第二十三話 金の使い道
結果からいうと、正に幸福だった。
もとい幸福の真っ只中を迎えた。
一つ一つ数えるのに瞬く間時間は経過し、計百五十の札束が砂漠に永遠と佇むピラミッドのように形をなし、一日を拝み通したって優雅に過ごせそうな気がしなくもない。
一つの札束が百万円だとして、ざっと見積もっても一億五千万の闇金が家賃一万五千円の狭くボロっちいアパートの一室にあると思うとどうしてもシュールな絵図にしかなってない。
いや、思う以前に目の前にある、だな。
「すごいじゃない遼。今あたし達の前には一生掛けても手に入らないお金があるのよ! ああ、生きてて良かったぁ」
「まぁ待てまぁ待て。金を前にしてはしゃぐ気持ちは分かるし、さっきオレもやっていたが、まだ思案すべきことがある」
浮かれ宙に浮いたような椿姫を制し腕組み、わざと唸って見せてから、
「金の使い道を二人で考えよう。浮かれはしゃぐのはそれからだ」
考えもなしにただひたすらに使いまくるのはバカとも置換できよう。
倒置され地に足がつかない心地を身をもって味わうのは理解が及ぶにしても、いっぺんに使い切って禍因を招くのだけはごめん被りたいからな。
程よく冷静さを取り戻し、あくまで落ち着いた口調で、遼は大きく手を広げ金を示す。
「始めに金の分配だが、どうする? わざわざ半分に分けるか、二人共同で使っていくか」
「別に分けないで一緒に使っていけばいいじゃない。メンドくさい」
即答で後者を選択する椿姫さんだが、おいおい、なんだか面倒になってきてませんか? それほど早く有意義な生活を送りたいのだろうか。
「それじゃあもう一つ、いくら金が山ほどあるからって、使いすぎは当然駄目だ。そりゃオレだって胸奥に、家一戸建て買いたいなぁ。メイド雇ってむふふな日常過ごしたいなぁとかちゃっかり思ってるが、ここはあえて言わないでおく」
「言ってるじゃん」
椿姫から訝しげな視線を受け、尚且つ厳しい指摘を受けに受けた。くぅ、心中に留めておくつもりだったのに自然と流れで口を突いて出ちまった。
しかしここで自主しないのが遼クオリティ。
「まずは豪快にいこうぜ。物を買うとかじゃなくて、えっとだな……」
口頭での説明省きーの、札十束くらい持ちーの、浴室へと出向き束括りの紙を取り、本当に豪快にも撒き散らす。
ひらひらと落ちるは浴槽の中へ吸い込まれるように溜まっていき、完成したのは金風呂。
別名『諭吉風呂』とも称せる。
二つ名を『金城の紙幣』だ。