもやれば一目瞭然だが、大抵がAOB型。謎力パステリアスにより染色体の変化も見受けられるのだ。根拠等幾らでもある」



 途中理解の範疇はんちゅうを超える小難しい単語を並びたてられた気がし、相槌あいづちを打ついとまも無く雑念だけを振り払った。



「根拠がいくらあったって関係ねえ。それはお前が決めることじゃないんだ。あいつら自身の問題だろ! 人間だとか人間でないとか、そんなもんは些細ささい隻句せっくにすぎやしない。戯言染みた発言をするよりもまず目先のことを考えるべきだ!」


  椿姫にも梢にも聞こえるようわざと声を荒げ叱咤しったを込めた。


 近所迷惑にならない程度で。


 遼は梢の方を振り向き問う。


「梢、お前は自分が人間じゃないと迫害めいたことを言われて思わなかったのか? 何にも感じなかったとは言わせないぞ」

「……遼君の言い分は解かります。私も初めは否定しに掛かりました。私は正真正銘の人間なんだと。ですが、普通の人には無い、異能力を所持しているという事実からは逃れられません。これが既定きてい事実なのだと」


 暗澹あんたんなる面持ちを示す梢は、やはりまだ子供。


 外見は強キャラを演じていても、内面はガラス細工よりももろいに違いない。


「私は、自分の居場所を見つけるためにあなたと対峙たいじします。次は、手加減抜きで行きますよ」


 先ほどの遼みたく雑念を打ち払おうと、またも拳を構え、梢はその場で足踏みを始めた。



 なんだ? と遼は思案にふけり気付く。


 自分の力が少しづつだが損なわれていくことに。



「くっ、またか!」



 回避しようのない力に嫌気が指し、思わず愚痴ぐちをはき捨てつつ梢に向かって駆け出し、飛ぶ。


 回避しようがないならもはや開き直って突っ込んでやればいい。



 まだ歯向かう気力が残っているうちにな。



「無駄な足掻あがきを……」



 遼は踏鞴たたらを踏むが如く梢に手を伸ばしなんとか掴もうとするが、しかし掴んだのは服ではなく宙であり、結論からいうと目の前から突如消えた梢に背中を足蹴り、崩れ落ちそうになる体は力が入らず、いとも簡単に追撃を許してしまう。


 初めは腹部へ膝蹴り、浮き上がった体に一発二発と場所指定なしの攻撃が降り注ぎ、それが猛攻へと変わる前にグロッキーした遼が、血を吐きながら仰向けの形で倒れ込む。



「げほっ、げほっ、ぐっああぁ!?」



 痛みで意識が遠退きそうになるも直接的に脳がそれを拒み、目を開けたり閉じたりを繰り返す。


 あちこちにれた痛みを感じながらも自分自身のコンディションに感謝する。


 意識が飛んでしまっては元も子もなく、ゲームオーバーを表すからだ。



 しかしこの状況下、遼には全くもってかんばしくない。



「遼っ!」



 遠くから椿姫の声が聞こえる。


 いや近くか?



 そんなことさえも分からない。



「どうして、どうして助けようとするの! あたしのことなんてほっといてくれればいいのに……ほって、おいてよ」



 揺さぶられたのは最初、苦杯を飲まされた遼にとってはこんなのどうってことないぜ! と意気揚々に顔を向けてやりたいが、涙する椿姫にんなことは出来ないよなぁと支離滅裂の単語を並べ立てた思考は何処いずこやら、仰向けで悪いがそっと手に触れてやる。



 こんな時にセクハラとか言ってくれるなよ?



「お前を見てると、なんか知らねえけどほっとけないんだよな。ぐっ……なんというか助けてくれって悲痛に語りかけてるみたいでさ……がはっ」

「遼っ。もう、もう喋らないで。血も、出てるし……」



 途切れ途切れに涙ぐむ椿姫は、仰向け苦痛に侵された遼の顔を見下ろし、涙をしたたらせた。


 遼は生暖かい涙を頬で受け止め、無意識に握る手を強めるが、逆に椿姫は力を抜いてスーッと振りほどいた。



 おもむろに立ち上がる椿姫は御堂の元へと前進して、



「あたしを、連れて行って」



 低く冷めた口調で話す椿姫に対し、御堂も言葉を返す。



「初めからこうしていればそいつに手を出すこともなかったんだが、といっても手遅れか。どちらにせよ無理にでもお前を救おうとしたに違いない」

「そうよ、あたしのせい。全部あたしのせいよ。あんたが言った不幸を招くってのも、正しい。この能力のせいで、両親も、遼も、伯父さんだってそう。あたしが力さえ持つことがなかったら、こんなことにはならなかった……っ!」

「金のパステリー……お前は知らないだろうが、これには二つの力が宿っていると俺は読んでいる。歓迎するぞ、未来パステレス革命ロードでは不幸なのは二の次、お前を必要とする奴らが多勢に存在しているからな」

「…………」



 無言の椿姫に厚かましくも肯定の意味と取った御堂は「行くことにするか。ここにもう用はないからな」と確認を取って立ち去ろうとする。


「そうですね。では椿姫さんの伯父は……え?」



 急に足首をつかまれ呆気にとられる梢。


 反射的に足を引っ込める梢は予想以上に退しりぞき息を呑んだ。



「じょ、冗談でしょう?」


 梢たちの視線が集中する先、手を地につきしぶとくも起き上がろうとする遼。


 その体は殴られた箇所があざとなり、紫色にれていた。



「誰が、その先に歩数を進めていいと言った……?」



 低く唸るように声を絞り出して、遼はうつろながらもただ真っ直ぐに見据えていた。

もうやめて、SYOUの指の力は0よ! とタイピングに全精力を注ぎきった俺です。

なんだか最終話みたいな後書き前文になってますけど違いますからね!

と、それなりに頑張っているSYOUからでした。

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